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宇枝悠の異世界漫遊記  作者: U-1
第1章 異世界漂流編
21/70

第21話 モニカとチャックの片思い

俺とモニカが向かった先は、川原だ。

そこそこに幅広いこの川は流れも緩やかで、地球だとキャンプ地にでも使われそうな場所である。

濁りの無い透き通った川の水は、飲み水としても使えそうだ。


「おーい、戻ったわよー」

「おかえりー。こっちは順調よ」


モニカの声に応えたのはサクラだ。

川原の真ん中に積まれた石や枯れ木を動かして、何かを作っていた。

それは竈だ。

適度に薄く広い真っ平らな石の下に、大きな石を4つ置き支柱にして、下に出来た隙間に枯れ木を置く。

枯れ木に火を起こせば平らな石は熱を持ち、鉄板の代わりとして使えるというサバイバル技術だ。

ホントは石で火床を覆う様にするのが良いらしいのだが、コレでも問題はない。

昔、キャンプに行った事を思い出すな。

その時は今みたいに、野生の鹿を狩ったりなんてしなかったが。


「あ、サクラも狩ったの?」


モニカが言ったのは、川岸に設置されたソレを指している。

ソレは枝に吊るされている、生物だったモノだ。


「うん。枯れ木を集めてたら、目の前にニードルラビットが通ったから。ついでにって思って」

「さっすがねー・・・・」


関心と呆れのような目を向けるモニカだが、俺は思わず顔を顰めた。

何故ならそのニードルラビット・・・名前からして兎なんだろうが、その死骸を吊るしてある様が視覚的にエグかったからだ。

やっていることは分かるから何も言わないが。


「モニカと悠が狩ったの、ストロングディアー?」

「そ。2人でやったからか結構手早く終わったわ」

「へぇ・・・悠の初めての狩りは、上手くいったみたいね」

「まぁな」


何分初めてなせいか、アレが手早く終わったのかどうか分からないが、狩り経験者が言うならそうなんだろう。

俺は結構疲れたが。


「・・・・それで、あの馬鹿は何処行ったの?」

「まだ帰ってきてないわよ」


モニカが口にした『あの馬鹿』とは、チャックのことだろうか?

今この場に居ないのはアイツだけだから、消去法で必然的にそうなるんだが。

さて、何で俺とモニカが組んで狩りをし、サクラが川原で調理の準備、チャックが単独で狩りに行ったのかと言えば。

バラけて狩りをしようかと話の流れで自然に決まり、サクラが狩り初心者の俺に色々教えながらやろうという事で、俺とサクラは2人1組で狩りをするという話になりそうだったのだが、チャックがそれに異を唱えた。

「じゃあ、チャックが悠に教えてあげるの?」とサクラが問うと、チャックは「何で俺がんな事しなきゃなんねーんだよ!」と憤り、その言動に呆れたモニカが「・・・じゃあ、私が教えてあげるわー」という流れがあって、モニカと組むことになったのだ。

折角だから狩った獲物を少し食べようかと、サクラは河原で調理の準備をすることに決めた。

そしてサクラが「頑張ってデッカイ獲物取って来てよ、期待してるから」と、初心者の俺に励まし半分からかい半分な口調で言ったのがどうやらチャックの心に火を点けたらしく、チャックは「おーし、俺に任せとけよサクラ! コイツよりデッケェ獲物狩って来てやっからなぁッ‼」と息巻いて、1人森の奥へと消えたのだ。

アイツのあの異様なテンションの高さ、そして初心者の俺に対抗するかのような言動、そして今までのアイツの行動を考える。

俺はストロングディアーを地面に下ろした後、サクラには話の内容を聞かれない様にモニカに近づき、


「なぁ、モニカ」

「うん?」

「チャックってもしかして、アレなのか?」

「アレって何よ?」

「いや、チャックってもしかして・・・サクラの事好きなのかなぁーと」


小声で訊いたその質問はどうやら俺の予想通りだったらしく、モニカは「あー」と苦笑した。


「判っちゃった?」

「そりゃ、あそこまであからさまだとな」

「そうよねー」


今までのアイツの俺に対する荒い言動は、要はアレだ・・・嫉妬していたのだ。

気のある女(サクラ)』の近くに、急に『見知らぬ男()』が出て来たから突っかかって来たのだろう。

今までのサクラとチャックのやり取りを見る限り、別に付き合ってるとかの雰囲気は無かったが、チャックの片思いなのか?


「サクラは、この事は?」

「・・・・・・気づいてると思う?」

「あー・・・・・・」


モニカの言葉で理解してしまった。

あのあからさまな言動でも、どうやらサクラはチャックに好意を向けられていることに気付いていないらしい。

重ねた石の隙間に枯れ木を入れ、竈の完成を満足気に頷いているサクラ。

今尚、サクラの為にとデッカイ獲物と(おそらく)格闘しているだろうチャックの事を考えている様子は無さそうだ。

・・・・・・ちょっと同情するぞ、チャック。


「まぁ、そういう訳でアンタに色々初っ端から絡んでたけど、根は悪い奴じゃないから、あんまり気にしないでやって」


・・・・・・・・ん?


「口は元から悪いから何とも言えないけど、良い所もあるからさ。まぁ、長い目で付き合ってやってよ。なんだかんだで頼りになるやつだから」

「んー・・・・・・」


・・・・・・流石にこれは考えすぎか?


「なぁ」

「うん? 今度は何?」

「いやな?」

「うん」

「お前、もしかしてー・・・―――――」

「・・・・・・?」

「―――――チャックのこと」

「――――――――ッ!?」


あ、赤くなった。

マジか。


「は、ハァッ!? いや、ナイナイ! 私がアイツをす・・・好きとか!? やぁねぇ、私がアイツを庇うもんだから誤解したの? あんなの幼馴染みだから仕方なく庇ってやっただけで! 別にアイツがアンタにどう思われてても私の知った事じゃないし? ホントただ仕方なく幼馴染みとして庇った体裁を取ってやっただけで―――――――!」

「うん、もう、いいぞ?」

「な・・・何よその全部解ってますみたいな顔は!?」

「いや、だってなぁ・・・俺、別に『モニカはチャックのこと好きなのか?』なんて聞いてないだろ?」

「ッ!?」


確かにそう聞こうとはしたが、口に出してはいない。

完全にモニカの自爆だ。

俺は更に顔を赤くしてなんか悶えてるモニカを見て、次にサクラを見る。

サクラは自分が狩って吊るしたニードルラビットを見て「そろそろ血抜きもいいかしら?」と、呟いていた。

そして、今この場にいないチャックを思い浮かべる。

モニカはチャックが好きで、チャックはサクラが好き、と。

コイツ等の今の関係ってこんな感じか?


モニカ(好き)チャック(好き)サクラ(食べたい)ニードルラビット


見事な片思いだなー。

コイツ等の関係に俺が掛けてやる言葉なんてこんなもんだろう。

俺はポンッと、モニカの肩を叩く。


「頑張れよ」

「う、うっさい‼」

「?」


微笑まし気な顔を作る俺にモニカが声を上げ、突然声を上げたモニカに、サクラは首を傾げた。

~モンスター図鑑~

NO.3 ニードルラビット

・額から伸びている1本の角と大きな耳、全身が柔らかな灰色の体毛で覆われているのが特徴的な兎型モンスター

・体長は30~80㎝。体重は4~15kg

・草原や半砂漠地帯、雪原、森林、湿原などに広く生息している

・基本的におとなしい魔物で、危害を加えない限りは余程の事が無ければ攻撃してこない

・攻撃手段は、その額から伸びる大きな角を相手目掛けて串刺しにする刺突のみ

・食性は植物食で、草や木の葉、樹皮、果実などを食べ、一部の種は昆虫なども食べるという

・年中繁殖することが可能であり、多産で繁殖力が高い

・個体にもよるが、最大時速60-80kmで走ることができる

・魔物の中でも捕食されやすいので、あまり目立つ場所には現れない

・肉や内臓は食用、毛皮は服飾品として利用され、角は武器などの素材として使われる

・おとなしい為か家畜化し、村や町で飼育している人もおり、見た目の愛くるしさあってか、ペットとして飼う人も増えたとか

・冒険者ギルドが定めた危険度ランクは最低値のI


サクラ「多くの村や町の人が食用にしている魔物ね。狩りやすいし、親が子供に狩りを教える見本として選ぶ時もあるわ」

悠「・・・・・・」

サクラ「どうしたのよ?」

悠「いや、な。魔物って分かっちゃいるんだが、こんな見た目愛くるしい生物が食われるために腹掻っ捌かれて吊るされてる様を見たら何か、な・・・・・・」

サクラ「・・・まぁ、言いたい事が分からない訳じゃ無いけど、食べて生きるってそういう事でしょ?」

悠「分かっちゃいるんだがな」

サクラ「お肉を食べるだけじゃなくて、毛皮と角がそれなりの金額で売れるから、小遣い稼ぎには丁度いいのよねー」

悠(生きる為に食うのは兎も角、そんな理由で狩られるとニードルラビットが気の毒だな・・・・・・)

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