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宇枝悠の異世界漫遊記  作者: U-1
第1章 異世界漂流編
26/70

第26話 サクラの父親『アルフォンス・エンフィールド』

「結構な金になったんじゃないか?」

「そうね・・・ここまで貰えるとは思わなかったわ」


丁度日が落ちて夜になった頃、俺達はサクラソウ村に帰って来た。

肉は食料として俺等4人で分けて、残りの素材や魔石は村の道具屋で売った。

本当ならギルドで適正価格で買い取って貰うのが一番無難らしいのだが、この村にギルド支部は無く、主に村の道具屋や、村に来た行商人に買い取って貰うらしい。

適正価格より少し安く買い取られるらしく、ソレが不満ならギルド支部のある町なり村なりに自分で行かなければならない。

一番近い町で、歩いて半日程かかるそうだ。

今回は、流石にあんなデカい魔石を持って半日も歩くのは危険ということで、村の道具屋で売ったのだ。

道中、モンスターや盗賊が出るかもしれないからだそうだ。

俺はその辺の判断は素人なので、皆がそれでいいのなら問題ない。

そして今回売った素材等の合計金額は――――――


「――――――20万Galisだもんな・・・・・・」

「4人で分けても5万Galis・・・・・・」


ゴクリと、革袋に詰められた金を見て、喉を鳴らすチャックとモニカ。

こんな田舎村に住む子供にとっては、普通に大金らしい。

20万の内の7割程が、あのストライクボアの魔石の値段だ。

やっぱ高い値段で売れた。

この村でそれだけの金額で売れたという事は、適正価格はもっと上だろう。

かなり勿体なかったかもしれんが、自分達の安全を考えるのならコレでいい。


「つーか、アルフォンスさんに頼んで換金して来てもらえばよかったんじゃねぇーの?」

「無理よ。父さん、自分の金は自分で如何にかしろって言ってるし」

「意外と厳しい事言うのよね、サクラのお父さん」

「『冒険者になるんなら、それくらいはやってみろ』ってさ。まぁ、本当にやれるとは思ってなかったみただけど」

「ああ・・・アルフォンスさん反対してたもんね、サクラが冒険者になるの」

「初めて自分で獲物を狩って、換金した時の事は今でも覚えてるわね。父さんのあの渋い顔、忘れられそうにもないわ」

「私も覚えてる覚えてる! すっごく何か言いたげだったけど、結局何も言えなかったって感じだった。あ、そういえばチャックが冒険者になったのもそれくらいだったよねー」

「・・・・そうだっけか?」

「そうよ。『俺も冒険者になるんだー』って息巻いて、森の奥に行ってモンスターに大怪我させられてたじゃない。あの時アルフォンスさんが助けてくれなかったら、あんた死んでたでしょーが!」

「その後、父さんや村長達に叱られてたわね」

「う、うっせーなッ‼」


なんつーか、アレだな。

幼馴染みだから仕方ないかもだが、3人で会話が弾んでると入りづらいな。

話の内容を共有出来ないから。


「サクラの親父さんも冒険者なのか?」


今までの会話の流れでそう感じた。

俺がそう聞くと、サクラは「ああ、言ってなかったっけ?」と説明に入ろうとするが、キョトンとするモニカと「ありえねぇ!」と叫ぶチャックが説明を中断させた。


「お前、アルフォンスさんを知らねぇのか!?」

「・・・・・・有名人なのか?」

「うん。かなり名の通った冒険者なんだけど・・・・・・」

「冒険者やっててあの人の名前を知らなぇ方が少数だぜ! フィオーレ王国の冒険者の中で、間違いなく5の指に入る実力者なんだよ‼」

「へぇ・・・凄いんだな」

「感想それだけかよッ!? いいか!? アルフォンスさんはなぁっ――――「あー、はいはい。どうどう」」


俺に掴み掛らんばかりに力説するチャックを、モニカが羽交い絞めにするように引き剥がす。

それでも尚叫ぶチャックの首を、モニカが「えいっ」と絞める。

あ、チャックが落ちた。


「随分熱心なんだな」

「チャック、なんか父さんに憧れてるみたいだから」

「なるほど」


プロスポーツ選手とかに憧れる少年みたいなもんか。


「今は家にいないのか? 俺が起きた時にはいなかったみたいだが・・・・・・」

「近くの町へ仕事に行ったのよ。今日帰ってくるはずだから、もう家にいると思うけど」


本物の冒険者って感じだな・・・ちょっと興味が出て来たぞ。


「そろそろお金分けて解散しましょう。チャックも寝ちゃったし」


寝ちゃったしって、モニカが絞め落とした気がするんだが・・・ま、いいか。


「5万Galisずつね」

「ちょっと細かい気がするけど・・・・・・」

「しょうがないでしょ、この村で金貨や銀貨を使う事なんて稀なんだから」


この世界の貨幣は全て【Galis硬貨】というコインで、紙幣はないらしい。

石貨・鉄貨・青銅貨・銅貨・銀貨・金貨・琥珀金貨・白金貨があるようだ。


1Galis=石貨1枚

10Galis=鉄貨1枚。

100Galis=青銅貨1枚。

1000Galis=銅貨1枚。

10000Galis=銀貨1枚。

100000Galis=金貨1枚。

1000000Galis=琥珀金貨1枚。

10000000Galis=白金貨1枚。


今回の素材買取価格は20万Galisだから、普通は金貨2枚。

だが、この田舎村の道具屋が金貨どころか銀貨を受け取る事も使う事も稀で、手持ちには無かったようで払いは全て石貨・鉄貨・青銅貨・銅貨だ。

それらの硬貨が混ざっている為、袋に詰められた硬貨の数が多いのだ。


「はい、悠の分」

「サンキュー」


サクラから硬貨の入った革袋を受け取る。

俺が金を入れる袋を持っていない為、さっき道具屋で手に入れた物だ。

本当なら商品なので売られるのだろうが、かなり質の良い品を売ったからかオマケで貰ったのだ。

流石にこんな嵩張る銭は、俺の折り畳み式財布には入りきれん。

基本的に紙幣を入れるもんだしな。


「それじゃあねー!」


金を分け終えて、俺達は解散する。

5万Galisでも結構な金額で、大金を受け取ったモニカは上機嫌で家へ帰って行った。

・・・・・・その金を握る手とは反対の手で、気絶したチャックをズルズルと引き摺りながら。


「悠はどうするの、このまま村長の家に行く?」


サクラは何事も無かったかのように訊ねてきた。

あ、やっぱチャックの扱いでツッコんだりはしないんだな。

なら俺も気にしないでスルーしよう。


「いや、一旦お前ん家行くわ。ヒナギクさんに服の事言わなきゃいけないし」

「気にしなくてもいいと思うけどね」

「一応な」


もう乾きはしたが、それでも服に血の染みがヤバいくらいに付いてる。

何処の殺人鬼の返り血だっつーくらいに。

適当に今日の狩りの事を話題に駄弁って歩いていたら、サクラの家に到着した。

既に辺りは暗いが、サクラの家の窓から明かりが照らされて、中に人がいるのが分かる。

ヒナギクさんはもう帰ってきているようだ。


「父さんもいるみたいね」


何を言っているのかまでは分からないが、家の中から話声の様な物が聞こえてくる。

・・・・・・何やら慌ただしい声の様な気がするが。


「何かあったのかしら?」


サクラもそういう風に聞こえるらしく、家のドアに手を伸ばす。


「ただいま」


そしてドアを開けた。


「だからすぐに探しに行k―――――」

「あ、お帰りなさい」


家の中には、何やら慌てた風なガタイのいい高身長な男と、ほんわかとしたヒナギクさんがいた。


「お・・・おお、サクラ! 無事だったか‼」


ガタイの良い男がホッとしたように声を上げる。

もしかしてこの人がサクラの親父さんだろうか。

中年のようだが、そうは思えないガッシリとした筋肉質の身体に鋭い目つき、ブラウン色のツンツン頭と額に巻くバンダナ。

身を守りながらも動きやすさを重視しているのか、部分的にしか金属の鎧を身に付けていない。

背にあるマントと、その内側には身の丈程もある大剣を背負っている。

なるほど・・・確かに冒険者という風貌だ。

いや、見た目だけじゃない。

俺は【我が瞳は世界を見破る(アナライズ)】で視た。

この男・・・アルフォンス・エンフィールドのステータスを。


「ん?」


アルフォンスと目が合った。

サクラに向けていた明るい表情とは打って変わり真顔になり、そして――――――


「ッ!?」


――――――ヒタリと、突然首筋に冷たい感触が。

気付けば、目の前にいたアルフォンスの姿が消えていて、そこにはヒナギクさんしかいない。


「おい小僧」


そして背後から、凄まじくドスの利いた声を浴びせられた。

この声は間違いなくアルフォンスだ。

てことは、今俺の首に当てられている冷く硬い感触と、後ろから俺の肩越しに伸びているこの刀身は、彼の大剣のものか。


「テメェか・・・俺の娘を夜遊びに付き合わせたのは?」


凄まじいプレッシャー。

少しでも身動きすれば、一瞬で首が落とされる。

そして、先程見せた動き。

いや、視る事すら出来なかった。

目にも止まらない・・・どころか、目にも映らない速さで俺の背後に周り込み、そして剣を突き付ける。

それもこのステータスなら納得だ。


アルフォンス・エンフィールド

そのレベル・・・91。


チャックが言っていた、この国の冒険者で五の指に入る。

この世界の住人がどれだけ強いのか知らないが、それも納得の数値だった。

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