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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第二話 過去+復讐
66/99

+『明気』+『暗気』=

外道注意。

+ + + + + + +



「人間が!」


 『崩力』は本来ならば他の末端の力とは相容れない滅びの力だ。

 ラロースと言いこの糞野郎と言いそれをどうにかする技術と言うのは一体どうやって会得したんだ?


 解析によると現理法『瞬間移動』を使ったリョトニテルが念動力の攻撃を回避したのは解った。しかしその直後に撃ち出された塵を集めて作った岩だか鉄だかの塊は解析が不明だった。


 五百年前にこいつが好んでいた攻撃魔法、『物質生成投擲魔法』だろう。しかし記憶の物よりもかなり様子が違った。


 塊の大きさや、生み出された物に絡み付く黒紫色の(もや)やこちらに迫る速度。糞野郎の癖に更に強力な攻撃方法を身に着けている様だ。


 精霊さん達が頑張っているらしく、解析を全体ではなく部分的に切り替える事で集められる情報を絞って対応している様だ。


 迫る代物は自分で一抱えできるかと言う大きさの物で、速度は早くなっているが………ぬるい。


 『崩気』(崩力を【自世界】で凝縮膨張を繰り返して作る気)に直接『暗気』をぶつけてみる。


「ははははは!」


 効果は小窓に表示される。

 『暗気』も『明気』同様、『最適化』する使い方が正しく、効率が高いようだ。


 迫る塊を再び念動力の足場を作りながら(一つくらい残しておけばいい物を全部攻撃に転化していた)避ける。避けながら自分を通り過ぎていく塊に『暗気』を使った念動力をぶつけてみた。


 塊は砕けたが、やはり『気』を作るのは直ぐにできる事ではない様だった。


 『明気』で最適化した場合と結果が違う様だ。


 『明気』は崩気を減衰する、『暗気』は崩気を壊す、と言う所か。


「はははははははは!」


 『明気』『暗気』共に攻撃防御に使えるらしい。使い方次第と言う事だ。


 それに気付くのと、ナイ達精霊が方法を変えるのは同時だった。


 『解析*数値化』に『暗気』を使う。『明気』の場合はそこに崩気がある事を知る事が出来たが、『暗気』を使えば崩気を無視して解析が可能になると踏んだ。


「はははははははははははははははは!」


 うるさくて、すまん。

 今はまだ客観視できているけれど、頭がおかしくなっていた。


 【残映剣】を五つ作り上げながら、自分は逃げようとする糞野郎に向かって念動力の道を向ける。慣れないのもあるけれど、念動力だけを使うより複合技術は異常に難しい。【残映剣】作るだけなら良いけれど、戦闘に使えるようになるのはまだ先だろう。


 目の前に再び迫るリョトニテルの魔法の塊を『暗気』をぶつけながら万能ナイフで斬り捨てた。刃に気を這わせるようにするのもぶっつけ本番でできる事ではなかった。


 やる事が一気に増えて楽しいけれど、………。


「ずぅぅりゃああああ!」


 『暗気』だ。

 今回こいつの相手に必要なのは『暗気』だ。


 いや、最終的に全部使うけれど『暗気』を主軸に組み立てて無力化して、何度蘇ろうと後悔させて砕いてひき潰して切り刻んで引き千切って、

「ぶっ■らしてやるぞ糞野郎がああああああ!」


 復讐って最高。


「人間が人間が人間が!」


 良く見れば、未だに完全回復に至っていない様で、身体の各所にさっきは無かった目玉がくっついている。もしかしたら目玉に意志が別にあるのか? 身体の各所でうぞうぞ動いている奴はリョトニテルの身体に入っていた目玉なのか?


 精霊達、『魔物化』のプロセスだけ重点して調べてくれ。

 【残映剣】で出来たのは二本、念動力で掴んで目玉に向けて投擲。


 同時にリョトニテルを念動力の腕で掴む。


 本来そこにはない目玉に攻撃を仕掛けると、今まで全く違う方向を見ていた目玉がぐるりと動いた。



ぼん!



 解析した小窓に、崩力を爆発させた物だと表示された。

 あの目玉、リョトニテルの意とは別に動いているのか?


 【残映剣】は条件付けの方法などまだ学んでいなかったから、物理的な剣と大して変わらない存在だったのもあり、水晶の様な質感のそれらは爆風に流されてあらぬ方向へと飛んで行った。


 念動力で投擲したとは言え、かなりの速度であるし、村一つ分の大きさのリョトニテルにそれを避ける速度はない。


「いつまで触れているこの虫けらが!」


バカン!


 いつぞや聞いた、『亀裂』を生み出す魔法だ。

 純粋な魔法だが、その先にあったのは黒い闇ではなく、複数の瞳だった。


 魔獣の群が、ここではないどこかからこちらを伺っている。


「残念だったな!」


 小窓がいくつも表示される。


 少し視界が狭まるが、なければ困る。

 この辺りは精霊さん達との研究が必要か。


 スズメの魔獣が頻繁に結界を布いた話など初めて知ったが、その結界によってこの辺り一帯はマーキングされているらしい。本来ならば召喚魔法は凄く面倒な物で、争いごとに使うような物ではない位の工程が必要なのだけれど、分担する事で一気に大量の召喚を果たせるようになったと視界にある。



 スズメって利口なんだな。



 自分は万能ナイフを銃にして、亀裂を生み出す魔法その物に射撃した。

 跳びだそうとしていた魔獣は亀裂が消えた瞬間どさりと落ちて、身体は三分の一位であるが、気持ち悪い音と見た目で再生を始める。


 自分はリョトニテルを念動力で掴んだままその小さな猿の魔獣、動物が変じたらしい魔獣の頭部を射撃。弾丸は爆発するようになっていて爆ぜた。


「まだ四発あるぞ?」


 リョトニテルが息吹の準備をしている様子だったので、顔面を重点的に残りをぶつける。


 鱗の堅さが常識知らずなので着弾の度に火花を散らしたが、火花が散る度に顔面を包む程の爆発も起きた。


「げえはははああああああ!」


 炎の息吹が吐き出される頃には、自分はそこにはいなかった。

 顔面に爆発喰らいながら息吹を出すなんて結構根性がある様子だ。


「『念動力』」


 上顎と下顎を開いた状態で固定。

 先割れしている蛇のそれと似た舌をロングソードでぶった切った。


「『強化魔法』」


 足跡の一つが光を放つ。


 魔法陣を使った神様もおられたのか、今までにかかった時間がちょっと虚しく感じる程簡単に魔法が発動した。


「おりゃ!」


 まずは前足。


 初めてロングソードが弾かれる。


 竜の鱗の堅さもそうだが、斬られる方向に合わせて刃筋を立たないようにしたらしい。掴んでいた念動力の腕は石灰の粉になっている。


 『暗気』で最適化した物でもなかったから仕方ない。


「いよおも!」

 物理的に声を出しているわけでもなかろうに、何を言っているのかわからない言葉と同時に自分に向かって前足を振りかぶる。


「良いのか?」


 攻撃に合わせて刃筋を立たせないようにしたから斬撃は防がれたが、竜の鱗を纏っているとはいえ、攻撃に差し出された腕は斬ってくれと言っている様な物だ。


 右前足を切断。


「は、はははっはあっはははははは!」


 どっちが魔物かわかりゃしないような笑いは自分である。

 血が噴き出し糞野郎が痛みを堪えきれない声を上げた瞬間、思わずやってしまっていた。


 後悔している、もっと細かく斬れば良かった。


「わあああああああ!」


 悲鳴とともに塊が眼前に迫るが、こっちは自前の物の他に百十一の見えざる手がある。勿論『暗気』で最適化している腕は塊に籠った『崩気』を打消し、残った塊を砕くに充分な鎧となる。


「どうした? 収束息吹の一つも放ってみたらどうだ?」


 実の父親を利用し、親を持つ子供の心情を利用し、その場しのぎを上手に使って自分達に攻撃してきたのなら、この程度で終わる物ではないだろう。


 終わるのなら許さないし、終わらせる前に自分に関わった事を後悔させてやる。


 落とした右前足を繋ぎ、舌を繋ぐのを待つ。


「もう一度、同じ所を斬りおとしてやるよ」


 ディーケンの痛み、可能な限り再現してこいつに味あわせてやる。いや有言実行をするなら二十倍か。


 『崩気』の扱いは面倒だが、それ以上にさっきから加減して戦うのが非常にやり辛いのだ。その辺りの鬱憤も含め、一週間ぐらいは戦う覚悟である。



ありがとうございました。

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