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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第二話 過去+復讐
42/99

+『ひずみ』=

解りづらい説明が含まれていると思います。


全ての言葉を記しているわけではありませんが、

用語集を設けました。(話の先頭に置いています)

単語や設定が多いこのお話で多少なりとも皆様が読みやすくなれば

幸いです。

+ + + + + + +



「………と言う訳で、魔族と魔物って言うのは全くの別物なんだ」


 ラロースを追っ払った後。

 元の辺りに辿り着いた頃にレナリは目覚めた。エニスに乗せた台を影箱につめて(その時それを嫌がるエニスとちょっとした諍いがあったけれど円満に解決した)徒歩移動を始めた。

 徒歩移動とはエニスの徒歩移動の事を指す。


 エニスに乗せた鐙は一人用だったのだけれど、エニスは鐙の形を変える事が出来るようになったらしい。これは自分が万能ナイフや革の衣服の形を変える所から考えて出来るようになったらしいのだけれど、ジルエニスが作った万能ナイフや革の衣服を変えるのはそれに備わった機能の一つなのに、万能ナイフが生み出した鐙の形を変えるのはちょっと事情が違う気がする。


 まあ獣神エニス様ならばそれ位朝飯前なのだろう。


 さすがエニス様、といつか言った言葉を再びエニスに贈ったら酷く嫌がられた。


 まあ、台を外す代わりにエニスに乗って移動すると言う提案を受けた際の別の問題だったのだけれど、エニスは少ししゅんとした様子で、それでも相変わらず安心安全な様子で進む。


 その間、することが無いのでエニスに乗ったまま、後ろに座るレナリにこの第一世界のレクチャーをすることにしたのだ。


 レクチャーしたのはこの世界で生きていくのに必要になりそうな知識とかだったのだけれど、レナリの質問に答えていくうちに魔族や魔物、五百年前にいた魔王の話に変わっていった。



 魔法とは『魔族が見つけた法則』であり、



 魔界とは『魔族と呼ばれる人たちが住む世界』であるのだけれど、『魔物』とは一切関係がない。魔族がそう呼ばれるようになったのは検索を掛けても解らないが『魔力に長けた一族』や『魔法に長けた一族』と言うのが変じたと聞いた事がある。

 そうなると魔族が見つけた法則である『魔法』とどっちが先か分からない。


 卵が先かひよこが先か、と言う問題になってしまうが、これはこう言う物なのだと分かってもらうしかない。自分も調べても解らないし。



 魔物はこれも確証が薄いのだけれど、『魔界でよく見られた変異種の動物』が最初なのではないかと思われる。



 この世界では(五百年前の記憶では、と言った方が良いかもしれないが)、魔族と人族は普通に接していたし、交友もあった。自分だって魔族の仲間もいた。戦争になった後もこちら側についてくれていた仲間だったし、自分がこの世界で初めて剣の使い方を習ったのも魔族だった。


 彼等は生態として人族とは違う『変身能力』や特徴を持っているけれど、それ以外全く普通の人達である。


 それに比べて魔物って言うのは文字通り、イメージのしやすい、非常に面倒極まる、いや~な奴等の事だ。


 『魔物化』と言うのは第一世界では魔界に起こりやすい現象である。


 原因は『魔王』が生まれる下地、と言うべきか『ひずみ』と魔族が呼ぶ変化が人や獣に起こるのだ。最も『魔物化』しやすいのは植物や虫、次に動物、人、竜(龍)と続く。


 妖精や精霊、神はそういった変化には生まれついて強い耐性があるので滅多な事では影響を受けないが、一部の精霊や神は人や動物と密接な関係を持つために影響を遠回しに受けてしまう事がある。


「つまり、『魔王』と呼ばれていたのは魔族の王様、と言う意味ではなく『魔物化』した者たちの王様と言う訳ですか?」


「そう言う事。魔王は『魔物化』した奴等を掌握して、魔族を征服したんだ。

 魔族は王様と呼ばれるような存在がないんだ。

 国を作っていないから」


 彼女が持つ『記憶の残滓』の元、ニリと言う有翼人の王女もこの辺りよく解っていない節があった。だから勘違いで大量虐殺とか始める前にきちんと説明しておかなくてはならない。


 復讐の(とりこ)と化した有翼人の王女様ときたら言葉が通じないんですもの………。


「五百年前も、その辺りが上手く伝わってなくて、知るのがなかなか遅くなって大変だったんだ。

 人側は一番偉い奴をどうにかすれば戦争が終わると思っていたんだけれど、その一番偉い奴がどんな種族で、どんな特徴があるのかって…………。

 魔族の王様を探そうと躍起になっていたんだよ。その勘違いを魔王は巧く突いて戦争は長引くし、一部の精霊や神様まで『魔物化』の影響が出始めて世界がバランスを崩す所だった」


 口にはしないが、『ひずみ』が魔界で起こりやすいのは一つ明確な原因がある。


 それは太陽と月の神様のきまぐれである。


 太陽と月の神様は魔界にも朝と夜を作る係なのだが、その二柱は宴会好きで一日で二か所で仕事をするのをついつい忘れてしまうのだ。一か所だって忘れてしまう事があって、星の神様や朝の神様、昼の神様、夜の神様が必死に権限がないにも拘らず頑張っていてくださるおかげでこっち側は何とかなっているけれど、魔界はそれに比べて天気の変動がよくおかしくなる。


 以前魔族の知り合いに聞いたところ、一か月太陽が出たままだったり、十年夜が続いたりするらしい。それも何の前触れもなく始まってしまうので魔族は自分の中にみんな時計や方位磁石を持っているらしい(正確な腹時計と方向感覚とも言う)。


 その神様の怠惰が淀み、停滞となって魔界を満たすと『ひずみ』が生まれやすくなるらしい。


 あの時は反省されていたようなので今では大丈夫、………なはずだと思いたい。


 太陽と月の神様は日本人でもなければ簡単に過労死するような大変な仕事をされているのもあって、ここはあまり言及したくない。


「それでは五百年前にいた『魔王』とはどんな姿をされていたのでしょうか?」


「…………人の姿だったよ」


 思わず頭の中を色々な光景がよぎってしまった。


 自分の中では十数年前、この第一世界では五百年前の事である。ちょっとだけ懐古しても良いだろう。と言い訳しておく。

 ラロースと言う魔族を見たせいだろう。


 アホみたいに大きな武器、見慣れた方向性の鎧。きっとあれが良くなかったのだ。


「『ひずみ』を魔界から救うために一人で肩代わりして『魔物化』した、普通の人だったよ」



―――――――後少し、待ってくれないか?



 思い出してしまった。

 鼻の奥がつんとする記憶である。


 背中のレナリは昨日と打って変わってひんやりとした温度である。

 少しだけ集中して周囲の景色やエニスの動き、レナリの温度を感じる事でそれを外に追いやる。


 神様ジルエニスに便利な武器と防具を授けてもらっておきながら、自分は一度だって上手く事を運ぶ事が出来なかった。そんな五百年前の経験も、今はきっと成長に繋がっていると思いたい。


 マップを確認し、一番近い村までまだまだかかる事を知る。エニスの脚でも二日か三日はかかるかもしれない。


 異世界人のいる場所が、偶然にも自分が一度目の旅で通った道と同じになっているのはどんな神様の配慮なのだろうか。少しだけ記憶が呼び起こされやすくなっていると感じる。


「ふう」


「どうかされましたか?」


「なんでもない、気にしないで大丈夫だ」


 嫌な事を思い出してしまっただけだ。

 エニスがこちらを窺っている。レナリが少しだけ遠慮がちに身を寄せてきている。


 今回は大丈夫。


 根拠のない言葉を念じ、自分はエニスを促した。



+ + + + + + +



 今日もエニスは絶好調だ。

 レナリとの訓練は二連撃縛りのままだったけれど、レナリの成長に合わせて厳しさを増していた。

 『黒塵の兵士』セットもエニスの攻撃に耐えきれないだろうに壊れていないのはエニスの気遣いなのだろう。


 再び気絶するように倒れたレナリの世話をした後、エニスはお腹が空いたようなので肉を焼く。

 訓練の間、自分は気分転換のつもりで釣り糸を垂らしていたのだけれど、結局掛からなかった。


 この前もそうだったしこの辺りは魚がいないのかもしれない、と考えて検索すると、川にはビックリするほど生き物がいなかった。


 ………何か原因があるのやもと調べると、これも『不明』だった。


 調べ物はエニスの早めの夜食の間一旦置いておこう。


「鶏肉か………」

 影箱には牛蒡も残っている。

 醤油と砂糖もある。

 しかし自分の実力では決して手を出してはいけない場所だってわかる。


 それをどうにかするには、どれだけ神様に便利な能力を貰った今でも出来ない事があるのだ。


「鶏牛蒡………」


おん!


「ああごめんよ」

 鶏肉を焼きながら、せめてもの抵抗として大根(と表示された緑色の根菜)を摩り下ろして焼き上がった鶏肉に乗せるつもりである。醤油とこれで素晴らしい物になる筈だった。


 自分の料理の腕では大したものは作れないので、こう言った時料理の腕に自信があったり上手な人たちがいてくれると助かる。


 長耳長命族の『神弓』やホーグ、この世界であれほど美味い物を作る人たちなのだから和国でも日本でも料理人として有名になれただろう。


 ………寂しくなってきた。


 エニスは自分の作った『焼いた鶏肉大根おろし添え醤油味』を美味そうに食ってくれているけれど、ホーグの作る一流を飛び越えた料理神の腕を知った今、物足りなさを感じているかもしれない。


 検索して料理法や仕込み方などを調べる事が出来る事は出来るのだけれど、それを自分の腕で再現できるかどうかと言われたら無理だろう。


 この世界を五百年前旅していた時、一人でいる事もあった。初めての師匠と別れてからしばらくは一人旅だったのだけれど

、その時料理は何度も挑戦しているのだけれどこれがもう、………涙が出るほど美味くならない。

 現代日本で過ごしていた頃の母は料理上手だったが父が作るカレーが大好きだった。自分で作った物は味気なく、人の料理を美味しく感じていたらしい。それを考えると、どれだけ料理を練習しても自分は満足する事はないのかもしれない。


 どんなにやっても上手くならない言い訳かも知れないけれど。



魔物と魔族は別物とご理解いただければこの先問題ありません。


世界にもこういった似た言葉だけれど別の意味を持つ物、と言うのが存在していて、翻訳しづらい物や分けづらい物を話の中で取り扱ってみたいと

実力も考えずに挑戦してみました。


話の中では言語はみんな日本語を使っているようにしていますが、

魔族は魔族の言葉を使っています。

レナリなどが使っている言語とはまた別の物なのでこういった

言葉の指し示し方の違いが生まれています。


本日もお読みいただきありがとうございました。

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