第33話 宇枝悠の事件簿~犯人は俺だ~
「むー・・・・・・」
一度魔力というものを身に纏って体験したからか、今度は少し集中すれば自ら体内から魔力を発することが出来た。
魔力を拳に纏って攻撃するやり方を教えて貰おうと思ったのだが、どうやらオルトンさんはあまり詳しくないようだ。
なんでも、魔力を拳に集中させて殴るという攻撃方法を取る魔導士はそう多く存在しないとの事。
魔導士は基本的に遠距離からの魔法攻撃が主体だからか。
この世界にある【超魔拳流武闘術】という格闘技の流派くらいしか、メインで魔力を使っての体術の使い手はいないらしい。
冒険者等が我流で使う人はチラホラいるらしいが。
オルトンさんも理屈は知っているが、自分は使う事が無い上に使えないから、実際にやって見せることは出来ない。
覚えたければ、俺が自分で試行錯誤を繰り返すしかない。
魔力を使う事に違いは無いし、魔力の扱い方ならアドバイスしてくれるようだが。
この村で出来そうなのはオッサンくらいだが、今はタマリスク荒野へ調べ物をしに行ってくれてるから教えてくれそうな人はいない。
だから、今は違う事をやっている。
「そうそう、そうやって魔力を集中させるの」
サクラの言葉に従い俺は今、右手の掌に魔力を集めて球状に固めている。
「で、こう・・・集めた魔力を前に向かって飛ばすように・・・・・・」
そしてサクラは俺と同じように掌に圧縮した魔力を、前方へ放つ。
弾丸の如く射出された魔力が飛んで行き、オルトンさんが作ってくれた的の岩柱に直撃。
命中した岩柱の表面を抉った。
「籠める魔力の量によって威力が増すから、その辺は自分の感覚で調整していくしかないわね」
「・・・・・・こうか?」
サクラがやったのを見て、真似して俺も魔力弾を撃ち出す。
掌を銃口だと思い、集中させた魔力弾はイメージ通りに真っ直ぐ飛んで行き、岩柱に直撃する。
だが、サクラの様に岩柱を抉ったり壊すには至らず、バシュンッと音を立てて魔力弾が霧散した。
「ありゃ?」
「籠める魔力が少なかったようね」
うーむ、結構集中させたつもりだったが全然足りなかったようだ。
この辺の感覚は流石にまだ慣れないか。
「もっと魔力を捻り出して」
「んー・・・・・・」
俺は改めて魔力を掌へ集中させる。
もっと・・・もっと・・・もっと集中させて圧縮・・・・・・。
「・・・ッ・・・」
集まる魔力の感覚に、これ以上は止めておいた方がいいと俺の勘が警報を鳴らす。
これ以上集めると、制御不能に陥りそうな気がする。
だが、もう結構集中させただろう。
これなら壊せるはずだ。
「いっそ気合の声でも入れて撃った方がいいかも」
「必要なのか? そういう技名を叫ぶ的なのは」
「魔法でも武術でも、名称を口にする方法をよく取るのよ。言葉にした方がイメージしやすいってのもあるけど、【言霊】って言って、言葉にすることで魔法や技の威力や精度を上げるんだってさ。だから、基本的にみんな魔法や技を使う時は口にするの。実際そういうスキルがあるし」
「そういうもんか」
「勿論、言葉にしなくても使えるけどね。けど、慣れない内は口にした方がいいかも」
「ふむ」
この歳になって技名を叫ぶとか若干気恥ずかしいものがあるが、この世界において普通で当たり前のことなら気にしない方がいいか。
「この魔法の名前・・・【魔力弾】だっけ?」
「そうだけど、無属性の誰でも出来る基本魔法だから、自分なりに魔力弾をアレンジしてオリジナルの名前を付ける人もいるわね」
「オリジナルねぇ・・・・・・」
つっても、1発の弾撃つのに名前って言ってもな。
無理に名付ける必要は無いらしいが折角だからな、何かしら付けたい。
今の俺が出来るだけ魔力を一点集中させて放つ魔力弾。
イメージが大事だったな。
この密度の濃い魔力弾が、着弾して爆発するイメージでも脳に描いてみるか。
俺は構え、自身のイメージ通りに魔力弾を放ってみる。
射出と同時に、魔法のイメージに思い当たるゲームだか漫画だかの名称を叫ぶ。
「ビック●ンアタァァァァァァァァァァァック‼‼」
叫びと共に放たれた魔力弾は真っ直ぐ飛び、岩柱に命中した。
そして――――――――
◆◆◆
「・・・・・・とんでもないのう」
目の前の光景に、オルトンさんや村の皆は顔を引き攣らせた。
その視線の先、先程まで的の岩柱が聳え立っていた場所は、更地になっていた。
これから広い畑でも作るのかと思う程にそこには草木の類は無く、爆発でも起きたかのような浅めのクレーターが出来ていた。
実際爆発が起きて地を抉り、周辺の木々を消し飛ばしたのだが、誰がそんな事をやったのかなど語るまでもないだろう。
犯人は俺です。
放った魔力弾がイメージ通りに飛んでいき、着弾と共に爆発した。
したのだが、イメージ通りであり、想像以上でもあった。
イメージはしたが、本当にこんな爆発が起きるとまでは思わなかったのだ。
凄まじい爆音と衝撃を発してこんな現象を起こして、背に村の皆の視線が突き刺さる。
俺が放った先には的の岩柱と木々しか存在せず人的被害の類は無かったのだが、それでも村の一部を破壊した事には変わりない。
かなり気まずい。
「マジすんませんっしたぁっ‼‼」
ガバッと勢いよく頭を下げて地に付ける。
所謂、土下座だ。
日本人ならここは土下座だ。
もし俺がロシア人ならロシアンルーレットで、フランス人なら断頭台だろう。
日本人で本当に良かった、土下座は日本の心だ。
取りあえずまずは心の赴くままに謝らなければ!
折角村の皆に良くしてもらっていたが、こうなっては追い出される覚悟をしなければならないだろう。
だが、オルトンさんは苦笑しながら「いや、人的被害は無かったんじゃ。そこまで気にせずともよい」と許してくれた。
村の皆も同じ気持ちのようだった。
いや、ホント申し訳ない。
「菊之助のやったことに比べれば可愛いもんじゃ」
オルトンさんが物凄く遠い目をして呟く。
これ以上の何をやらかしたというのだろうか?
「菊之助さん、何やったんですか?」
「攻撃の基本魔法は【魔力弾】ともう一つ、【魔力波】というモノがあるんじゃ」
オルトンさんの説明に、サクラが「こういうのよ」と披露してくれる。
天に挙げた掌から、滝のような魔力の奔流・・・いわゆるレーザービームの様なモノが放たれる。
空に手を挙げたのは、被害を出さないようにか。
あ、何となく分かったような・・・・・・。
「菊之助のやつは今の魔法を『かぁ●ぇはぁめぇ波ァァァァァァァァァァァァッ‼‼‼』等と叫んで撃ちおってな・・・・・・村の一角を消し飛ばしたのじゃ」
何やってんだ菊之助さん・・・。
「その被害に遭ったのがワシと、当時のワシの家じゃ・・・・・・」
消し飛ばした家と、ふっ飛ばしたオルトンさんに対し、菊之助さんは『今の魔法がダメって・・・弱すぎって意味だよな?(真顔)』『え、俺、また何かやっちゃいましたぁ?(ドヤ顔)』『いやー、メンゴメンゴ☆(テヘペロ)』と全く悪びれもしてなかったらしい。
そして村で魔法をぶっ放しまくる大喧嘩が起こったのだとかなんとか。
尚、その際にも菊之助さんはオルトンさんに対して「久々に本気が出せそうだ(ニチャア)」と笑っていたのだとかなんとかかんとか。
「アレに比べれば可愛いもんじゃ」
オルトンさんの目が死んでる。
余程ブチ切れたのだろうな。
「とにかく、さっきの魔法はあまり使わない方が良さそうじゃな。村に被害が出かねん」
「ですね・・・・・・」
村の中でさっきの魔法を使うのは止そう。




