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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第一話 英雄+再臨
27/99

グンジョウ+剣闘士

やっと異世界人が登場しました。

+ + + + + + +


 黒スーツが登場する以前から、闘場内の観客は異常な熱気に包まれていた。


 一つは今までのトーナメントで求めるだけ飛び散り、漂っていた血霞を少なくする者がいた事に対する怒り。


 そして今の最強王者によってその『ルール違反者』が倒されることを願う熱狂的な信奉。踏み鳴らされる床、噴き上がる歓声は闘技場全体を揺らす地震と雷の様である。


 知らぬ間に悪役にされている事より、グンジョウの信者が多すぎる事に驚いた。


 闘技場のルールに則り、正しい武芸者として名を馳せる男。限りない手数の戦闘手段を持つ男。


 思わず顔がにやける。それがどれの感情から出たのかはわからないが、今日の自分のモチベーションは低くない。


 後ろには闘奴候補だった子供達がいて何だか期待する眼と心配する眼でこっちを見ている。


 まだよたよたと動く虎の獣人の子供が自分の膝元に抱き着いてきた。

 これから何が起こるか分からなくて不安なのだろうか。音と振動に怯えて震えているようにも見える。


 樹人の子供は一日の大半を日光浴に使う事を許されているらしく、肌の様子や表情が初めての時とは段違いに輝いていた。


 ワーナ? と言うレナリを母親の様に慕っている小さな子供はこんな時でも眠っているのが凄い。普通だったら音と振動で目を覚ましているだろう。肝っ玉の据わった将来の楽しみな子供である。


 虎の乗人の子はレナリにも似た崇拝の念を贈ってくれている。


 自傷していた子はなぜか涙を浮かべてこちらを見ている。もしかしたら自分の心配をしてくれているのだろうか?


 頭を撫でておく。心配されるだけの人物ではないと自己評価しているが、彼女はそれだけ優しい気持ちを持つからこそ自分を傷つける事で心を護っていたのだろう。


 他の子供達も何故ここにいるのかわからないが、その表情には自分に対する真摯な物があった、様に見える。


 情操教育だ基礎教育だと考えていたけれど、この子達は既に必要な所は抑えているんだな、と思う。教えるなんて烏滸がましかった。


 この子供達は立派な、尊敬できる子供達である。


 レナリはエニスに抱き着きながらこちらを見ている。

 その表情は、記憶を掘り起こすには十分な物だった。しかし、よく心配されていたな、あの時も。


 人熊の子と、人虎の子が足元でじゃれ始めた。年も近いからか仲が良さそうである。


 わしゃわしゃと毛並みを撫でると、エニスが自分もと言う顔でやって来たのでやってやる。嫉妬したみたいだった、のかな?




「行ってくる」


 黒スーツの紹介があったので、自分は暗い通路から登場口に出る。


 半分は誹謗中傷、半分は期待、悪くない。


おん!


 おいおい、食っちゃダメだって。


 次に紹介されてから登場した現覇者は、大歓声の中の登場である。巨体なのに、それを感じさせない異常に滑らかな動きは手本にしたいと思うほど整っていた。


 荒ぶるわけでもなく、挙動不審に陥る事もなく堂々と現れる姿は映画のワンシーンに登場する勇者のような姿だ。


 グンジョウは、年齢は近いくらいだと思うが、二メートルを超える背丈と、自分の三倍はありそうな筋肉に覆われた、化け物である。


 武芸百般、なんて言葉があるがグンジョウはどんな武器でも強いらしい。今回は両手に一振りずつ大振りなロングブレイドを持っていた。


 ちなみにブレイドは片刃剣の事である。装飾はなく、鍔もないが引き延ばした菱型の剣は分厚い刃と無骨な作りでとても殺傷力が高そうに見えた。


 強者を降した数だけ刺青をしており、全身刺青だらけである。それも無秩序に入れているから統一性なんて欠片もない。


 顔立ちは和国生まれの自分とは縁も所縁もない国の物と思われた。黒い髪は短く刈り込まれていて、彫が深く顎周りは頑強そうだ。


 服装は垂れ付の腰ベルトとパンツ、籠手と具足、と言う剣闘士を彷彿とさせる格好だ。ここに籠っていた割に程よく日焼けした肌、呆れるしかない肉体をしている。


 眼光は剣闘士に相応しい凶暴な獅子を思わせる鋭い物で、オーラが立ち上がっている様にすら見える。


 肉体の割に繊細な動きで丸盆にあがった男は、嘲るわけでも、見下すでもない独特な表情と目でこちらを見ている。


 自分は笑っていた。


 やっと一人目の異世界人との遭遇である。異世界人と言うから色々な国の色々な人間がいるのやもしれない。名前は群青、または郡上? だろうか、日本(にほん)贔屓(びいき)なのか今住んでいるのか。


 そう言えば日本の父は日本好きと公言する外国人を見るとすぐに良い人だと言って信用してしまう悪癖があった。


 その外国人が何かの実際の事件で捕まった時は有り得ないと呆然としていたのだけれど、日本中でそう思っていたのはあの人だけだったと思う。


 目の前のグンジョウはその外国人の俳優に似ていた。体格だけかもしれないけれど。

 肉体派俳優で海外のプロレス団体か何かに所属している所を映画デビューして世界中で人気になった人である。実力と人気、外見どれをとっても一流で、益々目の前の男と被る。


 この男はその身一つでここの覇者となった男であるようだし、ステータスを確認してみる。



  ◇◇◇◇◇◇◇

グンジョウ 体力 ex

      魔力 |

      理力 |

      筋力 B

      身軽さ A

      賢さ C

      手先 C

      運 ex

 装備品 歴戦のロングブレイド

     良質のロングブレイド


 特殊能力

  『グラディエイターの栄光』

           の加護

  ◇◇◇◇◇◇◇



 栄光の加護? 『ステータス確認』と『解析*数値化』には自分自身の気付きや発想が組み込まれて形を変えるからか、それがどんな能力かの説明はなされていない。それでも調べると、色々な変化を及ぼす物の様だ。


 exの体力と言い、ガタイに見合わぬ速度と言い。


 見た目とステータスが一般人とは思えないしアンバランスだ。


+ + +


『はじめ!』



 自分はロングソードを構える。

 グンジョウは二振りのロングブレイドを逆手持ちに変える。豪快な見た目の割に、相も変わらず繊細な動きだった。


 横半身で切っ先を相手に向けるように構える自分と、八双に近い迎撃態勢をとるグンジョウ。摺り足と左右の虚動(フェイント)を交え、互いの距離がじりじりと迫りつつあった。


 互いが二呼吸まで近付くと、虚動に前後と上下を足し、騙し合いのような光景になる。


 想像の何倍もの静かな立ち上がりに、煩く感じていた声と振動が止んでいた。


「ふ」


 口元が緩んだのは、二人同時だった。


「『強化魔法』」


「………っ」


 自分が魔法を使うのと、相手が何やら呟くのも同時だった。

 眉間からその奥にかけて冷たい針が痛みなく刺さったような感覚。直感と身体能力全般の強化魔法は成功し、グンジョウの笑みが深くなった。


「来い!」


 グンジョウの声は見た目とはアンバランスな高音だった。野太い首から地面が震える様な低音を想像していただけに拍子抜けだ。


 払われる前提の、斜めに近い刺突と、それを知っていたかのような反らし防御。


 蟷螂の斧のような防御は、片手で自分の突きを外側に逸らした。空いた手でのグンジョウの撫でつける様な斬りつけに、自分は半歩踏み込んで剣を掴む指に肘を当てる。


 ?


 撫でつける斬りつけは一瞬の反動を物ともしないように迫る。自分は合わせた肘を入れ替える様に柄尻を使って刃を弾いた。


 防御に使った腕が閃くような速度で首に向かう。歴戦のロングブレイドを手首ごと畳む様にして、折り畳みナイフのように腰の回転を加えて手首を伸ばす。滑らかな動きに一瞬焦る。


 自分はそれに合わせて身を反らし、重心をさらに下しながら剥き出しの腹に体当たり。


 ?


 デカい身体が振動に揺れるが、それも一瞬。踏込の加減で刃は自分を傷つけられない。


 違和感もこれで二度目。


 自分はこのまま攻めるのに問題を感じ、胸板を蹴る力を利用して距離を取った。


 グンジョウはそれを解っていたように虚動を繰り返しながら、変わらず摺り足でこちらに寄ってくる。


 こちらの攻撃に対する反動は確かにあった。


 グンジョウが理想的な攻防一体を体現している、と考えても二つの違和感は奇妙な手応えだった。


 届いていない。それは判る。しかし、自分の攻撃は確実に当たっていたのに、全く逸れることなく初めの振られた軌跡を辿っていた。


 強化した自分のステータスを考えれば、打ち払うは無理でも最初の自分の突きの様に逸らされてもおかしい事じゃないと思うが………。


 グンジョウの攻撃は逸らすつもりで当てた肘を完全に無視して全くぶれることなく続く違和感。


 グンジョウは無造作に駆け出す。あまりに意気込みを感じないと言う意味で普通なので自分は動きが遅れた。


 交差斬りを座り込む様に避ける。交差したままの腕でグンジョウは体当たりを掛けてくる。


 映画で見た剣闘士のような動きは、独特で今までのそれと違って予測が立てづらい。最も強い攻撃を理に適った振り方をするのではなく、奇襲性を重視して意図されない行動をとる様な戦い方である。


 自分は無様に右に転がりながら体当たりを避ける。交差したグンジョウの腕が閃いて刃のない部分で自分を殴打しようと振るわれる。


 それを弾こうとするも、またもや一瞬動きを止めるにとどまり、グンジョウの攻撃はブレのない軌跡を描く。


 一瞬の静止時間を利用し、自分は後ろに転ぶような動きで距離を取るも、グンジョウは今度は腕を振り切った動きのままこちらに背中を向けて、後ろ向きになって突きを連続してくる。


 背中に目のある様な左右の連動、加えてしゃがんだと思えば蹴りまで飛んでくる始末。


 自分は数度掠らせながらバックステップを駆使して下がるが、これ以上続いたらまずい。


 すると突然、グンジョウはあと数度で自分を追い詰めるに充分な状態だったにもかかわらず、無造作に振り返り構えた。


 余裕? それとも小手調べ? なんにしても、戦闘の流れを自ら断ち切る行動に自分は眉を顰める。


 虚動の動きは一切ブレがなく、先程と変わらない。挑発されている、と感じるもそれは間違いと言えるだろう。少しだけ解ってきたような気がしたからだ。


 自分は先程の立ち上がりとは左右逆の突きを放つ。


 グンジョウは先程と全く逆の防御を取って外側に逸らす。振られる空いた腕、同じ行動は予想通りだった。


 自分も同じく肘をグンジョウの指に当てて弾くつもりだったが、一瞬動きが止まっただけで振られた腕の軌跡は全くぶれていなかった。



 髪一筋の隙間を縫うように、想像通りの動きを見切って避ける。自分は確信を得ながら相手との距離を取った。


「うおおおおおおおお!」


 わざと雄叫びのように声を張り上げながら突撃する。


 テレフォンパンチなんて言葉があるが、まさにその通りの形の、自分で攻撃すると教えるような普通はやらない大振りな攻撃を繰り出す。


 グンジョウはその体格と防御に自信がある様で真っ向から受け止める。


 しかし自分の体格は小さいが、ステータスは違う。加えて強化している事もあり、グンジョウはその大きな身体を防御の姿勢のまま後ろに滑りながらも受けきる。


 予想外の威力だったらしく、防御を受けきった後それを解くまで大分時間があったように思えた。


 なるほど。


 異世界人と言うのはそう言う事なのだろう。

 わざと攻撃を受けさせたことで確信を深めた。


 解析すると、特殊能力の全容が記されているようだった。

 想像通りならば相手は迎撃以外ではまだ動かない。グンジョウは虚動を繰り返しながらその場に左右に足を開いて適した位置取りをしていた。


 そうなると、体力が規格外なのも頷ける。



 今あいつは『ゲージ』の回復を待っているのだ。



 このまま続ければ、確実に自分は負けるだろう。相手はこの丸盆の上では絶対に疲労しない身体の持ち主だからだ。そして、どんな行動も左右対称に、正確に行う事は普通で考えれば不可能だ。


 しかしグンジョウは違った。理想的な身体の動きを、瞬時に行う力が備わっている。


 それは、特殊能力の恩恵であり。


 彼の力なのだろう。


 何せ彼は異常なまでの集中を今しているのだ。



 感覚的には画面の前で。



+ + +



 自分は助走をつけて跳躍。身構えもしないグンジョウに、顔面に向けての蹴りを放つ。


 『上段防御』で腕を交差させてグンジョウは防いだ。


 着地と同時に『まくり』と呼ばれていると記憶している下段足払い、グンジョウは閃くような速度で『下段防御』。


 さして威力のない行動だが、ずるずると砂埃の『エフェクト』をだしてグンジョウは下がった。


 自分は一瞬後にそれを追うように放った拳が『中段』の位置にあるグンジョウの顔に当たった。


 グンジョウは防御態勢だったにもかかわらず、派手な動きで後ずさった。


 弾いても全くぶれない攻撃。必勝法とばかりに同じ防御方法。



 間違いないな、グンジョウはゲームキャラクターになりきる特殊能力を持っていた。



 蚊が止まるは大袈裟にしても、とてもではないが攻撃と呼べない程の『中段』への拳が、グンジョウは相当脅威だったのか後退さった場所で再び同じ虚動を織り交ぜた動きを取る。


 その動きは、今日始まってずっと同じ動きである。

 相当の手練れでも、息が上がったりすれば動きは鈍るし、相手の動きが分かれば虚動は質が変わってくるはずである。


 それでも同じと言う事は、それ以外出来ないと言う事だろう。


 感覚的には格闘ゲーム、または一人プレイ用の俯瞰視点のアクションゲーム、と言ったところか。自分はそのゲームでは絶対に防げない種類の攻撃を知っている。何せ自分もやりこんだとは言い難いが格闘ゲームには触ったことがある。


 閃くような攻撃が繰り出されたのは焦りもあったのだろう。


 閃く、と言うより駒落しのような攻撃だと今なら解る。自分はグンジョウの交差斬りが振り切られるのを待ってから掴んで巴投げで相手を飛ばした。


 自分と同じようにゲームと言う発想の出発点があるおかげで、想像は一瞬、そして多岐に渡った。その中の策を一つずつ試してくことにする。


 先程のグンジョウと同じように、無造作に駆け出して距離を詰める。強化したせいか投げたグンジョウとの距離はかなりの物があり、都合がいい。


 振り上げた右手のロングソードに反応して『上段防御』のグンジョウ、その腕を左手で掴んで、脛に蹴り。


 痛打だったのか、掴んだ腕を力任せに振り切って『下段防御』に切り替えたグンジョウに振り上げたロングソードを力の篭ってないながらも柄尻を振り下ろす。


 苦し紛れに回転斬りからのラッシュが来たが、それはもう見ている。


 グンジョウの動きは先程と全く同じなら、それに合わせてグンジョウの正面に回り込むことも可能だった。しかし、グンジョウは動きを止めずにラッシュを続けている。


 どうやら一連の動きを行わないと止められない類の行動なのだろう。


 その正面のグンジョウに、自分は全力の振り下ろしを掛ける。


 血が舞うが傷はない、しかしグンジョウは全く気にした様子もなくラッシュを終えると、虚動の体勢に。


 必殺技か何かでスーパーアーマーと呼ばれる無敵時間だったのだろう。ダメージは通るけれど動きは止まらない物なんだと判断。


 グンジョウの足が踏込に変わる瞬間、自分は脛を蹴りそれでも進むグンジョウの足を踏んで、ロングソードを手放して両手を、逆手持ちの剣ごと掴む。




 これで勝負はついてしまった。




+ + + + + + +



 武器ごと手を掴まれたグンジョウには為す術がなかった。

 本来ならばできるだろうことも、ゲーム側が想定していない状態には対処がしようがないのだ。


 これは日本の、友達の家に在ったスーパーファルコン(なんか違う気がする)と言うゲーム機のプレイの経験なのだが、体力ゲージと時間しか表示されていない初期の格闘ゲームで良く遭遇した『バグ』で、触れ合うほどの至近距離で戦い続けるとたまにキャラ同士が癒着してしまったかのようにくっついてしまう事があった。


 こうなると運の確率で動ける方が確実に勝つ様になるか、左右に動く以外の選択肢が無くなってしまうためにタイムアップまでそのままで過ごすしかない。こうなる事を想定していないゲームなのだから仕方がないのだ。


 グンジョウはと言うと、頭突きを数度放つもその間に自分は蹴ったり腕を振ってグンジョウの足を刺したり斬ったりを繰り返し、見た目全く傷付いた様子のないグンジョウが倒れるまで続けた。


 剣闘は得意だったかもしれないが、組み合いは不慣れだったようである。


 仮にこの手がダメなら中段と下段を同時に攻撃するとか、攻撃中は振り切るまで攻撃を止める事が出来ない事を利用して後の先を狙い続けるとかいくつかの手があったが勝敗は決した。



  ◇◇◇◇◇◇◇

グンジョウ 体力 ex

      魔力 |

      理力 |

      筋力 B

      身軽さ A

      賢さ C

      手先 C

      運 ex

 装備品 歴戦のロングブレイド

     良質のロングブレイド


 特殊能力

  『グラディエイターの栄光』

           の加護

    テレビゲーム

    『グラディエイター

          の栄光』

    をその身に体現させる

    能力。

    物理法則を無視した

    挙動を行う事が出来、

    身体の限界も

    ある程度無視した

    行動が可能になる。

  ◇◇◇◇◇◇◇



 防具はゲームの中ではアクセサリーの扱いだったのか、表示されていなかった。


 詳しく見るとスタミナゲージと体力ゲージが存在するらしく、スタミナゲージは走ったり攻撃したり、防御すると消費され、尽きると動けなくなるなど、自分が想像したゲームシステムとほとんど変わらない物だった。


 しかし動かずにいればすぐさま回復が始まり、キャラクター、今回はグンジョウだがその能力で回復の速度や消費量も成長すると言う意味で変化するらしい。


 後ろ向きのラッシュは奇襲性と威力の上でかなり上位に位置するグンジョウの基本技にしてキメ技であったらしく、かなりのスタミナを消費する物だったのだろう。


 全力疾走を何十回と繰り返せばその内身体が疲労から十全のパフォーマンスを行えなくなる。

 しかしグンジョウの場合は、疲労から来る行動力の低下は有り得ない。だからこそのex、達人を遥かに超える水準の体力を持っていたのだろう。


 長期戦にもつれ込めばこちらが先に音を上げていた可能性もあるだけに、少し浅慮な自分を戒めるためにも今回の体験は深く心に刻んでおこう。


 自分はありえない程の有利さをジルエニスにもらっているとはいえ、条件次第では異世界人には負ける要素もあり得る。


 ゲームの特性を相手にも強いる特殊能力だったら、不慣れな自分は確実に苦戦していたか、理屈がわからず負けていたはずである。



 やはり想像通り、剣闘士としてのグンジョウの攻撃方法には組むやそれに対する対応と言う行動はなかった。


 自分の知る格闘ゲームなどでは投げ抜けなどの技術はあるし、掴みに対する対応もある物もあるが、この『グラディエイターの栄光』はざっと調べる限り武器を使った一対一の戦いを楽しむ物だった。


 ルールの裏を巧く突けたが、総合格闘技の側面もあったのならあの掴みの後、やられていたのは自分の可能性も繰り返すがないわけではない。


 ジルエニスの世界に、ジルエニスの授けてくれた能力でここにいると言うのに、ジルエニスの邪魔をするために呼ばれているだろう異世界人に負けるのは、自分が自分を許せなくなる。


 優しすぎるジルエニスの事だから自分が負けても、最悪死んでも自分を責める様な事はしないだろう。


 しかし、自分はジルエニスを尊敬しているのだ。


 ジルエニスが自分にできる事を望むのなら、全力を尽くさなければならない。



呆気ない・・・。


ありがとうございました。

19日まで12時投稿を続けます。

それで一話は完結します。

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