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チート+チート もう一度英雄  作者: 加糖雪広
第一話 英雄+再臨
17/99

『催眠』+闘奴候補

+ + + + + + +


 闘場に割れんばかりの歓声と拍手が鳴り響く。


 個人に用意された控室で自分は水筒の水を口に含みながら瞼を閉じていた。控室は時折震度4位の揺れが起きるが、そんな事は全く気にしていなかった。


 汚塵の部屋は闘奴の牢獄よりも汚く臭いと感じたので、基本的な処理を終えたらこちらに案内してもらい、集中していた。(2)の催眠は条件付きで遠隔催眠が可能だったのである。明日までの時間があるので、自分は表示されるウィンドウを念じる事で処理していた。


 時間があると言うのはトーナメントの方が一回戦で十六試合、全ての出場者が戦うので一番時間がかかる。

 まだ半分も行っていないらしい。場合によっては深夜まで続く可能性があると聞かされた。


 それなら次の日にすれば良いと思うのだけれど、入場チケット(今回の料金は最高額の最低席五千バーツらしい)は一回戦、二回戦と別料金になるシステムなので一通りやるまで終わらない物らしい。


 実力者ばかりが集まったトーナメントは、一戦一戦がとんでもない濃度で繰り広げられており、身体の欠損をしてまで勝ち上がる者もいるらしい。


 この闘技場の価値は自分の中で完全に底に堕ちてしまっているので、そこまでする出場者の気が知れないのが今の気持ちだ。

 身体の欠損は治癒魔法・神官儀式でどうにかなる世界だが、闘技場で死んだ者は復活させない決まりで、加えて欠損は一つのトーナメントならトーナメントが終わるまで治癒させないのが決まりである。


 中には自前の能力で治せたり戻せたりする者もいるが、それは特例として許されている。この辺りは五百年前と変わらないのに、どうしてこうなったのだろう。


 今自分は遠隔で催眠の最中だ。遠隔な上に強度が(2)であるので既に、完全人格最成とも言うべき所業である。


 控室は豪華、とは言えないが宿屋よりも何段階も上の設備と綺麗さである。


 テーブルセットやベッドはかなり力が入っているらしく、普段ならちょっと物怖じするような装飾があるが、ジルエニスにもらった万能ナイフのおかげと言うか所為と言うか、美的価値がわからない。


 もしかしたら元から分かっていない確率もあるけれど。でもこんな部屋作る位なら他にできる事あるだろう? と自分は思う。


 話を戻して催眠の方だが考えた結果、汚塵さんは元の人格の一切を消去した。


 リセットをかけても、良心に欠片も影響がないのは、自分もおかしくなっているからだろう。


 出来うる限り世間に貢献できるように人格を最成する。もう、別人格レベルではなく他人を新たに作る状態である。


 とは言っても、あの汚塵は色々な国や貴族、団体に伝手を持っているのでそれを使ってもらい、闘奴として売られた子供達や難民の為に不眠不休で働く人物として役立ってもらおう。


 当人のステータスは、驚くほど高水準である。それがどうしてああなった? ああだから高水準ではあって欲しくないな。


 子供の泣き声で呼吸不全を起こし、人の為にならない事をした場合自分にそれが返って来るようにする。やりすぎだと、ここまでやっても思えない。


 護衛は数人いたが、割かしまともな奴もいたのでそれは放っておく。それ以外に体験で壊れていると解析された人達も催眠以外の方法で癒してある。


 審査員にも、彼らの感覚で旨味を味わっていた連中がいるようだが、改心すればよし、しなければ少し酷い目にあうように最成に付け足しておく。


 連絡係にやった事の報告と、仮に闘奴として酷い終り方をした人達の魂と言われる物があるのなら、それらを癒してやって欲しいと頼む。


 自分の手でやりたいのだが、それを知覚する事は不可能だとヘルプに表示されていた。


 万能ナイフならできるのに、使う自分の性能の問題なのだろう。少し冷静になってみれば、とは言っても今現在頭と感性がおかしくなっているだろうけれど、ジルエニスの世界に我儘突っ込み過ぎではないだろうか?


+ + +


 魂と言われる物があるのなら~と今考えたが、自分は輪廻転生と言う考え方があるが、それが合って欲しくないと思っている。


 物語なんかで前世の記憶や体験が復活した場合の話があるけれど、それは悪、ではないにしても良い、とは思えないのだ。


 報酬として体験しているのは今現在のヒロと言う人間の記憶を一切持たない人物である。


 ジルエニスの話では魂だけを死産するはずだった(・・・・・・・)赤子に憑依させると言う事なので、あの一世一代の言葉の後、あの中学生の少年は大事な言葉を言っているはずだ。


 だから角山さんに恋をしているのは自分ではなく深く感情移入をしている物語の登場人物、と言う所として自分は考えるようにした。


 話を戻すと、一つの魂の輪廻なのだとしても、その人生はその人の物であるべきで、何度も記憶を持って繰り返すのは、それは違うと感じるのだ。


+ + +


 ………自分はそう考える立場のくせに、一つの命を蔑ろにしている。一つどころじゃないか。


 でも、ジルエニスには胸を張って報告する。間違っていないと。この事で悪影響が出るのなら、それは自分の責任でそれを果たす。そう思う。



 しかし…………。最成するだろう汚塵さんの人格を確認すると、聖女のような人間が出来上がってしまう。とは言ってもあの外見だから崇められたりすることはないだろうけれど。


 ちなみに、催眠は念じるだけで言葉を表示する検索などと同じやり方で行っている。


 ウィンドウが表示されてその内容を読むたびに文章が記されていくので、万能ナイフの形を変えたり何かを出したりする感覚と同じで、読むだけで色々な情報が新たに書き込まれていくのである。


 どうでも良い汚塵の名前はフィエル・アシト・フォーファス、ミドルネームがあると言う事は貴族の爵位を持っているようだ。


 まあ、これからそれを山ほど利用して今までのツケを払ってもらうとしよう。とは言っても、既に人格自体は完全に消えてなくなっているので、申し訳ない気持ちも欠片はあるが、もうそれをさせるのも手遅れだと自分は思ったのだ。


 正直、殺せるものなら殺しても飽き足らない。

 でも、それは汚塵(そいつ)と同じ事をする事である。でも、許せない。


 そのループの結果の判断が催眠である。

 ジルエニスにも、あの時の仲間にも、自分は胸を張れることをした。何と言われようと、これだけは譲れない。


 最後に三度の飯より善行好きという要素を足して、まるでパズルゲームをするような感じで汚塵さんの人格の器に要素を組み入れて行った。完了。


 強度の関係なのか、三十分弱で一人の人間を作り替える現理法。


 余程の事が無い限り、これは封印しよう。

 四桁の子供達を嬲殺しにした奴になら、良いよな?


 それでもエニスを抱えて撫でるのは、複数の物に対して後味が悪いからなんだろうか?


おん!


 ありがとう、エニス。

 味方がいてくれるのは心強い。相も変わらず神掛かった手触りを堪能していた。



+ + + + + + +


 コンコン。


 ノックに返事をすると、入ってきたのはさっきの女の子だった。


 襤褸はそのままだったけれど、身体は綺麗に洗ってきたらしい。

 その目的が読めないけれど、選択肢は二つしか思いつかない。


「レナリ、だっけ?」


ありがとうございました。


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