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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第三話 異獣+子供
86/99

服+エニス風呂

8/16(1/2)

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 再び肩車をして役に立ちそうな野草や植物を集めて森を出ると、二時間近く経っていた。

 マップも度々気にしていたけれど、敵性反応もなく、夜営場所のレナリもホーグも問題はなかった様子だ。森の中で一番危険だと思う連中も珍しくいない様子なので、今日はタイミングが良かったのだろうか?


 木々の間を抜けて戻ると、レナリはフル装備で仰向けに寝転がっている所だった。ホーグの鍛錬を受けたのだろう。汗だくで呼吸をするのも億劫な様子だった。


「レナリの調子はどう?」

「やはり竜人の能力は凄いですね。相変わらず鍛錬すればした分だけ成長します。つい力が入ってしまうのを抑えながらやっていますので、既に戦闘能力ならばガルド町(闘技場都市)の闘奴として闘ってもなんとかなるやもしれません」


 いくらホーグが上質な鍛錬をさせたからって、そんな簡単にそこまで行けるのか?

 以前は一度の戦闘なら何とかなるだろう、という評価だったけれど今では闘奴として闘い続けてもやっていけると言う評価に上がってた。どれだけ飛ばして駆け上がるつもりなのだろうか。


「もしあのまま闘奴として生きていたら………」

「可能性の話ですが、異世界人を倒していたやも知れません」


 凄いな。

 ジルエニス、自分を送り込む必要なかったんじゃないのか?

 …まあ他の奴もいるし、そう落ち込む必要はない。ないんだ。


 アラを下ろした後、項垂れたのは気のせいだ。


おん!


「おう、そうだな」


 エニスの鳴き声で我に返る。

 レナリもそうだし、アラも木登りで汗を掻いている。

 風呂の準備をしてあげよう(念動力はなるべく使わない方針に変えたので)。


 自分がマップで川や水脈を探す間、エニスが穴を掘って風呂場を作っていく。

 慣れてきたのか掘る速度も、得体の知れない質感に変わる速さもどんどん速く、正確になって行く。

 しまいには洗い場や、浴槽の中に手摺なんかも作られていくけれど一体どんな知識がエニスにはあるんだろうか?


 マップでは地下水脈―――地下一メートル程に川が流れていると言うので地面を念動力で掘り起し水を浴槽に入れる。この世界では意外とこういった地下水の流れが良くあるのだけれど、これって安全なのだろうか?

 などと考えながらの時間が大体三分ほど掛かったのだけれど、既にエニス特製露天風呂は八割方完成していた。


 いつもの様に水から砂などの汚れを取り除いてお湯に変える頃には、露天風呂は装飾までされた立派な浴槽と化していた。……その二割、敢えて行った理由がわからん。

 この一日以上使わないだろう露天風呂がガルト町(闘技場都市)を出てから点々と存在している。お湯は今頃水になっているだろうから水浴び場だけれど。

 今回は更に風呂桶が三つに腰掛けまで完備されていた。

 おそらく近日中にシャワーヘッドやライオンヘッドが完備される事だろう。

 …………さすがにそれはないな…、いやしかし………。


「お風呂入った事ある?」


 アラに問いかける。


「………」


 返事は首を左右に振る行動だった。

 …仮にこの子の親を見つけたら、念動力の最大攻撃力実験とか始めてしまいそうな返答だ。いやいや待て、決めつけは良くない。


「レナリ、先にお風呂入れば?」

「お風呂はみんなで入る物です」

「説明しただろ?!」


 何故だ、一度目の説明以外は受け付けない仕様になっているのか竜人は?

 何故か毎回この遣り取りがある。

 …一緒に入りたいの、か?……

 子供達と常に一緒にいたから一人で何かをするのが苦手、と言うか寂しいのかも知れないな。


 そこまで考えたら、レナリのその言葉に可愛気を感じてしまった。

 あんまり甘やかすのは良くない気がするのだけれど、まあ一緒に風呂入るくらい良いか。お互い水着を着ているんだし。


「じゃあ準備して、着替える時は人に見られないように」


 女の子って言うのは男の視線に敏感で、ちら見がガン見と言う位わかるらしいけれど、この子はその辺りゆるいと言うか、見られている事に全く気にしない所があるので困る。

 こういう時きちんと教えてあげることのできる人がいればいいのだけれど、男の自分では絶対にダメだ。

 ホーグでも勿論ダメだし、エニスは論外。

 …何か良い手はないだろうか?


「まあ、何とかなるよな?」


 敢えて深く考えずに未来の自分に投げた。

 アラがじっとこちらを見ている。

 なんだかその視線に濁った自分の心が焼かれる気がした。


「アラはどんな水着が良いだろうなあ?」


 自分とレナリが水着でアラだけ裸ん坊と言うのも嫌だろう。


 真っ白な肌と灰青の瞳に合うような水着ってどんなだろうな?

 ……ハーフパンツ位のサイズの目にも鮮やかな真っ赤な水着を出してみた。

 マンガの登場人物が履くような(きっと少し違う意味で)主張の強い感じの物だ。イメージがしやすかったのもあって消費は非常に少なかった。

 やっぱり一度触れた事があるとか、材質の想像のしやすい物だと消費が低く抑えられる。

 見た事も聞いた事もないような物を気軽に作れるようになりたい物だ。


「よし、じゃああっちで着替えようか」


 影箱から自分の水着を取り出して、アラと木陰に入る。


「男の子って言っても、こういう所でぽろんと出すのも変だしな」


 革の衣服は内側に色々あって脱ぎ着が大変だ。それを外すのにコツがあって、と言うか着ている人間じゃないとうまく着脱できない作りになっている。

 服を脱ぐところをアラがじーっと見ている。


「どうした?」


 聞きながら思った。

 アラは服の着方が解らないのだろうという事に。

 着た時はレナリがやってくれたのだろうか?

 彼女は小さい子供の世話に慣れているだろうし、ボタンとかファスナーとかもどういった物かくらいは知っているはず。(それが一度も着た事のない角山さんサイズの制服から得た知識という事は完全になかった事にしたいのだけれど)


「脱がすぞ、覚えてくれな」


 ○ちゃんスタイルなので、オーバーオールの胸元のボタン二つを外す所からだ。

 腰のベリクロをベリベリ剥がし、下ろす。靴を一旦脱いでもらって、服を足から抜く……。と言う工程を人にやらせるのは意外と難しい。

 シャツを脱がす際に、関節の限界とか判らずに痛い思いをさせたくないので慎重にやる。


「肩掴まって」


 自分の肩に両手を置かせて、パンツを下ろす。

 プルプルしているのは急に服を脱いで寒いからだろう。


「寒いよな、ちょっと待ってな」


 水着を持って今度は穿かせ………。



あれれ?




お読みいただきありがとうございました。

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