強化魔法+EX級技術
本日三回目の更新です。
お気を付けください。
時間の指定間違いの為に遅れてしまってすみませんでした。
+ + +
その後も強化魔法を繰り返し練習すると、成功したのかどうかわからないけれど黄色の魔力が自分の身体に降り注ぐことがあった。でも力が漲る感じもしないし、五感が鋭くなった感じもなかった。
失敗か?
それとも自分の魔法では体感が変わらない位の強化しかできていないと言う事だろうか?
おん!
エニスが中型犬サイズのまま、ソファに座る自分の膝の上にやって来た。
自分に試せ、と言っているようである。
「良いのか? 変な効果が出るかもしれないぞ?」
目の奥は変わらない。
何度か魔力の制御(これはコツを掴めば難しい事ではなく、黄色の魔力を見ているだけで出来る)に失敗するも、エニスに魔力が降り注ぐ。
おん!
味が違う?
混ぜ合わせた状態の色が違う、という事ではないだろうか。
試しに魔力を混ぜ合わせる量を変えたりしても、結局は黄色だった。今度は混ぜ合わせた黄色の魔力を更に掻き混ぜるイメージとかしてみると。
「おお」
赤くなったり、青くなったり、七色に変わった。
強化魔法をステータスで調べると、新たに視覚についての表示が付いていた。
強化魔法は自分自身、他人、物などを強化する事ができるが色で強化できる部分が変わるらしい。
黄色が強化するのは物品との事だ。
しかも、自分自身や他人を強化する場合、どこを強化したいかで色が違うと言うのだ。
物の強化はその物の特徴を強化する事になる。刃物なら切れ味と耐久力。防具なら硬度や耐久力、ランタンなら明るさと持続時間と言った様にその物の個性を伸ばすらしい。
運動能力、攻撃力、防御力、五感(五種類に分かれる)、第六感と言われる直感を自分と他人にして十八種類の強化がある。物品を合わせて十九の強化があると言う事である。
そして黄色は一番作りやすい魔力であり、次に簡単なのは自分を強化するための魔力九種類、他人を強化するための九種類は非常に難しい、という事だった。
軽く絶望しそうになるが、内と外の魔力を混ぜ合わせるイメージを変えるだけでそれも上手くいくようだ。加えて、同時にいくつかの強化を掛ける技術もあるらしい。
ステータス確認で、魔法の補助を調べてみると、実行ボタンがあった。
反則だけれど決勝戦は明日だ。強化魔法があればグンジョウとの戦いの一助になる筈。おっさんよりも高いステータスでどんな真似をしてくるのか解っていないので、下準備を万全にしておきたい。
実行すると、強化魔法の種類が視界に表示され、それに合わせて魔力の混ぜ具合を調整してくれるらしい。コツを掴むまでの時間が涙で流れてしまいそうだ。
もっと早く気づいていれば………。
と思いつつも、この時間で得た感覚は無駄にならない筈なので徒労感はない。少し嘘。
同時強化の場合は、混ぜ合わせた魔力を同時に強化したい数だけ生み出す必要があるが、超高難易度のこの技術も念じるだけで可能になった。
試しにエニスの五感を同時に強化すると、聴覚が鋭くなりすぎてしまって面倒だと言われた。五感を強化すると強化した感覚に振り回されると。
強化具合は混ぜる魔力の大きさに関係しているらしい。
すると、魔力の大きさも選択できるうえに、加減の分量まで分かるようになった。
効果時間も魔力の大きさに関係するが、これは『凝縮』や『膨張』させた魔力を使って掛ける事で無段階調整が可能になった。魔力の密度は効果の高さを、大きさは効果時間に当たる様だ。
キーワードである『強化魔法』の言葉で様々な効果を及ぼせるようになったのである。
念じるだけで十九種類の強化を効果や時間を設定して掛けかれるなんてとんでもなく有難い。
◇◇◇◇◇◇◇
ヒロ 体力 B
魔力 B
理力 AA
筋力 A
身軽さ B
賢さ C
手先 A
運 A
装備品 万能ナイフ(神造)
革の衣服(神造)
ブーツ(神造)
魔法 強化魔法(2)
召喚魔法(2)
召喚魔法(EX)
現理法 念動力(EX)
聴取(ex)
透視(1)
洗脳(2)
特殊能力 ステータス確認(改)
解析*数値化(改)
影箱
◇◇◇◇◇◇◇
ステータスが更新されたようだ。魔力がBに、手先がAに。魔力の数値には総量以外に運用の技巧も含まれるのだろうか?
そこは検索しても解らないが別問題で手先が上がっているのは嬉しかった。
使うタイミングを逃がしてしまって、狩った獲物の解体など自信を無くしていたが、この数値なら初めて見る獲物でもなんとかなりそうな気がする。無理かな?
ステータス確認が改になったのは、色々出来るようになったからだろう。やっと少しずつ使いこなせる事ができるようになってきたと言う事だろうか?
ヘルプを確認すると、強化魔法が2の強度なのは同時に強化できるのが7で、最高効果時間が二十分である事かららしい。
強化魔法は反動が大きく、最大効果を行うと負担でその強化した元の能力がダメになる事もあるらしい。
感覚として二十%強化をニ十分、と言う所が最適なのだろう。それ以上上げると振り回される気がした。
ちなみに自分は催眠が上位に当たる洗脳に変化している事を気付いていない振りをした。
+ + +
魔力と理力の違いは、上手には説明できない。
それでも無理矢理言葉を探すなら、理力は身体の中の熱い空気として自分は認識していて、魔力は立ち上る湯気だった。
そして魔力の場合は内と外に存在する魔力を混ぜ合わせない限り普通の魔法の使い手では変化が起きないのに対し、理力は身体の中を熱い空気が循環する感覚を得ると、その力が発揮される。
これは身体の内だけの変化を外側に及ぼしている、という事なのだろうか。
試しに理力を視覚で見えるフィルターを作動させて(視覚フィルターは他にも十種類ほどあったのを見つけていた)自分を確認すると、理力の流れは身体の中にあり、空気ではなく血管を巡る血液の様だった。
これは現理法を使おうとしなくても存在するごく普通の物らしく、使おうとすると活性化して鼓動を無視して循環している。
魔力の方を確認すると、これは身体を一つのコップに見立てて注いだドライアイスの冷気、という感じである。こちらは使おうとすると、今の段階では意識した部分、最も意識しやすいのは掌で、そこから湯気になって立ち上るのだ。
ここで一つ、実験を行う事にした。
現理法で使う理力、魔法で使う魔力の片割れ、どちらも自分の身体の中に存在する物である。
これ、合わせてみたらどうなるんだろう?
最もイメージしやすいのは、理力の流れに魔力を上乗せしてみるとどうなるかという事である。
活性化させていなければ血流と同じ理力に、魔力を流してみると、……………。
[明気を体得しました]
ステータスが表示される。
逆に、こちらは四苦八苦したが身体の中の冷気、魔力に理力を満たすイメージを繰り返すと、
[暗気を体得しました]
と出た。
調子に乗ってこれらを二つ準備してみて、更に混ぜ合わせてみると、
[星気を体得しました]
活性化していない理力と、混ぜ合わせる前の身体の中だけの魔力を使うと言う点では簡単に思えるが、とてつもなく疲れた。
明気、暗気(比較的、と言う意味で)はともかく星気は一度作ると身体中の毛穴から冷や汗が噴き出る感覚があった。
[三つのEX級技術の体得により、ステータスが更新されています]
見ると、基本能力が向上していた。更には新しい項目が増えていたりするが………。
現理法と魔法ならともかく、この三つはとてもじゃないが戦闘に使ったりできる様なレベルではない。
今はフィルターで確認しながら行うのがやっとで、そんな長い間自分を見ている間に普通に戦う方がはるかに良い。鍛錬や研究はこの先行う事にする。
◇◇◇◇◇◇◇
ヒロ 体力 A
魔力 B
理力 AA
筋力 A
身軽さ A
賢さ B
手先 A
運 A
装備品 万能ナイフ(神造)
革の衣服(神造)
ブーツ(神造)
魔法 強化魔法(2)
召喚魔法(2)
召喚魔法(EX)
現理法 念動力(EX)
聴取(ex)
透視(1)
洗脳(2)
特殊能力 ステータス確認(改)
解析*数値化(改)
影箱
明気(1)
暗気(1)
星気(1)
◇◇◇◇◇◇◇
ずいぶん上向きに更新されていた。
+ + + + + + +
朝、やはり暑苦しくて目が覚める。
いつ入って来たのか知らなかったが、今日も子供の塊の中で目覚めると、子供達が寝巻を着ていた!
数日前まで襤褸切れを千切れかけた紐で結ぶような姿だっただけに、その姿は素晴らしい前進であると思う。
人熊の子供を抱え上がると、相変わらず服によだれの痕跡が残っていた。前との違いは両隣をレナリと、自傷していた女の子が占拠していた事だ。
全員が絡み合うような状況で、中にはベッドから落ちそうになっていたり、落ちてそのまま眠っている子供もいる中相当の苦労を掛けてベッドを抜け出す。
大きなあくびをする人熊の事が目覚めて、自然な動作ですり寄って来た。
親に甘える様な声は種族特有の物かこの子特有の物かはわからないけれど。何にしても自分は親ではない。親代わりをしてやる事も出来ない。
+ + +
準備運動がてら強化魔法の最適化を図る。
ステータス画面でかなり簡略化ができているので、それを調整する事で攻撃、防御、身体能力など使うまでの準備時間、効果時間と身体の強化のバランスを取る。
やはり1.2倍の強化が一番身体を動かすのに困らない。
突然速度が上がりすぎたりしたら自分自身がそれに振り回されてしまう。そして解除の反動で身体が疎ましく感じる事もない。
しかし、魔法や現理法で消費したと体感した事はないが、ステータスで自分の力を使うと言う選択はゲームなどと違って少し怖い。
初めてICカードで改札を抜けたり、コンビニで水を買ったりしたときに感じた怖さがある。しかも使っているのはお金ではなく自分の中にある物である。
ゲーム感覚を基準として考えると感覚が狂う気がする。
蒼の鎧を着ていたころ、多分同じことを体験していたのだろう。速度が上がり身体のキレが上がっても、何とか制御できた。
この効果は自分から解除しなければ四分は続かない程度だった。
簡略化しているとは言っても、一度に複数の項目を強化するのは集中力がいる。強化魔法はステータス確認のおかげで最適化されているので魔力の混ぜ合わせで失敗はしないけれど、発動するまでの時間はかなり伸びてしまっている。
状況と均整のとれた行動を心掛けないと、自滅する不安があるだろう。
この世界の歴史では五百年前に存在した魔王。自分が戦った事のある中では文句なく最強の存在だった。
しかし今日戦う相手は見方を変えればその魔王よりも何倍も戦い辛い異世界人である。自分と同じように、見た目からは想像もつかない特殊な能力を持っていたりするはずである。
グンジョウと言う今回の相手は、以前の自分の様に武器や鎧を授かっている様子はない。
調べた情報では武器を選ばない武芸者として有名だからだ。
短槍と盾、
この世界でデキスと呼ばれる刃の付いたナックル。
投げ斧に棍棒。
どれだけ器用なんだ。自分は実戦では剣と槍しか使っていない。銃はまだ戦いで使った事もないと言うのに。
もしかしたら万能ナイフのように変化する武器の可能性もあるが、その多様な武器を使う技術こそ恐れいる所だろう。
文句なく、強敵だ。
やっと今日、本番を迎える気持であった。
偉そうな事を言っている自覚はあるが、ジルエニスの目的を叶える為に、やっと始める事ができるのだ。
「ふう」
相手は自分と同じく神様の力(祝福)を持ったうえでこの世界にやって来た異世界人。
闘技場に留まる理由は判らないけれど、本人には本人の理由があるのだろう。しかし、それがジルエニスの世界を乱しているのだから、自分はそれを止める理由がある。
空を見上げ、ジルエニスに願う。
神がどんな目的があって自分を選んでくれたのかわからないが、兵士だったあの日、仲間とは散り散りになって一人戦場にいた時の恐怖を考えれば、この世界の戦いに怖気づく必要はなかった。
だから救ってくれたジルエニスのためにも、自分はこれから最善を尽くしてジルエニスの目的を果たす。
それを見ていてほしい。そう願った。
連絡係を使うにはちょっと恥ずかしい内容だったから、願うだけで済ませた。
ありがとうございました。
次回は明日の予定です。




