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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第三話 異獣+子供
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影箱+進化?

 糞野郎を餓鬼さん達にお任せし、自分はエニスとレナリのいるあたりに戻る事にした。

 村一つ分、と言う程の大きさの「あれ」の処理はいくら想定以上の数やって来てくださった餓鬼さん達とは言え一日二日でどうにかできるわけがないだろう。一週間、もしかしたらその倍くらいはかかるかも知れない。


 三十近い数の餓鬼さんの中で一際大きな、もしかしたら長に当たるかも知れない餓鬼さんに、自分の頭ほどの大きさの鉱石のような物を渡され、自分は後をお任せし戻ってきたのである。

 渡された鉱石のような物は「竜鉄」と呼ばれる物、と解析結果が出ている。

 このジルエニスの第一世界の竜は他の世界の竜と比べてどういった違いがあるのか知らないけれど、この鉱石のような物は竜の体内で作られる真珠みたいな物らしい。ドラゴンパール、なんて呼び方もされているらしく、非常に高価な物であると言う。




 まあそれはさておき。




 エニスとレナリがいる場所まで戻った。

 今回大分頑張ってくれたレナリは呪装(装備品)を外した状態だった、けれど未だに戦闘態勢と言った様子である。

 エニスの方は寝そべってゆっくりしている。


「ただいま」


 手振りでレナリに促すと、槍を収めた。収めたと言っても気持ちの問題として収めた、と言う様子だ。普段は解らないけれど、少し離れた位置からでも彼女の瞳の虹彩が縦にしっかりと裂けているのがわかる。目の色が変わっている、と言う事なんだろうか?


「おかえりなさい」

「平気か?」

「はい」


 返事は良いんだけれど、何だか気が入ってしまった状態、と言う感じだ。興奮冷めやらぬ、と言う事だろうか?


「あの、ヒロさん。私のせいで………」

「うん?」

「私が弱いせいで、………お許しください」

「何のこと?」

「私がしっかりあの魔族をどうにか出来ていれば、ヒロさんが怪我をすることもなかったのに………」

「?………あ~」


 レナリに言われている事がわかるまでだいぶかかった。


「レナリは初めての実戦だったんだ。何から何まで上手くいくはずがないよ。今回レナリは凄く頑張った。あれは相手が悪かったんだ。

 下手打って失敗したのは自分なんだからレナリが謝る必要は何処にもないぞ」


 そも。

 あの程度の怪我なら復讐の(とりこ)さんにやられた事が何度もあるし。

 復讐の神以外でもあの程度の怪我よくある事だったし。

 レナリが気にする理由なんて何もない。

 表情が暗いレナリにそれを説明しても、………納得しないだろうなあ。


「もし今回レナリが自分で失敗したと思っているのなら、次に似たような状況になった時今度は上手くいくようにしておくと良い」


 初の実戦としては上手く立ち回ったレナリには、他にもニリとの関係があるとはいえ、戦闘にも決闘にも才能があるのかも知れない。考えてみれば自分の初めての実戦に比べれば雲泥の差だ。…思い出すだに餌吐きそうなので瞼をきつく閉じて忘れるフリをする。

 虎や竜の要素を持つ乗人にはそう言った才能があるとどこかで聞いた事があるから、竜人のレナリにもそう言う所があってもおかしくないと思った。自分の恥を忘れたフリをして考えをそっちに持って行こうとする侘しい行為である。


「今回は普通の相手じゃなかったしな。轟獣相手にもレナリはよく頑張ったぞ」


 自分よりもちょっとだけ、あくまでちょっとだけ高い位置にある頭を撫でる。

 レナリはまだ旅にも、戦いにも慣れていない。今回巻き込んでしまって申し訳ないとすら思う。一応、保護者面してみる。

 レナリは両手で目の辺りを覆った。隠していない口の辺りの緩みっぷりは指摘した方が良いのだろうか?

 ………、人前に裸を晒すのも恥ずかしがらなかったレナリにしたら、珍しい反応だと気付いた。


「………」


 ちょっと嫌な予感がする。

 一か月も経たずに情操教育の成果が出ていると思うには、自分は自分の教育者としての才能を信用していない。

 ………少し嫌な予感がする。

 あまり調べたくはないけれど、知らないといけない気がして解析を発動させた。

 嫌な予感どころの騒ぎではなかった。




  ◇◇◇◇◇◇◇

レナリ(乗人(竜))

  体力 C―B

  魔力 D―B

  理力 |―D

  筋力 B

  身軽さ B

  賢さ C

  手先 D―C

  運 E

 装備品

 一般的な平民の服のセット

 黒塵の兵士セット(槍のみ)


 特殊能力

  前世の残滓(2)

  不幸

  ◇◇◇◇◇◇◇





「………育ってる……」


 ステータスが向上しているのは良い事だ。文句はない。


「育ってるよ」


 見た目も凄い勢いで成長しているんだから、体力なども向上していくんだと思う。彼女は竜人だから一般的な人間に比べれば成長も早いし、成長の上限も高いだろう。


「育ったな」


 普通から考えれば馬鹿らしくなるような成長具合だけれど、下手したら一か月もあれば自分に並ぶくらいのステータスになりそうな気がする。


「育っちゃったか~」




 …………。




 ………育っちゃいけない物が育っちゃった。




「残滓、残り滓って育つのか………」




 それって種子じゃないのか?

 前世の残滓、と言う特殊能力が2になっていた。

 あと彼女が目元を覆った両手の鱗が膨らんでいるようだった。

 それは前世の残滓とは違う理由である。膨らんでいると言うより、盛り上がっている、と言う状況の様で、手の甲の三枚ずつある緑色の鱗は少しくすんだ色になっていた。刃物の代わりになってしまいそうなほどに堅そうで鋭そうになっているのだけれど、解析結果が表示された瞬間噴き出しそうになった。

 これには特別な理由があるのだけれど、それを語る事はしない。

 想像もしない。


おん!


 頭を抱えたくなる状況だったけれど、エニスの吠え声で現実に戻ってこれた。


「エニスもお疲れさん」


 いつも通りの極上な手触りを感じる。自分の手の辺りにエニスが鼻先を摺り寄せてきているので掌でその毛並みを撫でた。


 家族に負担はあまりかける物じゃないよな、理想としては。

 でもいくら色々出来る(九割九分五厘位ジルエニスのおかげの)自分でも、上限は他人と変わらない。人に出来ることで自分が出来ない事もある。エニスには頼りっぱなしだから、もっと色々上手くできるようになりたい。


「今回もありがとう」


 エニスにはいつも助けられている。

 なんか酬いてやる方法はないだろうか?

 鼻の辺りを撫で続けると、エニスが心地良さそうな表情を浮かべる。撫でている自分も幸せな気分になれる誰もが幸せになる事が出来る行動である。

 はあ、疲れた気持ちが癒される。


 あまり思い出さないようにしていた五百年前の仲間、ディーケンの事を深く思い出してしまったからなのか、自分では到底再現できないような彼女の技を真似てしまったからなのか。

 もしかしたら召喚魔法で魔力を使い過ぎたのかもしれない。身体の調子が下向きになっている気がした。

 あれくらいの戦闘ならいつもやっていたと言うのに、自分も随分鍛錬不足になってしまっているようだった。出来る事が出来なくなってしまうと言うのはやたら口惜しいので、身体を鍛え直そう。


「そうだ、色々やんなきゃな」

おん!


 轟獣や轟虫の部品が山と積まれていた。

 公園の大きめのジャングルジム十位の規模だった。

 つか最初に気付け自分。なぜ気付かない? 疲労の具合が酷いのか??


「ありがとうエニス」


 レナリは血霞や血臭で気絶してしまっていたようだから、これを集めたのはエニスの独力なのだろう。準備の良い家族の首を撫でながら、自分は影箱を念動力で引き延ばす。

 残映剣の時に解ったのだけれど、念動力は知覚出来る物に触れる事が出来る能力で、とんでもなく万能な力である。自分の影なんてものでも、『知覚』できているなら、つまりそこに影があると自分が理解していれば触れる事が出来る。


 楽をしたい自分の思惑が最も反映されている能力だろうなあ。

 いや、その辺り調べてないけれど念動力などの現理法や魔法は自分の思惑がそのまま形になった物なのか? ………調べるのが怖い。

 一旦忘れる事にして(怖いと思ったので)、影箱を大きく引き伸ばす。

 自分の影がみょーんと伸びて行く様はちょっと漫画みたいで恰好良い。影が伸びるとそこから人型の何かが出てくるなんてのは結構ある設定だったよな。

 今回は入れるわけだけれど。

 引き延ばした影が積まれた山を覆う。空に雲があるかのように、自分の影が山を覆っていく光景はちょっとテンションが上がる。


「収納だ」


 声に出してイメージする。

 【自世界】で精霊さん達と会話し、能力の大まかな枠の様な物を知った今、ジルエニスが授けてくれた能力はとんでもない性能がある筈だと自分は思っている。

 これくらいやれてしまうんじゃないかと思ったわけだ。






 ………上手くいかない。






 練習が必要だな。

 一朝一夕でできる様な物ではないらしい。考えてみれば当然か。

 素直に念動力で掴んで影箱の中に山を入れていく。

 影箱もそうだけれど、自分はもっと色々と習熟しなくちゃなら無い物がある様だ。万能ナイフもブーツもそうだ、使いこなせるまでかなりかかりそうだ。


おん?

「なんでもないよ」


 エニスが不思議そうにしている。当然だ、突然にやにやし始めたんだから自分。

 元は百を超える数をさらに細かくしてしまったのでかなりの数の物が影箱に呑まれている。間断なく百十一の念動力の腕が次々に影に収納していくが、それでも時間が掛かる。

 価値がないだろうと思うような、割れた牙や粉々になった甲殻みたいな物も取りあえず全部放り込んでいく。

 物の数分で全部を影箱に入れこんだけれど体感には変化はない。自分の影の中では一体どんな状況なのだろうか?

 色々な物が詰まっているので、混沌としているかもしれない。



お読みいただきありがとうございました。


帰ってまいりました。

皆様のひまつぶしの役に立てれば幸いです。

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