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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第二話 過去+復讐
60/99

+エニス=

この後の兼ね合いの関係で短い分量となっております。

もっとボリュームを増すように書きたかったのですが、文面が酷くなると思われたのでこの形にて失礼いたします。

+ + + + + + +



 失敗した。

 エニスは深く後悔する。


 魔物を倒した後、ヒロを思って呼んだがヒロは傷を負ってしまった。


 見れば瞼を閉じている傷だらけの家族。彼に報いるにはどうすれば良いだろうか。エニスは冷静な振りをして、全身の毛並が逆立つ様に膨れ上がっている事を隠せていなかった。


 モグラを炭屑に変えた物の何倍にもなりそうな紫電が彼の美しい毛並みに奔る。エニスは考えている。どうすれば最善だったのかを。


 ヒロが力を使いこなせていないのは知っている。そして授かった力を使いこなす必要がない位に強い事を知っている。


 何故なら彼は五百年前の英雄で、魔力も理力も崩力も知らないで魔王を討滅したからだ。


 感覚が鈍っただけで今回無様を晒したエニスとは違う。


 ヒロの役に立てることはエニスにとって大事な事であり喜びだ。


 ヒロを傷付ける全てから、ヒロを守る力が欲しい。


 ヒロを害そうとするジルエニスが言う異世界人も、異世界人に祝福を与えているだろう神も、エニスは絶対に許さない。


 身動きが取れないラロースの首を噛み千切ってやりたくなるが、ヒロがそれを望まない。


 見ればヒロの周囲には、ヒロの装備から立ち上がる気配がある。


 それが霊力である事は何となく鼻でわかるが、ヒロが今の状況にどう対応するか分からない。


 だからエニスは溜め込む。


 身の裡から零れそうなほど昂る怒りを、失策した自分自身への怒りと一緒に。


 力が欲しい。


 ヒロのやり方を好んでいたが、エニスにはエニスのやり方がある。


 ヒロと一緒が良かったけれど、そうはいかないらしい。

 口惜しい。

 エニスはヒロの家族だから。


 誰よりもヒロの隣にいる存在なのだから。


 神が数多いるのならば、こんな神がいても良いだろう。


 成長し、より強くなる神がいても。


 決意を新たにするのを待っていたように、

 ――――ほう、と音が鳴った。


 エニスだから聞き取れた、特殊な音である。

 エニスがそちらを見ると、そこにいる筈のヒロの姿が見えない。


 いる筈だが、エニスの目には一瞬それを確認する事が出来なかった。


 様々な色が、ヒロを包んでいる。


 それは光で、何か特別な力を持っているようだった。


 エニスが知覚できない力、それはおそらくエニスを生みだし、ヒロに能力や装備品を授けたジルエニスの力だろう。


 それは、ヒロの影から溢れているようである。


 エニスは聴覚と嗅覚に、ヒロの匂いに近い何かを感じ取っていた。


 近い、と言うよりもヒロを想っている物が放つ、特殊な匂いだ。


 それがヒロを包み、ヒロの身体に変化が起きていた。


 血液が補充され、肉体の欠損が修復されていく。


おん!


 エニスは自分にない選択肢がある事を知った。


 それは狩りを好む獣が、家族にすり寄る事がある様に親愛を示す感情から現れる力だった。


おん!


 獣の力とは。

 牙や爪、単純な力だ。


 しかしエニスは獣神だ。

 獣の神は古今東西それとは違う力を示す事がある。


 呪いだったり、恨みであったり。


 感情から来る力である。

 なるほど、とエニスは感じていた。


 力の表し方には様々な物がある。


 これは良い。


 ヒロの為になるのならば、ヒロと同じ事が出来ればいいわけではない。


 ヒロの為になる力とは、牙や爪、身体に備わった力とは限られていない。


 獣神はその光景から、新たな別の光を感じた。





 ゆっくりと瞼を開く家族を見て、満足げにエニスは鳴いた。





ありがとうございました。

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