第32話 宇枝悠の魔力の使い方
オルトンさんの指示でベンチを降りて立ち上がり、後ろに周ったオルトンさんが俺の背中に手を置いた。
「まず、魔力というものを肌で感じてもらった方が早いのでな。今から、ワシの魔力を流し込み、悠殿の魔力を活性化させる」
「・・・・・・大丈夫なんですかソレ?」
魔力って血に宿ってるんだよな。
全身の血流が急加速したりしないよな?
「ホッホッホッ、大丈夫じゃよ。強制的に魔力を全身から噴き出すようにするが、命には危険は無い」
「命には?」
死んだりはしないけど、それなりに危険って事ですかねぇ?
「大丈夫じゃ、菊之助もやったんじゃからのう! 何かあっても、ワシが悠殿の魔力を強制的に抑えればいいだけの話じゃ‼・・・・・・まぁ、下手したら体力も精神力も使い果たしてぶっ倒れるかもしれんが(ボソッ)」
「オルトンさん? 何か今小さい声で不吉な事言いませんでしたかねぇ?」
「さぁ、やろうか悠殿!」
「誤魔化しましたよね? 誤魔化したよな!?」
俺の叫びを無視したのか、オルトンさんは無言で、俺の背に当てた手に力を込めた。
瞬間、
「う、おっ・・・・?」
背中に当てられた手から何か強い力が流れ込み、ソレが全身を回る。
身体の底から、熱と力が湧き出てくるような感覚。
そして俺の眼に、身体から噴き出る青白い光が視えた。
「・・・コレが魔力か?」
サクラが浮かべている魔力球と同じ色をしている。
まるで熱気の様に揺らめいて、俺の全身を覆っている。
自分の身から湧き出てくる力に戦慄いてしまう。
「コレが・・・俺の、力・・・・・・!」
「菊之助も同じことをやっとったが、日本で流行っとるのかの?」
「いえ別に・・・・・・」
そうか、菊之助さんも同じことをやったのか。
気持ちは良く分かる。
実際力が湧いて来るし。
「魔力がどういうモノか、掴めたかね?」
「・・・・・・そうですね。なんとなくは」
目を閉じて、身体から発する魔力を感じ取る。
この感覚が、そうなんだろう。
「魔法を使うにあたり、一番大事なのはイメージじゃ。その全身から噴き出る魔力を操ってみなさい」
「操る・・・・・・」
と、言われてもな。
何となく手を見る。
・・・・・・少年漫画とかにあるような、オーラを集める的な事をやればいいのだろうか?
全身を覆う魔力が、この右手に流れて集まるイメージを頭に描いて・・・・・・
「・・・・・・お?」
左半身側の魔力が、徐々に右手に集まろうと流れ出す。
そして魔力は俺の右手に集まった。
右手に宿った魔力が、ゆらゆらと揺らめく。
「・・・・なんか、このまま何かを殴りたい衝動に駆られるな」
「そう言うだろうと思ったわい」
オルトンさんが少し嘆息した。
もしかしなくても、菊之助さんも俺と同じ感想を抱いたのだろう。
「コレを殴ってみるといい」
徐に地面から石や砂を魔法で集め、1つの岩柱を造り出した。
俺と高さがほぼ同じの岩柱が、地面から生える様に隆起している。
近くにある何かを殴って壊して、菊之助さんはオルトンさんに怒られたのかもしれんな。
まぁ、兎に角殴ってみよう。
普通に殴ったら絶対痛いだろうが、魔力を纏った今の右手なら大丈夫な気がする。
・・・・・・たぶん。
「・・・・・・せいっ‼」
取りあえず正拳突き。
突き出した拳が、岩柱に打撃音を響かせて突き刺さる。
岩柱はビキィッと音を立ててひび割れ、殴った岩の表面部分が崩れた。
「あれ?」
手は全く痛くはないが、思ったより割れなかった。
木っ端微塵とはいかなくても、岩柱をへし折る勢いで殴り壊せると思ったんだが・・・・・・。
「まぁ、あくまで手を魔力で覆ってるだけじゃからな。打撃に使うのなら、その纏っている魔力を固めるか、相手側に炸裂させねばな」
「うーん・・・・・・」
魔力を相手側に炸裂・・・・
「こうか?」
俺はもう一度岩柱を殴る。
今度は殴った瞬間に、魔力を炸裂させようと―――――――ボゥンッ‼‼
「ぶっはっ!?」
手が小さな爆発を起こし、俺は後方へ吹き飛ばされ後頭部から地面に落ちた。
「ッ・・・いって~・・・・」
打った頭を擦る。
勢いがそこまで強くなかったからか、怪我まではしてないようだ。
あ、手に纏っていた魔力が消えてる。
さっきので魔力が霧散してしまったようだ。
「あー・・・練習が必要だな」
そんな簡単にポッとは使えないようだ。




