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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第一話 英雄+再臨
3/99

ジルエニスの第一世界+家族

手直しをしました。

読みやすくなっていればいいのですが。

「では、計画を説明しましょう。異世界人はそれぞれが世界に散らばっています。中には何もせずにいる者もいるようですが、かなり奔放にふるまっている人もいます。

 そしてその全てに、普通ではない力や武器が授けられているのです。

 私の世界のバランスを崩すには充分、私が気付くまで極力時間がかかるように調整された物ばかりですので、私が貴方を全力でサポートすれば、どうにかできるはずです。

 前回同様、貴方の装備を呼び出しますか?」


 そこで彼は口を挟む。


「第一世界には、記録が残っているのではないですか? 以前に救った記録が」


「はい」


「そのままの恰好で第一世界に行けば目立ってしまったりすると思うんです。ですから前回とは違う方が良いと思うのですが」


 と言うのは半分本心ではない。何故なら、第一世界は彼の記憶のままだとしたら中学生の時の彼の記憶のテレビゲームのRPGのような剣と魔法の世界が広がっているのだ。


 五百年経ったと言っても、知り合いがまだまだ現役で生きているはずなのである。


 第一世界には長命種と言う千年単位の寿命を持つ種族が七つほど思い出せるだけいる。その中に、彼が魔王を討滅した時に共に旅をしていた知り合いの長命種が二人いるのだ。


 戦乱の時代が終わっているとしたら、彼らに会う確率はゼロではない。


 命のやり取りがある世界の争いの真っただ中で平然と生きていたような連中である。平和になっているのなら尚更死んだなんてことはないだろうし、死んだところを想像しても出来ない。


 当時の仲間ならば会ってみたいとも思うが、中には仲間だった二人とは別に知り合い、と呼ぶより『敵』と呼ぶべき長命種もいる。


 それでは多くの時間が掛かってしまうだろう。


「敢えてその姿を人々に見せるつもりだったのですが」


「魔王を討滅した伝説なんて、子供がごっこ遊びに使う位でいいと思います。それに、異世界人がどんな様子でどんな説明を受けているかもわからないのに、迂闊に出て行ったら囲まれる、なんて事になって欲しくないので」


「なるほど」


 そう言ってジルエニスが後ろに視線を送ると、いつの間にか当時の装備が飾られていた。


 たった今出現したのだろう。輝く蒼(かみ)の鎧と、金と銀、宝珠で作られた神剣(ロングソード)


「では一応、何かあった時のために呼び出せるようにはしておきます。この装備は文字通り神の祝福によって作られた神威武装ですので、貴方の安全と戦闘能力においてこれ以上の物はそう作れませんので」


「はい、ありがとうございます」


「では、どう言った準備をされますか?」


「それは考えがあるのですが………」


 報酬(日本)の記憶を引っ張り出し、少しだけ悪乗りして説明を始めた。


 半分くらい通ればいいだろうと言う願いは全てが通ってしまったのである。


「初めに世界に降りた時、道具類がなくて困ったんです。ですから草を払ったり枝を切ったりするためや、簡単な護身用にも使えるような万能ナイフが欲しいです」



「『万能ナイフ』ですね、準備します」



「あと、初めの頃一人っきりでかなり寂しい思いもしました。だから人でなくていいんです、旅の仲間が欲しいのです」


「確かにその通りかもしれません。一人っきりと言うのが寂しいと言うのならば旅をするのに役立つような仲間も準備します」


「我儘言ってすいません。

 お金とかは自分で狩りをしたりして集めることはできるのですが、荷物の運搬を考えると一度に集められるお金も限られたり、旅の支度の段階で足踏みしてしまう状況があったので荷物などを仕舞える魔法のような物があるとありがたいんです」


「それはあの世界で言う魔法のカバンだったり、収納するために造りだす亜空間だったりのようなものですか?」


「はい、そうです」


「任せてください。他にも何か欲しい技能や道具などありましたらいくらでも準備致しますから、気兼ねなく、遠慮なく全部仰ってくださいね」


「はい、えっと今まで生活していた『日本』ではテレビゲームと言う物がありまして………」


「なるほど、未知の植物や………、日本と言う所は面白い娯楽を考えるのですね。…………。

 分かりました。………こういう形でしょ………」




 ………悪乗りは終わらない。

 まるでテレビゲームの様に万全の体制が整うまで、あと十分。

+ + + + + + +



「では第一世界を頼みます、英雄さん」


「行ってきます」


 ゲームのエフェクトのように、彼の全身を包む光が生まれる。


 雰囲気づくりの舞台装置の割に、いやにクオリティの高い物だった。




+ + + + + + +

ジルエニスの第一世界




 記憶に深く刻まれた、この世界の初めての光景。

 自分はかなり様変わりしているにも関わらずその光景に懐かしさで涙が浮かびそうだった。


 人が立ち寄る事のない僻地にある森の奥まった場所に存在する神殿は人間の手が入っていないのに綺麗に整っていた。


 ジルエニスの坐す場所と同じ、塵一つ、埃一つない神殿は、彼の感覚が反映されているのかギリシャ神話に出てくる神殿の様にも感じる(ジルエニスが建てたわけではないだろうけれど)。

 土台に等間隔で建てられた柱、その上に屋根を乗せただけの神殿は、感覚的に言うと儀式をするための場所である。


 柱が等間隔で並んでいるだけで、風は入るだろうに空気の流れはなく、快晴だと言うのに涼しいくらいだった。


 人以外の手で調えられた空間(ジルエニスがやったとは思えないので、どなたか神様が調えているのかも)。この神殿に降りてきたのは二回目だけれど、この場所は三回目である。


 それでもまだ違和感を覚えた。とは言っても、快適な場所なので文句などない。


「ステータス確認」


 早速ジルエニスに授けられた能力を試してみた。言葉にすると視界にテレビゲームと同じように各種ウィンドウが開かれる。


 右上にはこの世界の時刻や日付、その下には地図。そして数値化された自分のステータスが表示されている。


 初めて来た時は説明だけでは足りなかったために、ここから人のいる場所に行くまで数か月歩き回った記憶から時計や日付、地図をゲーム感覚で確認できるようにしてもらっていた。


 自分の能力は数値化がされているけれど、レベルという考え方は再現できないと言われた通り、レベルという項目はない。


 基準がないので解らないけれど、全ての数値が三桁になっているからかなりの実力なのではないかと思う。


 これに合わせて『解析*数値化』と言う能力ももらえたので、この先出会うだろう人を見て自分のステータスとの違いを確認していこう。


 以前第一世界にやって来た時と同じ状態、と言っていたので準備すれば魔王すら倒せる数値の筈である。勿論一人で倒したわけではないので準備の中には仲間も含むけれど。


 準備した物、この先手に入れるだろう荷物は影の中にしまえるので邪魔にならない。『影箱』と言う能力をもらったのだ。魔法のカバンみたいなものだと無くした時、奪われた時に危ないからと言う理由でこうなった。


 日本でテレビゲームのRPGをやっていた時、実際だったらどれだけ楽かと常々今の記憶がないのに思っていたのである。


 ジルエニスの第一世界を旅している時、食料や備品を馬車に乗せて運べるようになるまで毎日重くて邪魔で仕方がなかった。


 次に装備、これは装飾が芸術品レベルだった蒼の鎧やロングソードのおかげでやたら目立った記憶から、どこからどう見ても旅人としか思えないような普通の恰好にしてもらった。(とは言ってもジルエニスの趣味らしく目立つだろうことは想像に難くない)


 もちろんジルエニスがそれだけなわけがなく、白と黒の革服はゴワゴワしているし、ボタンを留める形などやたらヒーローっぽいけれど、蒼の鎧程ではないにしても(見た目はともかく)異常な強度を持つ革服である。


 ブーツは見た目普通に見えるが、履き心地の良い物である。ただ靴裏を見ると奇妙な紋様に見える滑り止めの加工がされていた。

 これは理由があるのだろうか?

 追々調べて行こうと思う。


 そして腰には大振りながら軽量の、指先から肘までほどの刃の長さのナイフ。

 装飾はいらないと念を押したけれど、柄や鞘は大丈夫だったが、白く輝く刀身には芸術品のような意匠が施されていた。よく見ると柄尻に小さな宝石が埋まっている。


 あまり目立つ恰好だと面倒が多いので念を押したのだけれど、神様は神様で譲れないラインがあるのだろう。納得して腰に戻す。


 軽く屈伸したりして身体の感覚を確認すると、頭の調子はまだおかしいけれど気になるほどではない。夜営で一晩明かしたくらいの頭痛よりも軽い症状だった。頭痛に比べて身体は軽く、クッション性の高いブーツも問題はない。万全と言っても良いだろう。


 そして今回何より望んだのは、『相棒』である。

 初めて第一世界に来た時、最初に人を見るまで心が疲れ切ってしまった経験がある。この世界は人よりも大きな獣や魔獣、モンスターなんてざらにいるので下手に夜眠ると二度と目覚めることができないのではないかと不安に思った物である。


 だから一緒にいてくれる相棒がいれば、不安も紛れるし自分では気付かない事も察知してくれれば助かる。


 開いたままだったステータス画面のそれを表す文字を見て念じると(『家族』と書かれている)、ジルエニスの坐す場所の扉と同じように機械音が響き、表示されていたステータス画面が閉じた。



おん!



 報酬にほんの自分は、物心ついた時から雑種の犬と一緒だった。利口で頼りになる、自分の言葉を全て理解しているんじゃないかと思うような大型犬だった。十二年の一生だったけれど、あんな家族がずっといたら嬉しいと話したら………。



 思ってたのと少し、いや大分違った。



 その姿は後光が差す様な蒼銀の毛並みで、塵一つ、埃一つ被っていない様である。


 力強い四肢はライオンを彷彿とさせた。四肢は太く逞しいのに、身体のラインは風に乗るようにすっきりとしていた。狼のように鋭い顔立ち、ふさふさで長すぎる尻尾。


 思わず跪きたくなるような神威を感じる。そして何よりそのサイズ。


 全長六メートル、体高二メートルはありそうな気難しそうな狼だった。

 確かに大きいと言ったが、ここまでとは…。


 気難しそうな、言うなれば孤高を好むような立ち姿にも関わらず、子犬のような人懐っこさですり寄ってくる。


 思わず撫でると、上等な感触に驚いてしまう。

 これだけで自分はこいつを気に入ってしまった。犬も猫も好きだけれど、こんな大きな狼も捨てたもんじゃない、はず。


 こいつには、記憶にあった家族と同じ名前を付けようと最初思っていたのだけれど、こうやって考えるとそれはあの家族にも、こいつにも悪い気がしたので名前を考えてやる事にした。


「………」


 利口な奴だったと話しているから、今こいつの姿を見るとジルエニスは人以上に賢い存在としてこいつを生み出しているんじゃないかと思う。


 視線を合わせると、とても深い瞳に吸い込まれそうになる。それはこの相棒が自分を見ながら何かを感じ、考えている証だろう。


 それだけで神様に感謝したくなった。

 ジルエニスの趣味だろう、美しく気高そうな姿から、神様の名前の一部をこいつに与えてやろう。


「今日からお前の事をエニスと呼ぶ。気に入らないか?」


 返事としてエニスは鼻先を頬の辺りに摺り寄せてきた。気に入ってくれたのだと思う事にしよう。


 前回の魔王を討滅する旅で不便に思った事や辛かった事を打開するために、言ってみれば楽をするためだけにいろいろ注文してしまったのだけれど、こいつは正解だったようである。


 神殿を出ると、青い空は抜ける様な晴天だ。(平面の世界なので見通しの良い場所だと雨が降っていたり風が強く吹いている様が遠方に見えたりするので)遠くの雲の動き一つとっても悪くないように思えた。太陽は自分の記憶の物より大きく感じるけれど、この世界は球状ではないのでその辺りも慣れだろう。


「では行ってきます」


 聞こえているかどうかわからないけれど恩神(おんじん)に断りを入れ一歩目を踏み出した。


 エニスが前にやってきて蹲る。伏せの体勢らしい。


 確かにジャングル(熱帯地方の植物、と言った様子ではないけれど)と言っても差し支えない程の鬱蒼とした森である。歩いていくには大変だ。


「良いのか?」


 背中を撫でると、


おん!


 音じゃない言葉が届いた気がした。


「じゃあ頼む」


 伏せの体勢でも身体が大きいので乗るのに苦労した。


「急がなくて良いぞ、色々確認しながら進むことにするから」


おん!


 ステータス画面を開き、地図を拡大する。画面操作も念じることで行う。

 ゲームみたいな感覚だけれど、VRゲームができたらこんな感じなのだろうか?


 ステータスを確認すると、名前が空欄になっていた。


 五百年、精確にはどれだけ経ったか分からないけれど当時の名前を使うのは何となく抵抗を感じる。だから新しい名前を名乗るようにしよう。


 念じるだけで、そこに名前が表示された。



  ◇◇◇◇◇◇◇

ヒロ 体力 396(A)

   魔力 150(C)

   理力 660(AAA)

   筋力 210(A)

   身軽さ 301(A)

   賢さ 204(B)

   手先 104(E)

   運 540(AA)

装備品 万能ナイフ(神造)

    革の衣服(神造)

    ブーツ(神造)

  ◇◇◇◇◇◇◇


ありがとうございました。


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