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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第一話 英雄+再臨
21/99

情操教育+基礎知識

本日二回目の更新です。

おっさん臭さがとれれば幸いです。

+ + + + + + +


 朝。

 ソファで目覚めると、汗を全身にかいていた。


 エニスの感触を覚えたので、いつの間にか乗っかって来たのだろうと右手を上げてぺしんとする。


「ひゃん!」


 ………うん?

 エニスの鳴き声は感覚で言えば肌で感じる物に近いはずだが、今の鳴き声は耳に届いたものだった。


 ぺしん。


「あっ」


 悪い鳴き声ではない。

 もう一度試そうと手を上げると、その手にひんやりとした感触があった。冷たい、とすら感じるのに、とても柔らかい感触である。


「うん?」


 エニスの腹だろうか?

 エニスの腹の感触には一家言ある自分にとって、これは新たな楽しみ方かもしれないなと思いながら瞼を開けると、目の前にあるのは蒼ではなく、緑の色だった。焦点が定まると、ソファの上で仰向けの自分に二つ乗っかっている物がある。


 左手にエニス。エニスは欠伸しながら手首の辺りに顎を乗せていた。


 そして右手には、何だか知らないが自分の右手を大事そうに抱きしめる女がいた。


 裸で。


「服を……………っておい」


 ソファの下に落ちているシーツを、エニスを無視してレナリに掛ける。


「皺になってしまいますので」


 脱いだ、と。


「これは一体どういう状況だ?」


「嬉しすぎたので思わず」


 ぺしんしたら嬉しくなるっていったい何があったんだ?


「手を放してくれ」


 感覚が寝起きで見ているだけで感覚が鈍いのが許せなくなる(寝惚けている)。


 彼女は体温が低いのか、やたらひんやりとした感触だった。肌触りは、すべすべしているが、しっとりしてはいない、のだろうか?


 名残惜しそうにしているくせに一向に手放さないので、エニスの尻尾を掴んで顔に振る。


 勢いのない尻尾なので痛いなんて事はないだろう。


+ + + + + + +


 闘奴としてここで育ったレナリは、激しく知識が足りないことが判明した。

 初めは、最初からこうすれば良かったと、自分はレナリにどんな服が着たいかと聞いたところ貫頭衣以外に着たことが無いので解らないと言った。


 そこで、レナリがあの檻の中で育ち、言葉などは当時の今はもういない年長者に習ったと言うのを知った。


 シャワーの浴び方は年長者から下の子供に教える物だったらしく、それもろくな物ではなかった。

 桶に湯を張って布で身体を拭く状況は、和国や日本で育った自分には嬉しくない状況だったが、彼女たちの場合どんなに暖かろうと寒かろうと表で桶に水を入れて掛け合うだけだったと言う。


 しかもレナリを闘奴にするつもりだった連中は彼女を蛇人と勘違いしており(爬虫類の乗人や獣人にはままある事)、異常に打たれ強いし力もあるレナリに攻撃の一切を教えていなかった。


 一方的に攻撃されるだけの訓練の話を聞いた時なんて、自分の事でもないのに手が震えだしたくらいだ。


 彼女の周りの同年代の女性の闘奴は大抵もう救い様がないくらい性的に酷い目に遭っているが、レナリが本気で暴れた場合返り討ちに合うのが怖くて今まで彼女は身体を弄られる程度で済んだと言う。


 これだって自分にしたら今すぐこの闘技場を滅ぼす理由になりうると言うのに、彼女からしたらそれ以外の例を知りもしないので、隠したい事、いけない事と言った『情操教育』や『基礎知識』が完全に抜け落ちている状況なのだ。


 この部屋に来た時も全裸になったのは全てをさらけ出す方法として一縷の望みとして契隷の事などを習っていたから実行しただけであって、羞恥心とか他人に裸を見られることに対して彼女は何も感じていないと言うのだ。


 それを聞いて調べれば、闘奴として育った人間達は警備兵として取り立てられることもあるらしいが、それは一割にも満たない数字である。


 加えてそこまで辿り着ける実力があっても女性の闘奴の末路は悲惨極まる事になるらしい。

 その辺りも含めて、闘奴候補には知識を与える必要がないとばかりに子供には過酷どころか、殺意しか感じない肉体労働や、教官役として闘奴の訓練と言う名ばかりの虐待を受ける。


 惨すぎてもう、どう考えて行動するべきか本気で疑問を感じる話である。


 それを聞いた自分は、まず万能ナイフでこの世界でもごくごく普通の平服を生み出し彼女に渡す。透視で部屋から外を見て歩いている女性の服を生みだした。


 制服セットのおかげで、それほど時間をかけることなく彼女が服を着るのを待って檻のある部屋へと向かった。


+ + +


 見れば鉄格子は取り払われ、子供と同じ数だけのベッドが入れられていた。


 子供達は見た事もない食べ物を食べている所だった。パンとスープとサラダ、普通の食べ物を子供達は神様の御馳走と言いながら美味しそうに食べている。


 人数を確認していると、まだ乳歯も生えそろってないだろう子供や、樹人の子供がいた。この部屋には窓一つないために、日光が生きる上で人よりも重要な樹人の子供は明らかに健康を害していた。


 あの汚塵。人格を変えてもそれを実行するだけの知識もねえのか?



 ぶっ■らしてやろうか………。



 小学校に上がるかどうかの人熊の子は、指の長さの関係で人と同じ食事を摂るのが極めて難しいって言うのに、それでもその子は嬉しそうに食事をしている。


 勢い込んできた自分を見て、事情を知っているらしい子供が数人抱き着いてきた。


 中にはレナリより少し下くらいの男の子と身体がかさぶただらけの女の子も、涙が出そうになる位純真を浮かべた表情のまま抱き着いてきたり、お礼を言ってきたりする。


 契隷になりたいと言う子供達もいたが、まずは食事を済ませてからだと言って席に戻らせる。


 椅子もテーブルも粗末な物だったが、ベッドの清潔なシーツや毛布代わりの毛皮は質の悪い物じゃなかった。


 エウジス鹿の毛皮があったから、もしかしたらエニスが狩った物かもしれない。


 午後には第二回戦が始まる筈だが、それどころじゃないとか思ってしまっていた。


+ + +


 万能ナイフを使って人数分の水着を出す。


「エニス」


おん!


 普段水の掛け合いをしている所は、木々に囲まれたところにあった。闘技場を出た先の城壁の中にある林の一角で、そこに井戸と桶が一つ。


 エニスならできるだろうと思ったけれど、すぐさまそこにみんなが浸かれるくらいの深さと広さのスペースができた。

 掘り進めながら何かしたらしく、お風呂として使う陶器の様な感触に変わっていた。


 念動力で井戸から水を持ち上げて注ぎ、三回ほどで満タンになると念動力の練習で気付いた応用技術で、水をお湯に変える。


 念動力と言うのは念の力で動かす、と書くので目で見るだけでは理解できないだろう分子なんかに働きかけたらどうなるんだろうと思ったら簡単にできていた。


 手を入れてみて、念じただけなのに理想的な温度になってる。


 まず自分で着替える事ができないだろう男の子と女の子を選び、水着の着方をみんなの前で実演。


 男の子は幼い虎の獣人でずっと裸ん坊だったらしい。女の子は怖がられると思ったが拍子抜けするほど素直に言う事を聞いてくれた。

 風呂のつもりなのに水着を出したのは、男女が違うと言う事と裸を見せるのは恥ずかしいと言う事を知ってもらうための一助になればいいと思ったからだ。


 見るとエニスは即席の浴槽が気に入らないのか、簡素ながら階段まで作っていた。加えて洗い場まで整えているとなると、素晴らしい意思疎通に嬉しくなる。


 男の子と女の子を別々に着替えさせる。レナリも四苦八苦していたが、何とかなるだろう。男の子には自分が引率した。


 次に万能ナイフで天然素材の、本当なら何種類も出すべきなのだろうけれど全てを洗うのに賄えるタイプのボトル入りの液体石鹸とスポンジを準備したら掛け湯の文化を教える。桶一つじゃ足りないので、念動力で持ち上げて掛けた。


 口でもレクチャーしながら子供達に浴槽に入るように促すと、恐々と行動する。


 お湯に入ると言う事を考えた事もなかったのだろう。レナリや年長者の子供があやしながらなんとか全員が入る。


 ちなみに自分もついでに水着で入る。足がつかない子供達は突然サイズが変わったエニスの背中に跨る形で入った。


 気に入る子供達と何をされるのか分からず不安そうな子供達がいる。


 この場合、どうしたらいいだろうか。

 エニスはお風呂椅子役になってくれているから、自分がやりながら教えるべきだろう。



 身体を洗う。と言う考え方を子供達に伝授した。


ありがとうございました。

次回は明日の予定です。

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