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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第三話 異獣+子供
77/99

ハクマイ!+回復薬?

8/11(2/2)

+ + +


「カニ!?」


 沢蟹みたいな奴でもいたのか?

 朝食はカニ身を使った雑炊、としか思えない代物だった。

 ん?


「シロメシ!」

「ハクマイです、ヒロ様」

「いやいやいやいやいやいや!」


 同じ物を指しているよ!


「念のため、身体に負担をかけないように消化に良い雑炊に致しました」

「ありがとうホーグ!」


 いつの間にこんな物を準備してくれていたの? 何でこれを五百年前の自分は知らなかったの? もうどうしていろいろどうにもああもう!

 誇らしげにしているホーグの両手を掴んでお礼を言う位しか出来なかった。


「つうかこのカニもどうしたの?」

「栄養価の高い物をエニス様に聞いたところ、ヒロ様の影からこれをお出しいただけました。

 これは轟虫の身です」

「むし、うめえな」


 和国の時はイナゴ位食った事があったけれど、これは全く違う。もうそのままカニの身である。

 神樹のところで採取したやたらすっぱいレモンの皮もあって、とても良い香りがした。何だかもうホーグがいなきゃ生きていけない気がする。

 フルフルと手が震えているからホーグをやたら驚かせてしまったのだろう。

 落ち着け自分。


「?」


 相変わらず火に掛けている鍋ごと食べているエニスと、やたらテンションの高い自分を不思議そうな表情で見ているレナリ。

 ちょっとだけ混沌としていました。




+ + + + + + +




 さて。

 食事を終わらせた後、自分は一つ大事な事を確認した後みんなと共に移動する事にした。

 確認した事、と言うのはちょっと割愛。

 エニスの背に跨り、後ろにはレナリを引き上げる。

 ホーグは行李を背負って走ると言う。

 大丈夫か、と聞いたらなにも問題ありません!ととても強い言葉が返ってきた。何か勘違いしてるのかな?

 エニスが自分が歩くよりは早く、と言う位の速度で歩き出した。

 ホーグも難なくついてくるので取りあえず疲れたら休憩か、自分と代わろう。


 さて。二度目だな。

 自分は万能ナイフを抜き、片手に持ちながら作業を始める。

 魔力を回復させねば。


 魔力を回復させる。

 と言う考えで思いつくのはどうしても現代日本で触れたゲーム知識が初めになってしまう。回復薬、薬草とかポーションとかエッセンスとか、ええとあとは………グミとかもあったっけ?

 ジルエニスの第一世界では魔力の回復に関する記憶がないからと言うのもあるけれど、どうしてもそっち(ゲーム)の方面になってしまう。

 しかしここで問題が一つ。

 ストック2の消費量が問題だ。

 『解析*数値化』で魔力回復する物を作る場合の消費量が、現在のストック2を百と考えた場合千とかになるのだ。

 影箱のストック1を仮に全部移動させたとしても全く足りない。これで作成した場合失敗して何もできないか、自分の魔力や理力を注ぎ足して自分が死んでしまう。

 理力をギリギリまで注ぎ足しても八百に届かないと言うのが解析結果だった。

 現段階ではどうしようもない、と言うのが結果である。

 ストック2の現在の数値を百とした場合、闘技場都市で作ったバンクルは0.5、銃の弾丸は一つ0.7、テントは0.1だったようだ。

 これらの事を考えると、実際にそれを自分がそれを見た事があるか、触れた事があるか、想像したことがあるか、それを現実的に捉えているかどうかが問題らしい。

 ちなみにエニスの鐙は0.9だった。大きさや形が変わる能力がこの鐙には足されているらしく、それが消費を大きくしているらしい。


 …と言う訳でイメージ。

 魔力を回復すると言う能力のある道具、と考えると何か身に着ける物と言うのもゲームではあるけれど、イメージとしてその回復がとても緩やかな物で薬品とかの方がより効果が高い気がする。

 もっと現実にあっても当然なくらいのイメージを、頭の中にはっきり作らなくちゃならない。

 見た目は……。

 考えてみると、こういった薬品ってゲームの中でもあまりしっかり作りこまれているわけじゃないよなあ、道具でそれを使うモーションも手に持ってなかったし、アイコンとかに表示されている小さな絵から本格的に本物を作らなきゃならないんだな…。

 ネガティブに考えてもしょうもない。

 考えなきゃ死んじゃうんだから頑張れ自分。


 形は………。見た事があるやつは妙に分厚いガラス瓶に入っていた蛍光色の緑色の薬だった。体力回復用の薬はピンクっぽい赤だった。多分大きさは缶コーヒーよりも大きくて五百ミリリットルのペットボトルより小さいくらい。


 解析すると消費は半分以下になっていた。

 いいぞ、この調子。


 味。

 味は緑色だから青リンゴ味?


 解析での消費は四百ちょい。もうちょっとどうにかならんかな……。

 回復する飲み物、と考えるとドリンク剤を思い浮かべる。現代日本での父は毎朝呑んでたから想像しやすい。もらった事もあったし。

 そうして解析すると二百台まで減った。

 やった!


 回復量。

 身体の中にある体力や疲労、他には魔力や理力など特殊な見えざる力にも劇的な効果のある素晴らしい薬品。これがあればどんなに助かるか……。

 解析するとこんな考えでも反映されて消費は四十台になった。

 これならもう作ることはできるだろう。でもここまで考えたのだからもっと消費を抑えてこれからのためにもなるように頭の中での作りこみを考えようと思った。


 あと必要な事はなんだろうか?

 今跨っているエニスの鐙は形が変わるなんて普通ではない特徴があって0.9なら、もっと消費を抑えられるはず。


 …しばらく考え続けて、急に後ろから引っ張られるような感覚があったのでステータスを確認すると、魔力のアルファベット表記がD、総量は二十五%になっていた。

 まだこだわりたいと思ったけれど、さすがにこれ以上吸われると問題が出そうなので十五の消費で一応妥協。

 夜な夜な研究して消費を一以下にしてやる。


 万能ナイフからポロリと落ちてきたのは想像通りの見た目と形、重さだった。

 コルクと思われる蓋を外し、一思いに煽ると安物のドリンク剤の味。

 想像しやすいとはいえ、味ももうちょっと弄ってしまいたいな……。


 続けて四本作って、【自世界】の吸収に備えることにした。

 ステータスでは魔力、理力共に百パーセントとなった。


+ + +


 研究する事はまだまだある。

 うふふふふ。


「ヒロさん?」

「ああ悪い」


 レナリちょっと近い、びっくりします。後ろに跨っているレナリがほほがくっ付くほど近くからにゅき、と顔を出してきてそっちにビックリしたよ。

 …なんだろう、レナリの距離が近くなった気がする。いや、気のせいじゃないだろう。

 ……原因は解ってるんだけれどね。ない事にして振る舞うにも限界があるだろうか?

 これは病気、または前世の記憶関係ではないのであまりどうにかするべきではないんだけれど、どうも何かするべきではないかと自分なんかは思ってしまう。

 余計なのに…。


 レナリはそのまま今までと違う姿勢のまま固定された。

 両手は自分の腹の所で組まれ、密着具合はこれまでの数倍高い。革の衣服がもっと薄手だったら落ち着かないけど嬉しい感触がしたかもしれない。

 シャンプーの香りなんてレナリも自分も同じはずなのに、どうしてこんな風に芳しく漂ってくるのだろうか?

 どうにかならんのかな?

 いや、これは自分の方に原因があるのか?


「レナリ、ちょっとくっつきすぎじゃ?」

「なんだか落ち着かなくて…」


 内ももとか疲れたんだね、と適当に言い訳して休憩にする。

 ヘタレとか言うなよ? これ切り出したのだって超本気だったよ?


 半ばほったらかしだったにもかかわらず、ホーグは全く疲れた様子がなかった。

 マップ表示して調べると移動距離は三十キロ近かった。

 ………いや待て。なんて移動距離?

 時間は一時間ちょいだよ?

 どんだけ早く移動していたの?


おん!


 エニスもホーグも全く疲れた様子もない。

 エニスを撫でている間にホーグは行李から次々と道具を取り出す。

 渡した金額から考えてもどうやって買ったのかわからない程高価そうなティーセットだった。茶葉まで勿論ありました。


「ヒロ様、白茶と(こう)茶、葉茶を揃えました。今の気分はどれでしょうか?」


 ・・・・・・・・・なんて人だ。

 休憩場所に選んだのは川に近い辺りで、現在自分達は川に沿うように移動している。道は相変わらず一度はあったけれど、と言う様子で随分寂れてしまっている。

 水は準備していない。長旅になるのに準備をしなかったのはホーグが魔法で作る事ができるかららしい。

 川があるから自分が念動力でどうにかする事も出来るのでその事は考えていなかった。

 初めて聞く葉茶に興味があったので頼むとまるで執事さんのようにホーグが礼をして作業を始める。


 流れるような動作でお茶を淹れてくれたホーグにお礼を言う。

 どことなくティーカップの装飾に覚えがあった。

 ジルエニスの仕事場で見た奴に似ている。


「ティーカップなどの道具は作りました」

「魔法で?」

「揃わなかった道具類だけですが」

「なるほど」

「どうかなされましたでしょうか?」

「ジルエニスが使っていたのに似ているから」

「そうでしたか。私を作ったジルエニスの趣味嗜好が私にも影響を及ぼしているのでしょう」


 そう言えば、ホーグは連絡係だったのを忘れていた。

 なんか頼りきりで申し訳なくなってきてしまう。


「ありがとう、仕事たくさん押し付けて悪いね」

「私の生き甲斐ですので、お気になさらないようお願いいたします」


 ジルエニス、こんなすごい人を遣わす位、自分はダメな奴なんでしょうか?

 …最初の連絡係、執事妖精の事を考えればしょうがないか。

 よし、もっと頑張ろう。

 ………ちょうどいい相手もいた事だし。


お読みいただきありがとうございました。

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