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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第二話 過去+復讐
65/99

+ディーケン+

短めですが、これだけで一つの部分としたかったので

こういった形にて失礼いたします。

+ + + + + + +



 ディーケン。

 魔族でありながら地上を旅する中、魔王が現れたことで行く場所を失った自分の師匠の一人。外見のコンプレックスから魔界に嫌気がさし、気ままに旅をすることを選んだ女性だ。


 吸血族、雪肌族の乗人。


 吸血族はその名の通り吸血鬼に似た一族で、雪肌族は雪女の一族だ。


 日本にいた頃の自分だったら、この二つから想像するのは美男美女、ではないだろうか?


 美しく鋭い犬歯を、犬歯と言うより牙を持つ、青褪めた肌の吸血鬼。


 儚げな印象を与える、悲恋の物語しか知らない白い肌の女性、雪女。


 彼女はその二つの一族の間に生まれていながら、外見は素朴な印象を受ける人だった。それは周囲からすれば変に見えていたらしい。


 外見を想像するのなら、美しくて当然、みたいな先入観が彼女には辛かったと言っていた。


 確かに二つの一族の特徴を彼女は持っていた。

 鋭い犬歯、透き通るような白い肌。


 彼女の歯は全てが牙のようになっていた。白い肌に浮かぶ血管がゆらめく呪いの様だ、と彼女は嫌っていた。


 真っ白な肌に浮かぶ血管の様子は、揺らめきながら這い上がる炎の様に見えると彼女は言っていた。確かに、白過ぎた肌は頬まで血管が見えていたし、赤と朱の色合いのそれが身体に浮かぶ姿は今まで見たこともない物だった。


 牙を覗かれるのが嫌で、言葉を多くしない。長い言葉が必要ならば口元を隠して話す彼女。


 細い目、丸い鼻、そばかすの浮いた肌、体格は胸板が厚く肩幅も広い。水泳で鍛えた女性を想像してその三割増し位がっしりした感じだろう。


 生活の中で鍛えられたのか、生まれつきの物なのか、逞しい女性と言って自分が思い浮かべるのはきっと彼女である。





 出会った時も衝撃的だった。





 ハイキックで轟獣の骨を折っている所だった。

 吸血族は力が強いらしいが、その蹴りの鮮やかさと素早さを思えばみんながみんなそうじゃないと思う。だって轟獣のイノシシはその一撃で首が取れかけていたし。


 教えてくれとせがんで結局使えるようにはならなかったが、彼女はリーチの長い相手と戦う場合、腰のロングソードを足で矢みたいに蹴り込んだりするのだ。足が手と同じ位に器用だったのだろう。足で剣を持って(・・・)戦うとかしていた。自分は結局足を攣る回数を増やしただけに終わった。

 彼女は白い肌には全く似つかわしくない、トリッキーさを兼ね備えた凶悪なパワーファイターだった。


 万能ナイフが変じたロングソードは、彼女が使っていた物が原型である。


 魔族って言うのはなんでこんな化物ばかりなのかと思い、その後に会う連中も凄まじいのしかいなくてどうした物かと思った物だ。


 旅の最中手に入れたと言う特別なロングソードは、魔族の力で使っても刃毀れ一つしないのに、見た目店売りの物と判別がつかない物だった。その後、ドワーフの神が鍛えた内の一つである事がわかるけれど、そんな凄い武器を手段の一つとしか考えていない所も好ましかった。


 自分は剣と鎧が無ければ何もできないし、轟獣を蹴りで倒せとか言われても未だに無理だろうからだ。


 そんな逞しいとしか言いようのない人なのに、赤面症で(赤面すると顔に浮いた血管がまた凄い事になるのだけれど)、照れ屋、表情を隠すのが苦手ではにかんだ時素敵な顔になる人だった。雪肌族の血を引いているのに熱いお風呂が好きで、料理などの家事も完璧で、人として憧れていたんだと思う。


 だから彼女が魔族を止めるとふらりと消えた後、酷い有様で再会した時は自分は涙を抑える事が出来なかった。


 複数に割断された彼女の遺体は、自分達に見せつける様に戦場の最前線に掲げられていた。酷い目に合ったのだろう、口元を隠すのが癖で、牙を並んでいるのを見せたがらない彼女が大きな口を開けていた。限界まで開かれている口には、根元から舌がなかった。自害する事すらできないようにしたらしい。(半端に残った場合舌が丸まってしまって器官を塞いで呼吸が出来なくなる。舌を噛み切って死ぬと言うのは呼吸困難で死んでしまう事である)


 身体に無傷な所なんてなく、最後に素っ気ない会話で終わった事を自分は死ぬほど後悔した。いや、死にきれなくて後悔した。彼女がそんな考えで話しかけているのを知らなかったから、自分はいつも通りの会話をしているのが悔やまれた。


 戦場に立ち尽くす自分は、仲間たちにとってさぞ邪魔な物だっただろう。


 『神弓』のシュウや亀の一族のトグオ。長命種の二人が自分を守ってくれていなかったら自分は死んでいたかもしれない。長命種は人との寿命の差と同じ位、人よりも強い力を持っていた。





 身体の小さな『神弓』シュウが身を挺してまで自分を守り、

 大群の魔獣や魔族をトグオが防ぎ、

 蛇人の大魔道士は敵を薙ぎ払い、

 鬼は自分の相手に忙しく、

 レナリは自分を引っ叩いていた。





 それでも自分は何もできずにいた。



ありがとうございました。

次話は外道ですのでお気を付け下さい。

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