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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第三話 異獣+子供
87/99

勘違い+アラ

8/16(2/2)

+ + + + + + +




「いつから勘違いしてた?」


 もう初めから疑ってなかった気がする。

 どうしてそんな基本をすっ飛ばしていたんだ自分は????

 はははは、ここまでアホだといっそ諦めもつくって物だ。…ソンナワケナイヨネエ…


 勘違いしていた相手は、変わらず無表情で何を考えているのかわからない視線を自分に向けている。

 自分は万能ナイフから女の子用の水着を取り出して、丁寧にアラに着せた。


 女の子用(、、、、)のだ。


 アラは女の子だった。

 坊主頭=男の子と言う考え方が自分の中に根付いてしまっているのだろう。原代和国じゃ基本的に坊主頭か伸ばしたそのまま総髪かの二択しかなかったから仕方がないと言い訳させてほしい。


「ごめんな」


 アラが何のことか判らないと言う様子でこちらを見ているのがなおさら濁った心を抉った。焼かれたり抉られたり大変だな(他人事)。

 水着? ハーフパンツの時と同じく目にも鮮やかなまっかっか水着だ。

 デザインはお店で見た事のあるようなデザインのふりふりの奴。


 ちなみにレナリのは競泳水着だ。

 現代日本でスイミングスクール通ってたので想像しやすかったからである。


 アラには大変申し訳ない勘違いをしてしまった。

 着せ終わると、寒かったのか自分の足にコアラのように抱きついた。


「まだ着替え終わってないからちょっと待ってな」


 じーーっと見ている視線に今更ながら恥ずかしさを覚えつつ着替えると、アラは跳びはねるように自分の腰に抱きつき、木登り、と少し違う動きで首の所まで辿り着いた。

 ふすーと可愛い鼻息が漏れた。

 何だかご機嫌、のように見える。

 そのまま肩車前盤に移るが、もしかしてアラのお気に入りのスタイルがこれになるのだろうか?

 前が見えないのは困るので、掴んでせめて、と横盤にして露天風呂に移動した。


 レナリは掛け湯している所だった。

 エニスは既に目蓋を細めて浸かっている。本来のサイズのエニスでも収まるサイズの立派な露天風呂である。

 影箱から念動力でタオルやボディソープなどの全身用の奴、石鹸なんかを出しておく。


「掛けるぞ」


 アラを抱っこしてまとめて掛け湯。普段よりも慎重に掛けるけれど、アラはびくりと身体を震わす。

 赤ちゃんを風呂桶とかで身体を洗おうとすると、びっくりして泣いちゃう事があるらしいから、慣れない人には衝撃的なのだろう。

 何度かアラ中心にお湯を掛けて浴槽に浸かる。

 いつもよりさらに微温(ぬる)めに調整したのはアラの事を考えてだ。髪の毛も眉もまつ毛もないアラには刺激が強すぎると困ると思ったから。

 一応後で赤ちゃん用の粉か、皮膚に優しいオイルとか作ろう。


 お湯に浸かる所までだいぶびくびくしていたアラだったが、肩まで入ると身体が温まるのが気持ち良いのだろう、エニスに似た穏やかな表情を浮かべている。


 タオルを絞ってアラの頭に乗せておく。湯中りとかの加減も分からないから慎重にしておこう。

 …闘奴候補の子たちの時はあまり感情移入したくないからスキンシップをなるべくとらないようにしていたけれど、この調子で続けると自分は絶対にダメな保護者(仮)になってしまうなあ…。


「気持ち良いだろ?」


 ふすー、とアラが鼻息で応答する。

 膝に乗っけて丁度いい按配の座り位置だったようで、自分の胸に頭を預けてお風呂を満喫しているようだった。


「レナリはどうだ?」

「いつもよりぬるいです」

「この子もいるからな」

「そうですか」


 話しかけるとレナリは隣にやって来る。

 足も手も伸ばせるのだから近寄ってくる必要ないよね?

 エニスもそんな気分だったのかサイズを変更して中型犬サイズになってこちらにやって来る。

 アラが小さくなったエニスを見て大きさが変わっているのに驚いたのか、じーーっと見つめている。


おん?


ふす~


おん!


ふす


 ………コミュニケーションが成立しているように見えるのは自分の見当違いなのだろうか?

 アラが手を伸ばすと、エニスが尻尾の先を絡ませた。

 つるつるとした感触が心地良かったのか、アラは尻尾を?掴んでぐいと引き寄せる。エニスの尻尾は平気だろうか?

 平気なようだ。

 尻尾ごと引き寄せられると、エニスは自分の膝の辺りに寝そべり、太腿の辺りに座っているアラはそのまま身体を預けた。

 尻尾を掴んで弄んだままである。


 その表情はとても心地良さそうで、良い顔だった。

 心地良いと言うのは身体も顔も緩む物だから、表情を無くしてしまっている彼女にも関係なく表れることが分かってよかった。


 彼女は眉もまつ毛もないので、滴る汗を気にして拭ったり、湯気で頻繁に瞬きを繰り返している様だったので顔の角度を調整したりしながら浸かっていると、いつもより長湯になってしまった。

 子供は体温の調節が不得意な筈なので、一度出て身体を洗うとする。

 …。

 こうやって抱きかかえたりすると思うのだけれど、子供って言うのはどうしてこんなに柔いのだろうか? こんな柔さでどうやって動いているのだろうか?

 栄養状態は良くなかっただろうにつやつやとした肌、ふくふくとした感触のおなか。思わず時間も忘れて撫でまわしたくなってしまう。細い身体でも必死に生きている感じがして好ましかった。


 頭、顔、身体と順々に洗っていく。(髪の毛ないけれど)

 洗い場が大きく作られているので、レナリも倣うように隣で髪を洗っている。

 ……レナリも随分変わったなあ。

 短い間だけれど一緒に過ごしているうちに、どんどん綺麗になっている。栄養状態も良くなったせいか、髪の毛にコシが出てきたようだし、肌も綺麗さが増している。

 こんな事をいちいち比べる事ができるようになっているという事は、自分はそれだけ彼女を見ているという事なのだろうか?

 そう言う目で見ないように気を付けているけれど、男なので勘弁してほしい。


 少女と女の間、とも言うべきだった外見は、その短い間でより女性らしくなってきている。

 この早さで変わっていくとするなら、一人前になるのも近いだろう。


 ニリの事をそれまでどうにか出来たら良いなあ。


 ふすー。

「うん?」


 泡を掛け湯で流すと、アラが満足そうにもたれかかって来た。


「気持ち良かった?」


 身体に着いた血とかは念動力で除去したけれど、汗や汚れが全て落ちたわけではないので、爽快感があるんだろう。


 エニスに跨がせてお風呂にもう一度入ってもらって、今度は自分の身体を洗う。


「ヒロさん」

「うん?」

「お背中をお流しします」

「そう言うのはいらんから湯冷めしないように温まりなさい」


 レナリの申し出は何度かあった。その度に断っているけれど。

 彼女は今の自分の立場を、奴隷とか下使いとかそう言う事を考えているような気がする。と言うか、そう言うのしか知らないのだろう。一々口で説明しても彼女からすればよく判らない物の様だ。

 この辺り、彼女が納得するまで教えていくしかない。その為には色々な町へ行ったりして見聞を広めていくのが結局一番近道な気がする。

 ここも課題だな。

 申し出にニリの影響もあるのだし、そこのところちょっと以上に自分はヘタレな気がする。


 身体を洗って再びお湯に浸かると、エニス船に乗ったアラがすいーっとこちらにやってきた。表情は薄いけれど楽しそうで何よりだ。


「楽しいか?」


 聞いてみると、かすかに首が縦に動いた気がした。



+ + +



 ホーグに採取した味の実を渡すと、夕食にさっそく使ってくれた。

 くるみ割りみたいな道具で味の実を割ると、梅干しの種くらいのサイズの種が出てくる。これは大事に土に埋め、今度はミルを使って塩を細かくしていく。(道具はくるみ割りは石と木の枝でホーグがその場ででっち上げ、ミルは買ってあった。)


 今日は轟虫の足から出てきた味の濃いカニの身みたいな奴を炙ってその塩を振った物、おにぎり、野草を灰汁抜きしてから御浸しと味噌汁と言う個人的には無敵に思えるメニューだ。ちなみに自分は野草はそのまま食べるのを苦手としている。灰汁も味、という事で灰汁抜きしないで食べるのが普通の地方とかもあるけれど、渋かったり口の独特の膜が残る様な感覚は慣れていない。原代和国の頃からそうなので、生まれの関係である。

 この世界で言えばエルフなどの森林に居を構える連中だったらそのまま食べるだろうし、細かい事は気にしないドワーフの人たちもそうだろう。

 乗人や獣人は草食を苦手としている人たちも多いので灰汁抜きするだろう、と言う所だ。


 おにぎりは塩むすびで、その内海苔とか作りだしてしまいそうなほど見事な味だった。

 カニの身も味が強い分ちょっとクセが強い気がするけれど火を通したのにぷりぷりした食感にじゅわっと汁が口の中に溢れるのが溜まらない。

 歯応えを未だ残す野草には塩と酢(っぽい物)、いくつかの香草を干して作ったふりかけをかけてある。これがまた良い。しゃきしゃきコリコリとした食感に、ふわりと酸味の香りと香草の風味が鼻を通る感じが何とも言えない。

 おにぎりは塩の実を使っているためか、塩の味が柔らかく感じる。日本で食べた事のある塩と違って自然の物だから中には色々な別の物が含まれているんだろう。

 岩塩とかも確か塩として味が薄い代わりにミネラル分を多く含んでいるとかテレビで言っていたのを聞いた事があるし。

 味噌汁には野草とガルト町で手に入れたのだろう野菜がたくさん入った物だった。

 人によっては味噌汁の具は少ない方が良いと思う人もいるけれど、個人的にはたくさんの種類の具が入ったごった煮みたいな状況の方が良いと思う。豚汁とか大好きだし。もしかしたら子供だからそんな意見になるのかも知れないけれど。


 現代日本の母は味噌汁に肉を入れるのが好きな人だったんで、豚汁が多かったし、オリジナルの味噌汁(味噌汁にオリジナルとか語るのはおかしいかな?)で焼いた鶏肉とか、しぐれ煮の牛肉とかがよく入っていた。味噌汁の中には大抵、具が四~六種類くらい入っていたからその影響でこんな考え方を自分はしているんだろう。

 味噌汁もおかずの一つです、みたいな考え方だと思う。


 アラはその味噌汁を気に入った様子で、汁だけ一気呑みにしてしまった。

 具も美味しいぞ? と箸(これは手製)で残った野草を摘んで口に入れる。小っちゃい子の味覚として苦手かな? と思ったけれど特に見た目は変わらずもっきゅもっきゅ食べ始めた。

 ちなみにホーグも箸で食べている。レナリには教える必要はないだろうと思ってフォークを渡している。


 アラもフォークで食べていたのだけれど、自分の持つ箸に先程から並々ならぬ興味を抱いている様子なのでこの後作ろうと思う。

 箸を作るのはそこら辺の使えそうな枝を万能ナイフで削って作っている。


 自分の箸を持つ手を、紅葉みたいに小っちゃな手で触って確かめる姿に和んだ。


おん!


 鍋ごと味噌汁を楽しんでいたエニスの声の方に向くと、器用に前足でアラ用のお椀を持つエニスがいた。

 アラに向かって差し出す様子がいかにも『ご飯を食べなさい』と言うお兄ちゃんみたいで和みました。



お読みいただきありがとうございました。



活動報告にてお知らせいたしましたが、この作品を書くのに使っているPCが

…逝きました。

フリーソフト怖い。


バックアップも死んでしまうと言う惨事で続きも無くなっています。

これから書きますが、続きは少しお時間をいただくと思います。


備忘録やメモ、設定も合せて吹き飛んだんで、この先どうするべきか…。

と言う有様です。

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