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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第二話 過去+復讐
54/99

+聞こえた=



 次に、自分は灰色の世界に何か変わった点がないかを調べる。


 当時は知る事も出来なかった奇襲なので、相手が潜んでいる事もこちらは判らなかったが、敵の様子や、こちらの兵士たちに何か知る物との違いがないかを調べる事にしたのだ。


 スタート地点はもちろん自分のいた場所。


 小隊の面々や、前方、後方の味方達を見ていくが、記憶にある物との違いは見つからない。


 ただでさえ吹雪いていた中を進んだ先に受けた奇襲なのでそこまで詳しく覚えている事はない。覚えている事と言えば仲間の誰がいなくなっただの、装備の質はどんどん落ちていくだの、役に立たない話がたくさん出てくるだけで為になりそうなものは見つからない。


 地図は世球の物になっているし、時計は動いていない。

 何度かステータスを確認しても変化はなかった。


 『聴取(ex)』が完全な灰色になってしまったが元から、会話の通じる相手がいないのではこの能力は役に立たない。




 ……………………そうなのか?




 自分の能力値を見れば、魔力と理力は今も自分にはある。


 試しに自分の望んだ情報を得るための『聴取』を使ってみれば何か解るのかもしれない。


 そうと決めれば、白の表記になるのを待つしかないと決め、自分は腰を下ろした。


 温度も湿度も特に不快に感じる事も、心地良いと感じる程でもなく地面の感触は小隊の仲間たちの様に曖昧で不可思議だった。座ると、草も生えている所なのにケツに敷いた感触もなかった。ただ何もない場所のような感触の上に座り込んだ。


 ステータスを開いたままにし、しばらく待つ事にしよう。



+ + +



「白になったり灰色になったり、何か理由があるんだろうけれど………」


 待ちながら、何時でも使える様に身体の中の理力に注意を向けてみた。


 何度も繰り返して色が変わるので、成功は未だない。


 色が白になって直ぐに現理法を発動させようとしても、灰色に変わった瞬間理力の感覚が(体感だけれど)おかしくなる。


 身体の中を循環する熱い空気、のように感じる理力は今までと変わらず身体の中にあるのを感じる。でも『念動力』で自分の身体を持ち上げてみようとしてみたけれど、理力の流れはあるのに発動しなかった。


 意志の力で現実に影響を及ぼす現理法だけれど、感覚的に言うのならば空回りしている様な感じを受けた。熱い空気が循環する感覚が起きているけれど、それの手応えがない。


 と言うかいつもより早く感じる割に流れる太さが細い、と言うか軽い、と言うべきなのだろうか。くそ、ここに自分を連れてきた奴は何が狙いなんだ?


 エニス、レナリ、ホーグ。心配は必要ないだろうけれど、自分の状況がこんなだからどんな状態になっているのか不安にある。


 ステータス画面を見ながら、『強化魔法』の時に使う視界のフィルターを見てみようとすると、フィルターを掛けるためのウィンドウを見る事が出来なくなっていた。


 『ステータス確認』にも少なからず影響が出ている、と言う事なのだろうか?


 フィルター無しでは自分は『強化魔法』は使えないし(フィルターを掛けた状態じゃないと、簡略化アイコンが表示されないようにしていた。戻ったら修正する!)、『召喚魔法』の二つは元から使い方が解らない。魔法の方は完全に使えない状況のようだった。


 もっと見た目でもわかる様な魔法があれば良かったのだけれど………。


 現理法の『聴取』は相変わらず白表記になったり灰色表記になったりを繰り返しているが、灰色になっている間がどんどん長くなっているようだった。なかなか使えるほど白であり続ける状況にならない。このまま完全に使えなくなってしまうのだろうか?


 この灰色の世界がなんなのか分からないけれど、このままでは自分は永久にここから出られなくなってしまうんじゃないかと不安を感じてしまう。


 まだやるべき事が残っている。


 その為に知らなくてはならない事も多々あるだろう。身体や服装の変化、自分だけが知る物から色を抜いた世界。第一世界とは関係のない何かが自分をここに運んできているのだろうか?


 それとも、ここは死後の世界なんて言う場所なのだろうか?

 管理神ジルエニスにあの爆弾が破裂する直前に救ってもらわなければ、自分はこんな風に魂となってここを永久に彷徨う道しか残っていなかったのか?


 それとも全て記憶の捏造で、今際の際に見た幻だったのだろうか?


 …不安は残るがそれは有り得ない。敢えて断言しておく。そうしないと少しだけ怖かった。


 あんな現実的な夢、未知の世界なんて自分の頭をどう捏ね繰り返したって出て来やしない。第一世界から第五世界全てにおいて、未知が広がっていた。あれが自分の想像なのだとしたら、捏造の世界だと言うのならば自分は努力次第で作家になれてしまう。………いや無理だな。


 設定で変更出来る物はないかと探すも、ウィンドウが開く事が出来なくなってしまった物が多く、白表記の物も時計の表示方法の変更や地図の広域から詳細に変える物だけだった。


 時計は止まっているから無意味だろう。地図を広げていくと世球全域を俯瞰できる様だが、検索やマーキングもない。自分の位置を示す青の光点すらなかった。


 …………行き詰ってしまった。

 いや待て。


 考える事が出来るなら終わりじゃない。その終り方が酷い物でも、少しでもマシな終わり方になるように考えるのを止めてはいけない。


 下手な考え休むに似たり、なんて言葉があるが自分はこの考え方は間違ってはないにしても正しいとは思わない。


 たった今。

 この状況下で。


 考える事を止めてしまうのは逃避だ。


 敵から逃げるならまだいい、その先を見据えた末の逃走なのだから。しかし今は違う、自分が自分に負けてしまうのは許せない。自分は和国で生まれ、家を焼かれ家族を失い、戦争を経験し、神様に救ってもらった。


 日本ならば数奇な運命とでもいうべきだろう。


 しかし自分は一人で、人の人生を体験しているわけでない。

 自分の人生が数奇な物でも、自分が生きていくのにそれがなんだと言うのだ。自分は生きて、普通ではないかもしれない生き方をしている。でも、それを逃げる理由にするのはおかしい。見た事も聞いた事もないから諦めるって言い訳を使う人はいないだろう。


 死んでしまっているかもしれない今、どこかの何者かに連れてこられたかもしれない今、出来る事を探し、ここを脱出するための模索は、一歩でもよい方向へ向かう自分の意志だ。


 下手な考えだろうと、自分は自分の考えしかできない。休むに似たりと言われようが、一人ぼっちの今自分は自分として『生きなきゃならない』。『聴取』は最後に灰色になってから全く変化しなくなった。


 ならば次の手を考えよう。地図は世球全部を表示しているが、全部回れば何かが見つかるかも知れない。


 仲間たちの顔がよぎる。


 和国の家族、小隊の仲間。


 日本の家族、友達、角山さん。


 ジルエニスの第一世界から第五世界のみんな。


 ニリ、ディーケン、バフォル、シュウ、トグオ、エニス、レナリ、ホーグ。


 数えだせばきりがない数の顔がよぎる。

 自分はこの人たちと関わり、この人たちと共に生きていた。


 ここで下手な考えを止めるわけにはいかない理由としては充分だ。


 ジルエニス、自分を救い素晴らしい毎日を体験させて下さる恩神。まだ自分はあの人に何一つ返せていない。


「ここで止まるわけにはいかないんだ。だから、誰でも良い」


 槍を握った手を強く握りしめる。

 力が強くなっているからか、物が悪いのか金属の槍がぎしりと鳴った。


「自分はここで終わるわけにはいかないんだ。


『アイ』


 誰でも良い。手を貸してくれ!」


 どんなに恰好がつかなくても、自分は泥水を啜ろうと死肉を貪ろうと立ち止まるわけにはいかない。


 生まれた国が負けると分かっても、

 恋をした相手が自分を見ていなくとも、

 ここで終わる理由には絶対にならない!



うん?






ありがとうございました。

次話はお昼の予定です。

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