US Military Base
1話目を投稿ミスしていました
読者の方々からすれば意味がわからない文章になっていたと思います
本当に申し訳ありませんでした
US基地は、ちょうど朝食時であった
作戦中とはいえ、朝食を抜いて力が出ず本来の実力を発揮できなかったのでは仕方がない
よって朝食は欧米人が特に好みそうなもの、つまり高カロリーなものが用意されていた
普通ならば朝からそんなに高カロリーなものを食べるのはキツイだろうが、日々辛い訓練を行ってきた彼らにはむしろ少ないくらいであった
それゆえUS基地では朝食は非常に大切な時間であり、兵士たちも楽しみにしている時間であった
また、大変な士官学校時代の訓練を共に乗り越えてきた兵士たちの仲は非常に良く、家族といっても差し支えないほど密接な間柄で、家族とのコミュニケーションの場という意味でも朝食の時間は大事であった
そんな中、食堂中に大声が響き渡る
皆一様に手を止め、しかし数瞬後かには互いの顔を見合わせ今の声が何者によるものであるのかを相談し始めた
もちろん将太によるものであるのだが、昨夜突然少年がUS基地の前に現れたことは、兵士たちに動揺を与えない様に上層部の人間しか知っておらず、この声が誰のものであるかを知るものはこの場では1人しかいなかった
「なんだ、今の声は?」
US軍基地に早朝から響き渡った弩声に、US軍のフィリップ・バーン大佐は眉をひそめて言った
そう、彼こそ"少年のことを知っている何人かの上層部のうちの1人"である
しかし箝口令が敷かれている今、同僚や部下たちにこの声が誰のものであるかを話すことはできなかったので、彼の周りと同様にあたかも困惑しているかの様に振る舞った
周りに座っている同僚や部下たちからも同様に疑問の声や非難の声が聞こえてくる
朝食の時間を邪魔されたのだ
彼らの反応は当然と言えば当然である
「でもよ、今俺らは全員ここにいるんだから俺ら兵士のうちのだれかではないよな?」
そういったのはベン・カーター上等兵
彼はUS軍基地のムードメーカー的な存在で仲間からも部下からも厚く信頼されている
フィリップ大佐も多分にもれず彼を気に入り可愛がっている口だ
「そうだよな、じゃあ軍属のやつらか?」
軍属とは非戦闘員のことで、フィリップ大佐達軍人とは全く働きを異としており、主に事務作業・清掃・洗濯・保守・整備・医療・調理配膳などの雑用をこなし役割を持つ者達である
その中でもとりわけ調理配膳の人々はUS基地の存続を担っていると言っても過言ではない
彼らを怒らせることは、すなわち死を意味するのだから
昔、フィリップ大佐がまだ新兵だった時に食堂で馬鹿騒ぎをしてしまい、彼らの機嫌を損ねてしまった際には地獄の様な目にあったものだと、遠い昔のことを思い出して感慨にふけっていたフィリップ大佐であった
「軍属の奴らがこんな朝っぱらから奇声あげるかよ。泥みてえに寝てるんじゃねえの?夜勤の奴らは」
そう、軍属の者は夜勤と朝勤とで分かれており、夜勤の者は疲れで今頃ぐっすり寝ている頃で、朝勤の者はこれからの激務を考えてグロッキーになっているはずである
万々が一にも奇声をあげる様な元気のある者などいるはずもない
あーだこーだといい好き勝手言い合っている彼らの話し合いはどんどん熱を帯びていっており、このままではこれからの任務遂行にも支障をきたしてしまいそうな勢いであった
ここは真実を知る自分が場を治めるべきだと考えたフィリップ大佐は椅子をガラガラッと鳴らしながら立ち上がりパンパンッと手を叩いて、まわりの目を自分に向けさせ、周囲の者どもを見回しながら、こう言った
「わかった、俺が行って確認してくるからお前らは朝飯食っとけ」
「おいおい大佐ぁ、こんな面白そうなこと独り占めかよぉー」
「誰がこんなアホな声あげたのかわかったら俺らにも教えてくださいよー!」
などとからかう様な声が方々から飛んでくる
人の気も知らないで...と思わなかったこともなかったが、グッと抑えて了解、と伝える様に右手を上げてフィリップ大佐は食堂から出ていた
場面は変わって将太がいる部屋へ
「あ、あああああアンタ誰だよ!?ここはどこ!?夢の中ですか!?夢の中ですよね!?そうだよね!?そうだと言ってぇぇぇぇぇぇ!!」
そう英語でまくしたてるのはそう、我らが東城将太である
親に英語の英才教育を幼少期に受けさせられたことで、日常会話程度の英会話はできるのだ
彼は今これまでの人生の中で起きたこともない様なパニックに見舞われていた
今の彼の目は漫画の様に混乱により渦を巻いていたに違いない
「ナ、ナンナノこの子...」
先ほどの金髪美人もドン引きしていた
こめかみが嫌悪感を表すかの様にピクピクッと痙攣していた
そんな金髪美人の反応を将太は意にも介さず
「ちょ、ちょっと落ち着けクールダウンだ俺、冷静になれ冷静になれ...俺は昨日ゲームしてたよな、オーライ。んで寝ちまってて気付いたらこのどこかもわからない場所にいて目の前には美人の金髪ねーちゃんがいる...あっやっぱ夢か!」
全く訳のわからないまま勝手に自己完結して将太はもう一度眠りに就こうとしていた
一方、金髪美女はそんな将太の奇行にどうすることもできず、彼のそばに立ち尽くしていた
双方事情がよく分からないまま事件が迷宮入りしようとしていたその時
ガチャッ
と音を立ててドアが勢い良く開き、ガタイの良い男が入ってきた
「ガキが目を覚ましたって?」
そう金髪美女に問いかける男
第三者の乱入にさすがに将太もふて寝を決め込むわけにはいかず、上体を起こして今入ってきた男の方へ目を向けた
「エェ、そうなんだけどこの子ちょっと混乱しているみたいで...」
「そうか。まあこっちはもっと混乱してるんだけどな」
その男は180を優に超え、筋骨隆々の偉丈夫といった出で立ちで、別段格好良くはないが、男性らしい男前な顔つきをしており、将太を見据える眼光は鋭く、ダンディーなあごひげが鋭い目つきと男性然とした顔つきによく映えていた
「尋問は後でゆっくりするとして、今ここで聞けることはここで聞いちまうが...オイガキ、ここまでどうやって来たのか記憶はあるか?それと名前は?」
恐ろしい単語が聞こえた気がしなくもなかったが、全力で聞いてないふりをして将太は質問にだけ答えることにした
落ち着いた男が来たことにより将太は多少の落ち着きを取り戻しており、冷静に答えることができた
「ここにどうやってきたかは...全く覚えてねえ。そもそも俺自身なんでここにいるかさっぱりなんだよ。俺は東城将太だ。よろしくな。」
そう答えて自己紹介をした将太はとりあえず親睦のつもりで手を差し伸べ握手を求めた
しかしその男は握手を返すことなくちらりとだけ将太の差し出した手を見るとすぐに視線を戻し
「よろしくする気など微塵もない。お前は我々USにとってはただのスパイの容疑者なんだからな。後で尋問してたっぷり吐かせてやるから覚悟をしておけよ。俺はフィリップ・バーン大佐だ。お前に名前を覚えられようと覚えられまいとどうでも良いが名乗られた以上一応教えておこう」
そう皮肉たっぷりに返してきたフィリップ大佐に将太はガラにもなくカチンときたが、彼の言葉が猛烈に彼に衝撃を与え、怒りなどは頭の隅に追いやられ、とうにどうでも良くなっていた
「US...?スパイ...?なんのことを言っているんだ?ここは日本じゃないのかよ?」
彼が言った"US"、"スパイ"この二つの単語が彼を現実に引き戻したのだ
酷く冷たい現実へ
「日本?なぜここで日本が出てくるかは皆目見当もつかないが...なるほど、よく見ればお前、黄色人種だな。寝ぼけて夢でも見てるのか?ここは|USFARH《アメリカ軍ロシア対策本部》(United States Forces Anti Russia Headquarters)だ。」
あまりにもあまりな物言いに、んだとこの米国人が、と将太の堪忍袋は断絶寸前だったが、彼の言葉を信じるなら、自分はただでさえスパイ容疑をかけられているらしい
そんな自分が大佐ともあろう者に手を出して仕舞えば即刻銃殺は免れないだろう
ここが現実なのかどうかはまだ判断することができないが、迂闊なことをすべきではないのだろう
そう結論付けた将太はもうこれ以上何も話さないことにした
「だんまりか...まあいい、11:30からお前に対する尋問を開始する。おいジェシカ、こいつが逃げない様に見張ってろ。オイガキ、逃げ出そうなんてゆめゆめ考えるんじゃねえぞ。この広大なUS基地から簡単に逃げられるなんて思わねえほうがいい」
そう脅しをかけられ、将太は背筋が凍る様な感覚を感じながらも、動揺を悟られないとフンッと鼻で笑った
フィリップ大佐は将太の態度に額に青筋を浮かべながらもドアをバタン!と勢い良く閉めて部屋から出て行った
将太は緊張の糸が切れたのか、フゥーとため息をつきながら女性の方に目をやると、唖然としたかの様な顔をして今となっては誰もいないドアの方を見つめていた
さっきフィリップが言っていたことには、彼女の名前はジェシカというらしい
彼女の表情から察するにこんなやつと同じ部屋にいる、さらには監視しなければならないなんて最悪、といった具合だろうか
女子との接点がほとんど全くなかった将太も、彼女のヒクヒクとしている口の端やアングリと開かれている口を見ればそれくらいは察せて当然というべきであろう
「あ、あの...」
おずおずといった様子でジェシカに声をかけてみると、彼女はビクゥ!と肩を跳ねさせてから恐る恐るといった具合にこちらに顔を向けてきた
「ウ、ウン?何かしら坊や」
無理やり作ったような引きつった笑顔がなかなかに心に刺さってきて怯みそうになったが、将太は頑張って尋ねてみた
「さっきフィリップ大佐?がUSうんたらとか言ってたけど、ここは本当にアメリカ軍基地なのか?」
「エェ、そうよ。ここは純然たるアメリカ軍基地よ。それとUSうんたらじゃなくって|USFARH《アメリカ軍ロシア対策本部》よ!」
とジェシカはグッとその大きい胸を張って答えた
形の良い胸がポヨン、と柔らかそうに跳ねたのを見て女性慣れしていない将太はあからさまに動揺し、その視線は虚空を絶え間なくさまよっていた
その動揺を悟られないとするかのように将太は矢継ぎ早に次の質問を繰り出した
「ろ、ロシア対策とか銘打ってるけどなんでロシア対策なんだ?ロシアと戦争でもしてるのかよ?」
そう冗談交じりに言った翔太だったが、ジェシカは大真面目な顔をしてその言を肯定した
「エェ、今我々米国はロシアと戦争中よ。というよりも、だいぶ前からといっても差し支えはないわね。」
「だいぶ前?」
「ソウヨ、冷戦って知らないの?坊やは」
「いや冷戦ぐらい知ってるけどよ...ていうか、その坊やっていうのやめてくれよ」
そもそも自分はもう"坊や"なんて呼ばれるような年齢ではないのだ
まだ成人してはいなかったが、子供ではない自覚は持っているつもりだ
「アラ、ごめんなさい。ショウタ、って言ったかしら?さっきフィリップ大佐も言ってたと思うけど改めて私の名前はジェシカよ。よろしくね?」
そう言ってジェシカはこちらに手を差し伸べてくる
「あぁ、よろしくな、ジェシカ」
そう言って将太もそれに返すように手を差し出して拍手をした
ジェシカの手は女性らしくモチモチとしていて柔らかく、ひんやりと心地よく冷たくていつまでも握っていたいと思ってしまう手であった
将太はドギマギしてしまい、すぐに手を離してしまった
ジェシカはというと?といったような顔をしており、将太の謎の奇行の原因には全く気付いていない様子であった
「そういや、さっき俺のこと尋問するとか言ってたけど、俺何されんだ...?」
「私は軍属で軍人ではないから尋問がどうやって行われるのか想像もつかないけど...あなたがあんまりだんまりを続けるようならそれなりのことはされるんじゃない?」
「...」
言外に吐かなきゃ拷問されるぞと言われているようで思わず言葉を失ってしまい、表情が硬直してしまった
そんな将太のあの様子にジェシカも気がついたようで、慌てて取り繕ってくる
「で、でもあなたがきちんと受け答えをすればいいだけの話であって、ちゃんと情報を出せば彼らの必要以上の制裁は加えないと思うわよ?」
情報を吐くだの吐かせるだの言われているがそもそも将太はスパイでもないしただの一般人なのだ
それがなんの間違えだかこんなところに連れてこられてしまって...
実際情報を欲しいのは将太の方である
「いや、そもそも俺は情報なんて...」
そう翔太が反論しようとした時、先ほどと同じように部屋のドアが勢いよくガタン!と開き、
そこからは案の定フィリップ大佐が顔をのぞかせており、将太に無慈悲な宣告を言い渡した
「出てこい、クソガキ。尋問の時間だ」
将太の長い長い1日がようやく今、その歩みの一歩目を刻み始めた
お読みいただいてありがとうございました
これからもよろしくお願い致します




