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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第三話 異獣+子供
80/99

己月+臨死体験

8/13(1/2)


ブブブブブブブ…


「なんだ?」


 突然、手に持ったステッキが振動機能を持ったゲームのコントローラーみたいに震えだした。


「おおおおお」


 ダイエット用の通販商品みたいな振動っぷりだ。


『ヒロ、万能ナイフが言いたい事があるみたい!』

「なんだ、どうした取りあえずストップ落ち付け」


ぶぶぶぶぶぶ(ぴた)


「言いたい事って何?」

『多分、ご褒美が欲しいんだと思うよ』

「ご褒美?」

『うん』

「………」


 嫌な予感。


『万能ナイフも名前が欲しんだって!』

「やっぱり…」


 ネーミングセンスを自分に求めてはいけません。


 ぶぶぶ…


 先程よりも弱い振動が始まった。

「ふむ」、と考えてしまう。確かにこの世界に再び来てから、万能ナイフや革の衣服、ブーツには何度も助けられている。特に万能ナイフには特に必要ないとも思われるだろう変形やら何やら世話になっている。

 それを考えれば名前一つくらい欲しがるならつけてやれ、と思うのだけれど…。


「名前かあ……。自分にはそう言うセンスは求めちゃいけないんだぞ?」

『ヒロが付けることが重要なんだ』

「なんでも良いのかな?」

『何でも良いんだよ』

「……じゃあ己の月で“己月(こげつ)”」


 ぶぶ(ぴたり)・・・・・・・・ヴィヴィヴィイイイイイイイイイイ!!


「なんだ!!?」


 一度止まった振動が五倍増し位で始まった! これ以上強くなったら手に持っていられない!


「どうどうどう!」


 馬にやるみたいになだめようとするけど、これって傍から見たらどうなんだ???


『気に入ったみたい』

「そうなんだ、気に食わなかったのかと思った」


 “己月”、と言うのは原代和国で兵士の時に使っていた槍の銘である。武器の名前、と言うとこれを初めに思い出したので口にしてみたのだけれど…。

 兵士に支給された槍のほとんどがこの銘だったから、大量生産品みたいでイメージが悪いと思われなくてよかった。万能ナイフの事だから自分のイメージを読み取って嫌がる可能性もあると思ったからだ。


「これからも頼むな?」


 ヴィヴィ―――――――!


 持った手から血の気が引くかと思うような振動だった。




+ + +



【自世界】が満ちるまで


残り十%



 魔力の減少も緩やかになってきた気がするし、折角だから核司に気づいた自分の魔法をちょっと試したくなった。

 木陰で休んでいるエニス達を尻目に、自分は万能ナイフ、己月(こげつ)をステッキの形に変える。


 今まで使った魔法の中で一番世話になっていたのは強化魔法だ。召喚魔法の二つは違いが判らないだろうし、こいつでしか違いを感じることはできないのだけれど、ブーツにステッキ、そして自分自身の核司に気づいた事を合わせてどう変わるかを確認してみたかった。


「よし」


 小窓がいくつも表示され、強化魔法に適した魔法陣の情報を表示したり、強化に通じる神様の情報、その中でも魔法陣に通じる神様とのつながりなどを表示していく。

 今回は一番自分が使うのに適した二割増しの強化。

 ステッキが自分の魔力と外側の魔力を捏ね合せ、ブーツが魔法陣で形にする。

 出来上がった魔力---魔法が自分に染み入り、強化魔法が成った。


 体感はいつも通り、あまりに強化の度合いが高いと自分自身が制御できないのだからいつも通りで正解。

 まずは軽く一歩。


 びゅん!


「!!!!?」


 空気が肌を裂くんじゃないかと思うような感覚だった。

 その直後に耳に届いた音は一瞬のうちに凝縮された音で、それを文字にするなら、


「びき!(力みを逃がしきれずに骨にヒビが入った)


 ご!(踏みしめた地面が圧力に耐え切れずに弾けた)


 ぼきん!(強化された筋力に耐え切れずに骨が逝った)


 ぼん!(軽い一歩の筈なのに地面が爆ぜた)


 ぎゅぎゅぎゅぎいいいいいぃ!(地面がなくなる事態に全身の筋肉がバランスを整えようとして身体に力が入る。無論全身を絞り上げるような激痛が走る)


 どひゅ!(想定の何十倍も力が入った事により踏み出された一歩は弾けるような進みとなり)




 ずずずずずざーーーーーーーーーーーーーーー

(………頭も身体もそれに対応しきれず着地ではなく地面に接触しながら滑降、とでも言うような状況になった)





 ごぽ!





 最後に血を吐いたのだけは覚えている。








お読みいただきありがとうございました。

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