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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第二話 過去+復讐
46/99

+共有化=

ちょっとだけ投稿時間を前倒しいたしました。

・・・と言うのも活動報告にてお知らせいたしましたが元となったと思われるゲームが存在しています。と言う事をお知らせするべきだと思ったからです。

詳細はタイトル『ふと気づいたことについて』にて記しております。

今後続けるかどうかのご意見を求める物でもありますので、元となった物がある事が気になると思われた方は確認をお願いいたします。

気にならない、と言う方は引き続き本編で楽しんで頂ければ幸いです。






ホーグのお話です。

書いている人間の知り合いの中でだけ大好評です。

………嘘をつきました。

+ + + + + + +



「ふはははっははははは!」




 その頃のホーグ。




 疾く主の元へ向かうべく、主の模倣によって神速体現魔法を使っていたホーグ。


 一刻も早く主の元へ参じ、主の憂いを払う結果を持ち帰る事が出来ると上機嫌だったホーグ。


 本来であれば五分もあれば主と合流できる筈だったホーグ。

 彼は現在海の底で巨大な生物に締め上げられていた。


 この世界の海は海流が非常に激しい。生半可な生物では平面の世界であるために、流れに晒され、世界の端から落ちて行ってしまうのである。大陸ですら、神樹を錨のようにいくつも張り巡らせてその場に留まる様にしているのだから、海洋生物にとって海流とは生き残るための手段として用いる物ではなく、どうにかして対処しなくてはならない障害だった。


 魚は泳ぐ力を非常に強くし、中には長い尾を地に突き刺す形で生きる物もいる。


 平面の世界から噴き上がる海水の流れる力の強さに対抗するため、貝類は非常に重い殻を持ち、一部の生物は非常に屈強な進化を遂げていた。


 ホーグはそのうちの一つに全身を絡め捕られているのである。


 地を掴む力を増すためか、日本のそれの何倍にも及ぶ数の足を持つ巨大なイカである。


 その数を数えるのもうんざりするような足には、翼竜が数頭捕えられ、既に溺死していた。


 もう一昼夜、ホーグは海底に引きずり込まれてから経っていると言うのに、ホーグは溺死する様子もなく、美しい表情には非常に深い絶望が刻まれていた。


 何度も手足を引き千切り主の元へ向かうべく奮闘していたホーグであるが、既にかなりの時間が経過している事に彼は絶望していた。


 相手のイカは闘技場都市一つ分はあるだろう巨大さで、一つ一つの足はそこまで太くない。しかしその数と、千切っても千切っても数分で元に戻る再生能力の高さがあった。


 さすがに代償もなくそこまでできるようではないのか、翼竜を捕食しながらホーグを締め上げ続けている。


 太くはない足だが、その力はとんでもない物で、ホーグの骨は何度も折られ、骨が内臓を傷付けている。

 普通の生物であればとっくに絶命してもおかしくないものだったが、ホーグは繰り返し魔法を使って身体の強化と修復を行いながら現状の維持に努めていた。


「ふあはははっはあははははははははっはははははははは!」


 水中であるにも関わらず、その笑い声は良く響き伝わる。ホーグの身体の中にまで響く音だ。それは巨大なイカが上げる笑い声である。


(『魔物』のイカ、でしょうか)


 絶望に囚われたホーグがぼんやりと考える。


 翼竜を捕食し続けながらも止まる事のない笑い声は、どんな場所から響いているのだろうか。


 地を掴むために発達しただろう限りない数の手足で地面を掴みながらも、ホーグに殺到する足はその数を減らす様子はない。


 今も引き千切った手足が見る度に形を変えている。ぼこぼこと化学反応の様な気泡を生み出しながら再生していく手足。イカと呼ぶべき見た目ではあったが、その足には吸盤がない。しかしその代わりなのか、吸盤がある様な位置に指とも呼べそうな樹木の枝のような、更に小さい足が生えていた。


 足全体に見えない吸盤の様な吸い付く力がある様で、ホーグはこの拘束を解くのに一昼夜かけているのである。


 目玉の数は見えるだけでも十数個、それが法則なく様々な個所にある姿は醜悪で直視に堪えない。ホーグは条件次第では神を圧倒する力を持っているが、人の姿を採っているだけあって海中ではその力を満足に振るう事も出来ずにいた。


 ………。


 ホーグは考える。


 今もイカの手足が彼を締め付け、骨は悲鳴を上げている。身体を硬化させて凌いでいるが、このままでは主の元に帰るまでどれ程時間が掛かるのか。


 敵は笑い声こそ上げているが知能は高いとは思えない。魔物は生物として理不尽な、得体の知れない姿を採る物が多いとはいえ、ここまで不自然な物をホーグは知らない。


 何か別の理由があるのでは、と考え。


 今まで焦りで絶望し、半ば放棄していた思考を取り戻す。


 そもそも、神速体現魔法を持って海上を奔っていたホーグを捕えると言うのは、神に並ぶ力が必要な事だろう。


 それに、魔力や理力と言ったこの第一世界に通用する出力の仕方とは違う物があるのではないかと彼は考える。


(もしや、ヒロ様にも………)


 彼の目に力が燈った。


 今までフードを護るために伸ばしていた手指に、苛烈とも言える力が籠った。


(『共有化』)


 ホーグには、ヒロの為になる事をするために彼が得た情報や知識を一部ではあるが呼び込む事が出来る彼独自の特殊能力がある。


 神の思考を覗く以上の度し難き愚かで野蛮な能力ではあるが、ホーグはそれを使う。


 ヒロの現在の状況を知り、彼が今五百年前の因縁と対峙している事を知り、彼は怒りで自らを八つ裂きにしたい衝動に駆られていた。


(ヒロ様が戦われていると言うのに、私はここで何をしている!)


 『崩気』とヒロが命名した『魔物』の使う力、『魔竜リョトニテル』、『魔族ラロース』―――。


 いくつもの情報を得て、ホーグは覚悟を決めた。


「お前は、魔竜の差し金か?」


 声にならない何かは、そう言っているようだった。


「お前の目的が私の邪魔だと言うのならば、もう満足だろう」


 『ヒロの為』と言う一つの言葉があれば、ホーグは全力を出す事が出来る。


 主の為にならぬ従僕になど、塵の価値もないからだ。


 主に裁かれるとき、疾く裁かれるべき力が必要だからこそ(この場合は裁きを受ける時必要以上の力を持っていては主の手間を増やす行為になると、最低限の力しか持っていない状態、『無力』と言う力が必要とホーグは考える。)、彼には限界抑制が働いているのだ。主の剣の一振りで死ぬ事が出来ぬ従僕など、害でしかない、ホーグはそう考えている。


「これ以上時間を掛け主をお待たせする事に、私はもう堪えられない」


 フードをきつく掴んでいた腕を、フードの中、頭との隙間に差し込む。


 腕は左、差し込まれたのは右側頭部。

 そこから覗く双眸には、狂気とも呼ぶ事が出来ない程の狂おしさが灯っていた。


「我が主に仇為す汚塵が」


 差し込んだ手で側頭部を掴む。


「我が主の道を汚す塵が、その身が犯した罪を知れ」


 ホーグはその力を解き放った。



ありがとうございました。


共有化の影響でホーグは最大に相手を侮辱する場合に

『汚塵』と言う言葉を使うようになります。


次の投稿は本日の十二時です。

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