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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第二話 過去+復讐
59/99

+異世界救世経験者の英雄=

+ + + + + + +



 自分が十五の苦難を乗り越えた所など細かく説明する必要はない。


 さっさとはじめなくてはならない事がある。


 そう、研究である。


 ジルエニスにもらった数々の力とちゃんと向き合える日が来たのである。


 十五の名前は、色にちなんだ物にした。


 最初はナイと同じように役割にちなんだものとして考えていたけれど、見た目の色と近い方が名前を思い出せると思っていたからです。そう言う意味でナイはみんなと違う特別な扱いになってしまったけれど、精霊さんたちにとって名前を手に入れる事のみが重要であったらしく、今の所不満の声はない。


 現在。


 自分は身体中に精霊さんを纏わせながらコタツで玄米茶のお代わりを頂いている。


 飲み慣れた味も、既に三杯目なんだけれどもいくら飲んでも飲み足りないと思ってしまう。味が良くなっているのだ。鶏牛蒡の時も思ったけれど、茶葉ももしかしたら和国と日本では大きな違いがあるのかもしれない。


 肩や腕の所、胡坐をかいた上にいっぱいいる精霊さん達は名前を貰ったのが相当嬉しかったのか、楽しそうにしている。子供の様なはしゃぎようだけれど、そこは少しナイと違うように感じた。


 ナイは湯呑みを持つ自分の右手にずっとくっついているけれど、器用に落ちないようにしている。仮に自分だったら大変な目に合っていそうだけれど、危なげない様子である。


「はあ………」


 溜息と一緒に目の奥に突き刺さった痛みの残りを吐き出したい。


 名前を付ける順番で少しもめたけれど、全員に名前を付けると思っていなかったらしい精霊さん達はそれはもう喜んでいた。


 待たせてしまった申し訳なさがあったので、呑み込みそうになる言葉は最後まで責任を持って言った。ちょっとだけ誰かに褒めてほしくなった。


 魔王と戦った時だってこんなに辛くなかった………。


「みんな」


 今まで身体の各所にいた精霊さん達はコタツの天板に並ぶ。


 八人ずつの二列横隊の様は兵士経験のある自分からしても見事である。一糸乱れぬを体現する姿に素直に手を叩いて感動を示した。


『どうしたノ、ヒロ?』


 名前を付けた順番は適当だったのだけれど、それがそのまま精霊さん達の並び方に反映している様だ。もしかしたら悪い事をしたのかもしれないけれど、謝る必要があるのならこの先調べてしっかり謝ろう。


「聞きたい事があるんだ。皆がしていたって言う『悪戯』について」


 寂しそうな顔をする子がいたのですぐに繋げる。


「ジルエニスにもらった能力や道具をもっとちゃんと使えるようになりたいんだ」


 そう言い切ると、『ステータス確認』のウィンドウが開き、自分のステータスが表示された。


 別の窓で使用できる魔法や現理法も表示され、続いて検索バーも出て来た。


 次に設定用小窓、地図、時計と続き、何だかいつもよりも多いし大きい。


 小窓はいくつも表示され、最終的にウィンドウ同士が重なり………。全方位に窓が表示されている。


 最後に表示されている温湿計なんて初めて見るし、それに重なって見えないけれど武技情報なんてのもある。


『実際にはこの二倍くらいあるノ。これが『ステータス確認』を再現した物なノ』


 初めて『ステータス確認』を使った時、自分は自分の名前をヒロとした。


 考えてみたらその時からこの子達は自分を見ていたんだろう。


「一度にこんなにあったら、急ぐ状況だと大変だね」


 灰色、黄緑、紫の子が前に出る。

 名前はグレイ、キミドリ、パープルである。黄緑っていえろうぃっしゅぐりーんとかになる筈だったから長いので日本語にした。


『ヒロのイメージで必要になる物を選別したりしていたんだ』


『数値の自己評価値は、こうすれば不思議に思ってくれるとしたの』


『検索バーはヒロが困っているから出せるように直したの』


 検索バーに『聖霊トルシー』の事を入力してみる。

 表示される情報を読むと、『聖霊』と言うのは霊力以外の力を扱う事が出来る精霊を呼ぶ際の分け方とするのが普通であるとの事だ。トルシーが神の坐を降りたのは、…………第一世界のバランスの関係で、神様の数は最大値が決まっているため、新たに生まれた神様がいた場合その数に応じて坐を降る存在があるらしい。


 ………。


 エニスの事ではないだろうか?


 エニスは獣神だから、そのためにトルシーが坐を追われてしまった、と言う事となると申し訳ない気持ちになる。


 八百万の神様は、正しくそれだけの数の神様がいると言う事である。


 その事を深く考えていなかったけれど、もしかしたら五百年前の精霊神の代わりとしてトルシーが神様になり、獣神エニスが生まれたから神の坐を降りたのだろう………。いやおかしいと思う点がある。

 検索をすると、トルシーは精霊神だったらしい。


 精霊神の坐は第一世界にとって必要な坐の一つであるので、獣神が生まれたのなら別の獣神が一柱神の坐を降りる事になる。


 新たな精霊神とはどんな精霊さんなのだろうか?


 検索を掛けようとしたら、ナイが言う。


『精霊神は私たちなノ』


 ……………。

 色々な神様がいる。

 中には複数を持って一柱となる神様がいてもおかしくないだろう。


 ………。

 今度トルシーに会ったら土下座しかない。


 自分のせいで神の坐を追われたなんて洒落にならん。


「あ、でもナイはさっき言ってたじゃないか。自分の精霊だって」


『ナイ達全員で精霊神なノ。私たちそれぞれはただの精霊なノ』


「もしかして凄い大変な事じゃないのかな?」


『私達はそれぞれがヒロの精霊になったノ。精霊神の役割は端役に任せていればいいノ』


 検索する。


 どうやら精霊神も一柱ではない様だ。

 知らなかった。


 それを端役、と言い切ったと言う事は、もしかしてナイ達は凄い格上の存在なのだろうか?


 ………怖くて聞けない………。


「あ、でもナイは霊力しか使えないんだよね? みんなもそうなんじゃないの?」


 神の坐に上がれば神力を手に入れる筈だ。


『ナイ達は精霊神としての力を使う場合だけ神力を使う事が出来るノ。でもそれはこの先ないと言えるノ。だって神の坐でする事よりも大事なことがあるから』


 自分の補助は神様位の方でないと務まらない程面倒で大変なのだろうか。

 これは納得できてしまった。


 そう言えば精霊って言うのは気ままな所がある。妖精ほどフリーダムじゃないけれど、きっと精霊からすれば変わり者なのは、仕事を全うしている他の精霊神なのだろう。


 神力は自分でも使うようになれるらしいので、神様でなくとも使えるのだろう。一度でも神の坐にあがった神様がその座を降りる時力を持ったままだから『聖霊』と言う別の呼び方をするらしい。


『ヒロ、ここはヒロの【自世界】だからこのステータスは再現した別物なノ』


「そうか」

 もしかしたら精霊さん達が疲れるかもしれないと思いそこで切り上げた。


 ナイが(あからさま)にほっとした様子なのだけれど、疲れたのかもしれない。


「『ステータス確認』はこれからどう変わるの?」


『検索以外にもかくしていた事があるからそれを全部解放する』


『フィルターも選ばなくてもヒロのイメージを読み取る』


『『不明』が出た場合とか、きちんとヒロに伝えるし。逆に聞きたい事があったら聞きに行く』


 聞く限り、とんでもない進歩に思われる。なんかそれだけで腹の下の方がぽっぽとなる位だった。


「『崩力』の関係ってどうなる?」


『ヒロが崩気と名付けたのは、崩力を【自世界】などを満たして循環させて生み出す力で、私達にとって苦手な力なノ。でもそれが解らなくとも、「解らない力がある」と言う事は解るノ。ヒロが『明気』を使って透視する必要もなくなるノ』


 『解析*数値化』も同じ、とナイは言う。


「解った。これからもよろしくね」


 三人の頭を撫でる。



+ + +


 次は『解析*数値化』。

 前に出てきたのは象牙、茶、赤紫。名前はクリーム、ブラウン、アムである。赤紫の子は長すぎて変だと言う理由で縮めた。


『本当はもっと色々な解析が出来るのを隠していました。ごめんなさい』


『ジルエニスが出来ないと言っていたレベル表記も、今までの解析からおおよそを表示できるようにしているのを隠していました』


『一番謝らなくちゃならないのは、三つの神造武装の解析を違う物にしていた事です』


 三つ目に言われた事は気付いていたけれど、もちろん怒るような事ではない。


 ジルエニスが再現できないと言っていたレベル表記をおおよそとは言え可能にしたのだから、自分と話せるようになる前から頑張っていてくれたのは充分に伝わる。


「ここでは再現になってしまうから、後で確認するよ。よろしくな」


 三人の頭を撫でる。


+ + +


 そして『影箱』。


『使い方を隠していました。影箱は荷物を収める『特殊神造能力』です。とても大きな力で作られた能力で、これをうまく使えていたらヒロは『崩気』程度にやられる事もなかった』


『『影箱』は本来の使用方法が分かれば調べる事がたくさん増えると思います』


『ごめんなさい』


 トクシュ神造ノウリョク?


 三人の精霊は緑、橙、黄で、名前はグリーン、オレンジ、イエロである。


 影箱は荷物入れ程度に考えていたのに、驚きの新事実である。


 授かった力を使いこなす事が出来れば、ジルエニスの期待に応えられた気がしている自分にとって、楽しい事になりそうな気がした。


「ふふふ、三人とも頼むな」


 頭を順に撫でながら言う。


 色合いの関係か、影箱を担当する三人ははきはきとしている。


+ + +


 次は装備品である。


 革の衣服(神造)を担当しているのは白、黒、朱の三人だった。シロ、クロ、シュイロと言う名前にした。朱色の英語が判らなかったからだけれど、三人とも和名で揃った。


『革の衣服は特殊能力や現理法との相乗効果を持っている事を隠していました。ごめんなさい』


『本来は服の形を変えるのは最も初歩的な能力なのに…。私達が自分達のために隠していなければ『崩気』の攻撃なんて問題なかったのに……』


『ごめんなさい!』


 聞けば聞く程留まるところを知らない物を授けられているのではないかと思う。


 手詰まりを起こした反動で寝ずに研究とかしないように………、エニスに運んでもらいながらならいけるな。


 三人の頭を撫でながら、ちょっとだけ黒い笑みを浮かべていた。


+ + +


 次は万能ナイフである。

 前に出てきたのは、赤、青。ナイとブルーである。


『『影箱』や『念動力』との併用を意地悪で隠していたノ』


『形状変化の他にも、もっと便利な力を持っているのを隠していました』


 併用?

 念動力で浮かばせる事が出来なかったりしたのが意地悪だったのかもしれない。


 でもブルーが今にも吐血しそうなほど辛そうな表情をしているので突っ込むべきところじゃないと思った。


 正直言えば意地悪された事なんて何とも思ってないし、名前を付けた時のそれに比べれば屁でもない!


『私達十六を持って一柱。ヒロの為にがんばるノ』


 ちょっと待て。

 ナイよ、アニメーションの様な姿なのに、なぜそんなに色っぽい顔が出来るのだ?


 自分がおかしいのか?

 ………そうとしか思えん。


 頭を撫でる時も、ナイの時だけ表情に凄まじい違和感があった。


+ + +


 次にブーツ。


 履き心地の良いブーツで、戦闘の際にもかなり役立っている。


 敵の攻撃を受けるのにも使っているし、走りやすい感じがしてお世話になっている。


 でも名称はただのブーツだし、ちょっとだけ気になる事もあった。


 最後に出て来た、水、群青の二人。名前はライトブルーを略してラブ、グンジョウを思い出すのでウリ(ウルトラマリーンを略すとウマになるので)にした。


 隠していた事の度合いが一番深い、と言う理由で二人は後回しになっていた、らしい。


 二人とも寒色の組み合わせだからか、手を取り合って不安そうにしている。


「怒ってないよ?」


 二人が切り出す前に伝える。


 事実怒ってないけれど、あまり言うのも変になるかも知れないけれども。切り出すタイミングがないみたいなので、促すつもりで言った。


「怒らないよ?」


 これから怒るみたいに勘違いしないように、言葉が丸くなるように気を付けた。


『ブーツは『影箱』と同じように特別な装備品なの。私達はそれを隠していたの』


『使い方も同じで、それをヒロが知っていればもっと上手にできる筈だったのに、ごめんなさい』


「今まで履き心地も良かったし、戦う時がんばってくれてたもんな」


 撫でる。ちょっとだけ他よりも長めである。

 周りの精霊達がちょっとだけつまらなそうにしているのが見えたけれど、後回しにしておく。


『ヒロが『召喚魔法』二つを使えないのは、私達が協力しなくちゃならない事だったのに』


『ごめんなさい、ごめんなさい』


「どういう事か聞いても平気?」


『靴の裏側』


 コタツに入るので脱いでいたブーツを手に取って見る。


 靴の裏側は相変わらず紋様の様な滑り止めである。

 ………何となく解った。


 魔法陣を最近見たからだろう。


「よろしくな」


+ + +


 玄米茶を飲み干した。

 何杯目か忘れてしまったけれど、飲むたびに幸せな気持ちになってしまうからだ。


「さて、戻らないとならないんだけれど」


 ナイが首元から顔を出して、


『ここはヒロの世界だから、ヒロが望めば戻れるノ』


「そうなの? だったらこの殺風景な見た目もいじれるのかな?」


 感触がないけれど、ナイがしているのって結構苦手な事だ。首とかその上とか人に突然触られるのって怖い。


『【自世界】は長命種によってはずっと籠っている人もいるくらいの場所。居心地良くするのは簡単』


 ブルーが次ぐ。


「う~ん」

 瞼を閉じて念じてみる。


 居心地がいい場所、と言って自分が想像するのはやはり、今はもう存在しない和国の家だろう。もうないけれど、いや、ないからこそ寂しい。


 瞼を開くと、居間だった。


 家族の姿はないけれど、正真正銘自分が過ごした居心地のいい場所だ。


 コタツや箸、湯呑みや器は違うけれど、ほっとしている自分を感じた。


『みんなはここにいるノ。でも、いつもヒロの傍にいるし、ヒロの為にがんばるノ』


「これからもよろしく」


 みんなと一度目を合わせて、それから瞼を閉じた。



+ + + + + + +



「ふう」

 主が元の場所へと戻ったのを確認して、ナイは本来の姿に戻った。


 十六の精霊達は五、五、六と別れて本来の姿に戻る。


「坊ちゃん、立派になられましたな」


 彼は長命種、亀の一族の古長、一度は世界を支える神に成り引退した男だった。


 この姿を見せる訳にはいかず、自らを分割して精霊と成りすましていたのだ。


「名前を付けられる事がこんなにも力が増す結果に繋がるとは思っていませなんだ。お二方もそうでしょう?」


 コタツに成りすましていた本体と融合し、現れたのは亀の古長、トグオ。彼は五百年前の英雄に数えられる大亀である。人との交流を趣味として、姿を変えて旅を続けていた。赤い手足と桃色の甲羅を持つ巨体を、人の姿に変じた。


「そうだな。英霊として迎え入れられてここまで力が増幅したのは初めてだ」


 もう一人は人鼠の群れ長、ベツだった。湯呑みと箸に成りすましていた本体と融合して現れた姿はヒロの膝くらいまでの背丈に、粗末な布を身体に巻いているだけの姿である。人鼠の寿命は短い、長くとも二十年で寿命で死んでしまう彼にとって、五百年を過ごすのは非常に長く、辛い道のりだった。


「旦那に会えたのなら、待ってた甲斐があった」


 悪い事しかしない、とまで言われる人鼠にとって、ここに至るまで一族ですら騙す対象に思っていた彼にとって、自分達の神輿の上に立つと思う人物は信頼できる彼だけだ。彼自身、なぜこんなにも彼に心酔しているのかわからないが、胸の奥が満足感で一杯だった。


「ディーケン、あまり表情に出さない様にな。隠していたいと言い出した気持ちは解るが、旦那が訝しんでる様に見えたぞ?」


「ええ」


 籠と器に成りすましていた本体と融合して現れたのはディーケン。魔族の女性だ。


 赤い瞳と青い髪で、吸血族と雪肌族の乗人である。

 外見は田舎娘、と表現したくなるようなどこにでもいるとしか思えない姿だが、ヒロに足を使った剣での戦闘技術を伝えたのは彼女である。


 彼女は両手の肘を包む様に組みながら、熱っぽい表情を浮かべていた。


 胸板が厚く、肩幅もしっかりしている。体型は美女として知られる吸血族や雪肌族に生まれたのが不思議なくらいの、素朴な見た目である。そばかすのある顔、丸めの鼻、細めの瞳や大きな口。でもその女性は美しかった。


 女性を輝かせる理由はたった今体験した出来事の為だ。


 英霊でありながら、三人を持って一柱とする事で精霊神になったのは、この時の為である。


 ディーケンは二人に見せた事もない程艶っぽい表情を浮かべながら、緩みそうな顔を引き締めていた。


 もちろんそれは成功していないからこそ、ベツが指摘した訳だが。


「旦那にばれたくないと言って分割までしたけれどよ。

 これじゃきっとばれるぞその内。なあトグオのオヤジ」


「そうなればそうでいいのではなかろうかの?

 坊ちゃんはきっと笑顔で迎えてくださるよ。坊ちゃんは心根が綺麗で、立派なお方じゃ」


「……私が出て行って、色々話すのが嫌だったノ」


 ディーケンの口は牙がぞろりと並んでいる。それを見せるのを嫌って、言葉は少ない方だ。


「私が勝手したせいで、彼はとても悲しんでいたノ」


 五百年前、魔王に使役されている魔族を止めるために、彼女は単身魔界に戻り。


 そして魔竜リョトニテルに殺された。


 幽霊となって自分の死体を見て絶望しているヒロを見ながら、悔しくて、申し訳ない気持ちで一杯だった。彼女はヒロに見せる顔がないと思っていた。


「ったく。トグオのオヤジ、あんた神だったくせにそんな事言っているからこんな場所にいるんだぞ?」


 死した後、徳の高さから再び神の坐への道が開けていたにもかかわらず、彼は世界を自由に見て回る事を望んで浮遊霊になっていた。そして世界を何百年もかけて見て回る内に、天啓を得たのだ。


 それがこの世界の外側の神からもたらされた物と気づいた彼は、仲間を集める事にした。ヒロの仲間たちはトグオと同じようにこの世界にまだとどまっていると確信して。


「坊ちゃんは優しいお方じゃから、きっともう一度この世界に来てくださると信じておった。

 またお役にたてるなら、老骨も朽ちた儂が馳せ参じる理由に十二分。

 そなたとてそうであろう?」


 ベツは視線を逸らした。

 悪事しかしない連中が、(利益も勿論たんまり得ていたが)五百年前英雄の道を切り開いた。情報、物資に露払い。人鼠が為した事は偉業と呼んでも良い物だったが、それを知る物は今では少ない。


 たった一人の英雄を気に入って、種族総出で手伝っていたなんて話、恥ずかしすぎて隠しているからだ。肉親すら騙して儲けを得ていた男がらしくない事をして、今またそれを繰り返している事を理解している。


「他の世界からわざわざ世界を救いに来てるくせによ、大きな利益よりも他人の命ばっかり気にかけて、大成功ってみんなで喜んでる中一人だけ苦みばしった顔してやがる。

 何が気に食わねえと聞いたら、助けられたとか言って倒した奴らの顔を一つ一つ覚えていく。あんな馬鹿は他にいねえと思っちまったんだよ」


「だから、私達が今度も協力するノ」


 ディーケンは強い色を瞳に込めて言い切る。


 何気ない言い方を気にしつつも、それが失敗するほど強い感情が籠った声で。


 鷹揚にトグオは頷き、ベツは鼻の頭を爪で強めに引っ掻きながら応じた。


 ここはヒロの【自世界】。

 ヒロの為に尽くすと決めた英霊の集まる場所。

 居心地がいいなんて、全部ウソ。でも、集まった英霊たちは彼の為に力となる。



さらなる追加で面倒に思われる方もいらっしゃると思います。

気にしなくていいですこの辺り。


ありがとうございました。


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