帰還+『有限創造』
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結局今回も勘違いしていたみたいである。
「なんとかなりそうかな?」
【自世界】にいる自分の前に、ステータス確認を再現した物が表示されている。
そこに『解析*数値化』を再現した物で、自分、エニス、ホーグの魔力を数値化した情報を表示させ、それを現実に反映させている。
今回必要だったのは、複合技とかでもなく、特殊能力単体でもなく、それぞれの特殊能力を別々に使うという事だった。
『解析*数値化』した数値を、『ステータス確認』で表示する。
答えとするなら、どうして今まで考えなかったのかと思ってしまう。
解析した数値は今まで自分だけの考える基準としてしか使っていなかったけれど、それをホーグに見せるだけで今回は問題は解消された。
死に掛けている現在だけれど、頭の固さが一つ解消できたのだから良しとしよう。
今ホーグに見せている小窓は単純に数値を三つ表示している、これは日本の数学の問題なんかであったように、二つの基準からではなく、三つの基準からの方が答えを求めやすいと思ったからだ。関数、だっただろうか? なんか違う気がする。
『ふぬぬぬぬ!』
精霊さん達が頑張ってくれている。
自分を殺さないように霊力を【自世界】から注ぎながら、再現した能力を自分に使わせ、現実にも反映させている。
十以上いる精霊さん達皆が頑張ってくれているおかげで、まだ死んでない。
『ホーグが作業に入ったノ、もう平気なノ』
ナイが言うと精霊さん達が立っていられなくなったように崩れ落ちた。
「ありがとう、みんな」
ホーグが頑張ってくれている、というのにそれを確認できないので今の状況が全く分からない。
現実感がない。
でも周囲は焦っている。
不可思議な状況だ。
こんな状況で唐突に死んでしまう事もあったかと思うと、やはり切ない。
「死にたくないよなあ」
誰にも聞こえない程度の声で言う。
まあ、最低二回は死んでるけど。
「ホーグは上手くできるのかな?」
『ホーグは神だから平気なノ、それで出来無かったら許さないノ』
「……………………………………………………………………そうなんだ………。
考えてみれば、エニスもホーグもステータスを見た事ないもんな。エニスは種族のところ見て必要ないと思ったし、ホーグはなし崩し的にレナリと一緒に連れになったからどうしてもレナリを優先してるし」
あれ?
「ホーグが神の一柱なら、蘇生魔法使えなかったのかな?」
『ヒロ、手っ取り早く済ますために死のうとなんてしないで、私達がそんなの許さないノ』
「そう言う訳じゃないんだけれど…。と思うけれど、そう言う所はあるんだろうな。
心配してくれてありがとう」
確かにそうかも知れない。
死んで蘇る度に仲間には心配されていた。
ニリにはよくグーで殴られたし、トグオの爺様には道徳を説かれた。
シュウはそんな時だけよく泣いてくれた。
五百年前に戻れたとしてもきっと同じことを自分はしてしまうんではないかと思うけれど、心配してくれるっていうのはそれだけで救いだと思う。
自分には頼れる仲間がいるから繰り返してしまうんではないだろうか?
こんな事言ったら精霊さん達に怒られてしまうと思うけれど。
+ + +
「助かった。ありがとう」
エニスが本来のサイズでのしかかってくると完全に潰れてしまうと思う。
いや、本当に潰れるぞ?
全長六メートルの大きさって半端じゃないんだぞ?
「勿体無きお言葉」
ホーグは無茶をしたと思うのに、見た目では全く変わらないようだった。今現在自分が無茶な状況だけれど。
エニス、そろそろ勘弁してくれないかな?
聞くと、ホーグは外の魔力を自分の物に調整して自分に注ぎ込んだと言う。だからホーグ自身の疲労はほぼ無い、と言ってくれた。
本当かどうか調べることもできると言うのは解っているから、嘘ではないだろう。
しかし、
「よくこんな情報で解ったな………」
表示されている数値化された魔力の情報と言うか組成と言うか。まるで機械言語みたいな物がずらっと並んでいてそれが自分の魔力の数値化された情報だと言うけれど、それを見たって自分にはまるで分らない。
体力、魔力、理力なんかを数値として表示できるように調べてみる必要があるだろう。気付けばまた勝手になくなって死に掛けるなんて間抜けすぎる。
「やばいな………」
ステータスのアルファベットが見ている間にランクが下がった。
現在も魔力と理力は絶え間なく【自世界】に吸い上げられている状況らしい。
「出来るかな………」
【自世界】が必要なパーセンテージを解析して表示できるか試してみる。
+
【自世界】を満たすまで
残り八十五%
+
「足りてない…全然だな」
これをどうにかしないといけない。
やらなきゃならない事もあるのに、これではいつまたぶっ倒れても仕方ない状況だった。
「EXスキルって言う位なんだから、ただの人間の自分じゃ辿り着けないような場所なんだろうなあ、本来は」
エニスが中型犬サイズになってくれたので起き上がる。
余りの圧迫感で内臓の位置が変わってるんじゃないかと不安に感じる。
いやそれよりもこっちだ。【自世界】。
ステータス上の魔力と理力はやはり少しずつ今も吸い上げられている様だ。
何とかしなきゃ………。
でもその前にちょっとだけ身体の調子を確かめよう。
「現状改善方法、検索」
こんな適当な言葉で検索が掛けられるのだろうか?
仮眠をとって朝になり、自分はステータス画面とにらめっこである。
「・・・・・・できた」
適当過ぎると思った。
検索した情報はいくつも、と言うかたくさんあって一つ一つを見ている余裕はないと思われる。
見出しを見て行くと、今の状況では難しい物もあるので、絞り込みできないか試す。
「………おう」
広い情報を確認すると言うのには向かないけれど、こう言った目的がある場合はやはり検索は非常に心強いと言う結論でした。
更に再現が最も簡単な物、時間の掛からない物、などと絞り込みを続けて行くと、表示される見出しは二つまで絞れた。
一つ、万能ナイフ
二つ、革の衣服
どちらもジルエニスに授けてもらった装備品が今回有用らしい。
「きっとこうなる事もジルエニスからすれば想像通りの展開なんだろうな」
死に掛ける自分を予想した上でこうやってくれるんだからなあ。
ちょっと情けない。
「すこしだるくなってきたな………」
試しに魔力をパーセンテージ表示してみると、六十%、理力の方は九十四%だった。
自分の魔力は理力よりも数値が低い。アルファベット表記はそのまま自分の総量なので、【自世界】が吸い上げる量が等量なのだとしたらしばらくすればまた倒れてしまうだろう。
小窓を表示したまま調べ物をしていると魔力が十八%、理力が三%ほど減った。
どうやら吸い上げるのは常時、と言うのではなく一定間隔にまとまった量を吸い上げるように出来ているらしい。
それを確認すると、吸い上げた魔力と理力は【自世界】の中で【自世界】用に最適化されると言うのだ。
「ふむ」
気になった事がある。
自分の魔力と理力を回復させて【自世界】が満タンになるようにするよりも、自分から直接注ぎ込むようにできないだろうか?
………検索結果は可能。でもそれにはたった今意識のある段階で【自世界】を知覚している事が条件らしい。
自分にはそれができない。
『知覚』ってところでいつも躓いているな自分………。
鈍感人間。
…あれ? 以前もかなりの頻度で言われていた気が………。
まぶたを閉じて呼吸を繰り返す。
よし、気分を入れ替えて続きだ。記憶に囚われている場合じゃない。
考えてみれば、簡単な事だった。
と言うのが調べ物をしている最中の自分の思った事だった。
自分は万能ナイフの万能さによく助けられていた。武器としては、長さや大きさはもちろん原型すら留めない変化をしてくれていた。道具を生み出してもらうのだってテントや調味料に双眼鏡と野営するのに必要な道具をほとんど生み出してもらっていた。
それを考えれば、今回の件だって万能ナイフからすれば解決可能な範疇だって事を自分は考えていなかったのである。
―――魔力を回復する道具を、万能ナイフで生み出せばいい。
今まで現物を見た事もない漫画に出てきた銃の形にだって変化してくれたのだから、それくらい簡単な事だろう、という事を自分は全く考えていなかったのだ。
『有限創造』、とこの万能ナイフの能力を呼ぶ事にする。
この能力はストックされた物、そこから自分の思考の外に追いやられた物、自分が価値無しと考えた物を別に選り分け、変換する事で生み出す物らしい。
ストックとは『影箱』の中の物の事で、採取した植物に付着していた土や、影の中で解体した動物の血などが『有限創造』用のストック2に回されるようだった。
有限、とはいうけれどストック2でも足りなければ自分の魔力や理力などから注ぎ足す事が可能らしい。魔力や理力を回復できるのなら、事実上無限に物を創造する事ができる。
そうだよね、今まで好き勝手に作っていたけれどいくらなんでも何の消費もなく作り続けるほど便利な代物だったらこのナイフの名前は万能ナイフではなく、神能ナイフになるはずだ。
万能だって自分には過ぎた代物なんだから、最低限もっと調べて使いこなせなきゃこれを自分に授けてくれたジルエニスに申し訳が立たない。
「ヒロ様、朝食が出来ました」
「ああ、ありがとう」
「その後、何かありましたでしょうか?」
「ああ、メシ頂いたら試すよ」
腹が減っては戦は出来ぬ、演者殺すには刃物はいらない雨の三日も降れば良い。あれ、何か関係ないのが混ざった。
お読みいただきありがとうございました。




