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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第一話 英雄+再臨
4/99

ステータス+エニス

手直しをしました。

宜しくお願いいたします。

 ステータスウィンドウの項目は眺めたり念じたりしている内に表示方法の変更など、新しい項目が生まれたりするようで、考え方次第で色々できるらしい事が解った。


 能力値の後にアルファベット表記があるので、実際の数値の他に段階表示がある様である。


 こうやって見ると自分は実際と違ってかなりの数値を持っているようだった。

 装備品が数値に影響するかどうかも確認したところ、能力値には反映されていない様である。影の中に万能ナイフをしまっても表記に変化は現れなかった。


 しかし、剣や槍での戦い方なら覚えがあるけれど、ナイフで戦うとなった場合その辺りどうなのだろうか?


「うわ!」


 思った瞬間、影から出した万能ナイフが大振りなナイフから使い慣れたロングソードの形に変わっていた。

 鞘や柄にそれまではなかった新たな装飾が生まれた事から単純に大きくなったのではなく変化したのだと思われる。


 驚いた。しかもその外観はシルエットとしては良く目にしたものであるが、飾り彫などの装飾は芸術品としても通用するような物である。


 でもこの大きさだとエニスの上で戦うとしたら取り回しづらい、と考えたら馬上剣に適したショートソードとロングソードの中間くらいの長さになる。


 厳流、と思うとそれに合わせた長さになった。長すぎて扱い辛そうに思うと、ロングソードのサイズに戻った。


 斉天大聖、と考えたら見る間にその武器として知られている如意棒に変わる。しかしやはり装飾などは相変わらずギリシャ風と言うか、色合いや装飾の系統はそのままだった。


 確かに万能ナイフ(・・・・・)らしい、ただその名称から想像する方向とはだいぶ違うようだけれど。考えてみればなんにでも気楽に使っても構わない様なナイフと言う意味で万能ナイフと言ったけれど、そんな言葉はもしかしたらないのかもしれない。


 和国には万能ハサミとかあったのでその感覚で言ったのだけれど………。多分、ジルエニスはどんな目的にでも使う事ができる、と言う自分の考えている事よりも上過ぎる意味で『万能ナイフ』を作ってくれたのだろう。


 草を払うためにも、狩りをして手に入れた動物の解体にも、使うのがもったいないような立派な芸術品だった。


 そしてきっとこのナイフ、見た目とは全く似つかわしくない切れ味があるんだろう。

 初めて第一世界に来た時に使っていた神剣ロングソードは、巨大な岩だろうとドワーフが作った武器だろうと手応えすら感じない程すっぱりと斬った事もあった。ジルエニスが作ったこの万能ナイフが、普通のナイフ並、と考えるのは難しいと思った。



 こうやっている間も、万能ナイフが変じて自分が声を上げた時も、エニスは自分の言葉通り、ゆっくりと鬱蒼と茂る草叢を行く。二つの意味で気を使ってくれているのか、馬よりも乗り心地が良い。


 この世界で馬に乗れるようになったけれど、自転車とは違う生き物との連携という感覚は慣れるまでずいぶんかかった物である。


 身体の大きな動物が歩く時はのしのしとした言葉が合いそうなイメージを持っていたけれど、エニスの動きは滑らかでいて力強い。


 背骨の感触が少し痛いが、上下の動きも小さく速度も一定を保っているので乗っている自分はかなり負担が少ないはずだ。



 森の中は以前と同じように足元すら見えない状態だった。記憶の中にある状態よりも草の高さや生い茂る密度はより凄くなっている気もするけれど。


 たまに顔にかかるような草を払いながら進む。(万能ナイフはこのためにももらった物だけれど、芸術品のような見た目なので気軽に使う気が起きなかった。その為手で払っている)


 以前も完全に草にすっぽり隠れてしまったのを思い出す。目線がエニスに跨っているので高いのもあるけれど、それがたまに払う程度で進めるのはかなり楽だし、足元もよく判らないで足を取られたこともあった中エニスの歩みは常に一定で、地面から持ち上がっている木の根を越えたりしても変わらない。


 移動手段としてのエニスはとても優秀である。


「こんな中で少し急いだりできる?」


 おん!


 自分を落とさないように気を付けながらでも、道を駆ける馬以上の速度で進めるようである。少し怖い。


「もういいよ、楽な速さでお願い」


 背中をポンポンとすると、最初よりかなり速いくらいで進むようになった。自分が慣れるまで大変なようである。


 さて次に試さなくてはならないのは、―――


「照明魔法」


 指先を立てて言葉にする。

 しかし光は生まれなかった。


 以前は気軽に魔法が使えたのだけれど、多分剣か蒼の鎧にその力があったのを自分の力の様に使っていたのだろう。ステータスを開いて確認すると、魔法の欄ができていた。


 確認すると、以前使っていた魔法が並んでいたけれど、その全ての文字が灰色になっていた。

 結構な数並んでおり、パソコンと同じようにスクロールできた。総数は二百十三(一番下に表記されていた)。その中でも使った事のある魔法は二十に届くかどうかである。


 スクロールしていくと、三つだけ文字が白のままの魔法があった。


 強化魔法(2)

 召喚魔法(2)

 召喚魔法(EX)


 最後までスクロールして白文字なのはこれだけである。

 『解析*数値化』や『ステータス確認』、『影箱』は魔法とは違うらしい。カッコ内の数字や文字は強さだろうか、それとも熟練度に値する物だろうか。確認してみようとするとジャングルを抜けてしまった。


 効果や威力が解らない物を使うのは怖い。目の良い狩人や猟人が魔法を使っている所を見る事もあるかも知れないので、保留にする。


 しかし一か月は放浪した辺りだったけれど、エニスにしたら四半時ほどの距離でしかないらしい。


 方向感覚はこの世界に来てから養われたし、当時の自分はキンキラした格好でこの辺りを徘徊する不審人物だったんだろうなあ(長いこと誰にも会わなかったけれど)。


 ステータスの魔法の文字の隣に、現理法、特殊能力と言った物が増えていたので確認。特殊能力の中に、ジルエニスからもらった三つの能力があった。


 そう言えば何かを消費する物なのだろうか? 以前の時は魔法を使っても消費した感じは受けなかったけれど、それも鎧や剣の力だったのかもしれない。


 ステータスを連続で開いたり閉じたりしているが疲労感は全くない。魔力値を確認しても数値は変動していないのを見ると、好きに使える能力なのかもしれない。


 そして次に気になる理力と言う数値と現理法と言う能力。


 理力は自分の中で最も高いステータスだ。文字からして現理法とはこれによる技術なのだろう。開くと、一目瞭然だった。


 念動力(EX)

 聴取(ex)


 ? EXに小文字表記まで出てきた。


 透視(1)

 催眠(2)


 表記されているのはこの四つ。

 催眠は灰色表記だった。数字が使われているうえでEXと言う表記からして、能力値と魔法や現理法のカッコ内は別物だと思う。表記方法を変更してもカッコ内に変化はないのできっとそうだろう。


 となると能力値は段階表記、魔法と現理法は熟練度や強度と言ったところだろう。ジルエニスは楽をしたいと考えた自分の思惑を透けて見たかのようなラインナップのような気がする。


 でも催眠は酷い。灰色表記なのでレベル2と言うのは、願望は強いけれど使いたくないと言う意思の表れなのだろうか、恥ずかしい。


 ………灰色の文字の物と白の表示の違いがはっきりしていないのだから思い込むのは良くないか。………にしても恥ずかしい。


+ + + + + + +


 森を抜けて草原に出た。初めてここに来た時幸せを噛み締めた後恐怖を刻んだ思い出深い場所である。


 そう思うとあの時かこの恐怖の権化が、のそりと地下から顔を出した。巣を作っていると言うのはその見た目からして違うような気がしたが、自分の世界とは違うそういう進化をしたものだと思うようにする。


 エニスの半分ほどの、つまり三メートルほどの全長の蜘蛛である。でかい、きもい、複眼が怖いし口元がわきわきしている。


 エニスは怯えるどころかまったく興味がないようにしている。もしかして、馬以上のスピードと以前の仲間並の強さを持っていたり…………。するわけないか。


ぱん!


「え?」


 ひゅん、と風を切る音がすぐ近くで聞こえた。

 見るとエニスの長大な尻尾がひゅんひゅん音を立てて振られていた。カウボーイの投げ縄の様である。


 音の先を見ると今現れた蜘蛛がいない。

 エニスの視線を追うように見上げると、蜘蛛がいた。どうやら尻尾で打ち上げられたらしい。

 以前のフル装備の自分かそれ以上にエニスは強いのだろうか?


 試しに解析してみると……………。



       ◇◇◇◇◇◇◇

エニス 獣神 



 ………………。

 種族にあたる部分を見ただけで見る必要がないと判断した。神獣ではなく、獣神である。後光が差すような姿の通り、エニスは神様だったようだ。


 何だかそんな神様の背中に乗っているのが非常に申し訳ない気がしたので降りようとしたら、


おん!


 気にしないでくれ、と言われた気がしてしまった。そんなわけにはいかないと降りようとするとエニスはしゅんと耳を垂れる。悲しそうだった。


 降りるわけにはいかない気がしてしまった。




+ + + + + + +


 地平線がない世界の光景を久しぶりに体感していた。球状ではない世界でもそう見えるのは変で、何か理由があるのかもしれないけれど知らない。見える限り遠方では雪が降っているのが見える。

 ジルエニスの第一世界は中世の想像の様に、平面の台地を下から順に亀の神様、力の神様、象の神様が支えている。面積だけなら地球と変わらないだろう。大陸は三つ、小さな島は無数にありそれを囲う様に海がある。


「エニス………様?」


 …おん!


 様をつけるとすごい嫌がった。

 ぞわぞわするらしく毛並みが逆立つようになる。

 エニスは家族、と言った自分の言葉を喜んでくれている様で、気楽に対応された方が好みらしい。最初に撫でたりポンポンしたりした手前、引くに引けなくなってしまっていた。


 神様に名前付けるって、どんだけ調子に乗っているのだろうか。


 最初に解析を心掛けなきゃダメだなうん。


 最寄りの村や国まで、森を出でから確か半月は歩き続けた気がするので早めに準備をするようにしよう。


「エニス、確かあっちに湖があったから行ってくれないか?」


 原代では野生児みたいな生き方をしていたので、野宿に抵抗はないし釣りや狩猟だってやれるのが自慢である。もちろん解体も出来る。ただ料理の才能はないので基本焼く位しかできない。


「そう言えばあの娘は料理上手だったなあ」


 おん!


「うん、そうそうあっち。エニスなら夜になる前に着くと思う」


 そう言えばエニスは食べ物とかどうするんだろう?

 聞いてみると、なぜか一鳴きで言いたいことが伝わった気がした。


 必要ないけど食べたいらしい、なんでも食べれると思う。と言う話である。

 鼻でその辺りは解るらしい。猫にイカ、犬にタマネギみたいなのに気を遣わず済むならありがたい。


「そう言えばあの娘、まだ生きてるはずだ」


 あまりの弓の技巧のため『神弓』と言う称号で呼ばれていた長耳長命族、エルフの中でも風変わりな少女は五百年でどんな姿に成長しているのだろうか、なんて思った。


 『神弓』なんて凄い称号で呼ばれていたのに、小柄でみんなの後をついてくる可愛い女の子といった印象しかない。今も元気ならいいけれど。


 思い返してみると七人パーティの自分達の中で、普通の奴なんて一人もいなかった。七人パーティとか言いながらほとんど一緒に行動しない人もいたくらいだ。種族はバラバラ、目的もそれぞれで、個性的な連中ばかりだった。あの娘は物静かでよく付いてくる気になったものだと思う。


 神業の弓の技巧、幼い見た目に反して深い知識、何でもできる天才でそう言うと嬉しそうにしていた。五感が鋭いのに、一度床に就くと絶対に目覚めないからよく悪戯されていたっけ。勿論変な意味じゃない。


 仲間たちは誰も彼も妹や娘みたいな感情をあの娘に持っていたんだろう。今までの人生でいつも一人っ子だったからその辺り憧れていた。なので自分も自分なりに可愛がっていた記憶がある。


おん!


 湖を囲う様に茂る森が見えた。見えるまでが凄く早い。

 記憶よりも大分深くなった森は中心に天に刺さる槍のような巨大な樹がそびえ立っていた。


「随分様変わりしたなあ」


 試しにその巨大な樹木を解析してみる。

 神樹、と表記されていた。


ありがとうございました。

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