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初めの難関をクリア

 「……それでは、アストラル・メイリーネ嬢をフィレイドの妃候補とすることを決定し、ここで解散とする。フィレイド、アストラル嬢が王妃と話をする間、私のところへ来なさい」







 王が解散宣言をしたあと、先程の青年を含むメイリーネ達三人はフィレイドの自室へ戻った。

 「上手く、いったのかしら……?」

 「あぁ。とりあえずはな」

 「それであの、そとらの方はなぜこんな嘘に乗っかってくれたのでしょうか……?」

 「コイツのことを説明してなかったか」

 悶々としていると、フィレイドにコイツ呼ばわりされた青年がメイリーネに膝をついた。

 「王子の護衛を担当させていただいてるグリイズと申します。アストラル嬢、どうかお見知りおきを」

 「そんな、膝なんてつかないで下さい……! 私はそんな身分でもないし、畏まらないで下さい」

 慌てて自分もしゃがみこめば、フィレイドが面白そうに二人を見つめて言った。

 「だ、そうだ。グリイズ、アストラル嬢が畏まるなと言ってらっしゃるんだから、お前は俺と接する様にしてやれば良い」

 グリイズの肩に手をおいたフィレイドに、ますます訳が分からない。

 「あのなぁ、野郎と女の子をおんなじように扱う訳にはいかないだろ?」

 「お前……、王子に向かって野郎と言うか?」

 「そういう無駄口叩けるような関係が良いって言ったのはそっちだろ? 多目に見ろよ。……って、アストラル嬢固まってるぞ?」

 王子と、従者……?

 「グリイズと俺は小さい頃から知ってる仲だからな。公の場以外ではこういう砕けた話し方をするんだ。今回の計画にグリイズは協力させているから安心しろ」

 王子の補足に頷きつつも、協力させている、ってところがまたなんとも

王子らしい……なんて考えてしまった。

 「なんかあったら頼ってね」

 ヒラヒラと手をふるグリイズは気さくで話しかけやすそうだ。

 「それにしてもお前の反応は新しいな。従者と同じようにしゃがみこむなんてそうそうしないぞ?」

 「フィレイドー、なんでお前はそうやって上から目線でからかうようなこと言うんだよー? ほんと性格に難ありまくりだよな。ね、アストラル嬢もそう思うでしょ?」

 流石に本人を前にして「そう思います」とは言えないので、曖昧に笑って誤魔化した。

 「アストラル嬢はお前に気を遣ってるんだよ。優しいな」

「あれが当然の反応でお前はずけずけと言い過ぎなんだ」

 軽口を叩きあってるのを見ると何だか緊張が嘘みたいに無くなっていく。

 「あぁ、そうだ。恋人同士なのにアストラル嬢と呼ぶのも変だし、名前で呼ぶからな? 俺のことはなんと呼んでくれてもかまわない」

 「……普通に王子、とお呼びします」

 大臣家の妃候補者の敵意を含む視線を思いだし、無難に呼ぶのが一番だろうと決断した。

 「分かった。さて、協力者が揃ったところで軽くお互いのことを話しておく必要があるな」

 確かにこの先、知っていた方が自然だろう。

 「カスターナ・フィレイド。歳は二十ニ。普段は執務もやってるから、何かあったら執務室に来い。……言い出しといて何だが大して話すことないな。必要な時にまた話すことにする」

 「んで俺はターナ・グリイズ、二十三歳。フィレイドの護衛っていうかパシりっぽいけど、これでも一応、王族側近。しかも俺の方が兄貴なの。フィレイドに苛められたら俺のとこ逃げといで?」

 「年齢だけな。それも一つしか変わらん。ついでに言うとお前のところに行かせて良からぬ噂がたっても面倒だから適当にしといてくれ」

 いちいち細かいこと気にすんなよー、とフィレイドを茶化すグリイズはある意味で王子よりすごいのかもしれない。とてもじゃないが真似できない。

 簡単というより雑すぎる紹介の順番が回ってきた。

 「アストラル・メイリーネ、十七です。あ、もうすぐ十八になります。……これってあと何言えば良いんでしょう?」

 「特技とか無いのか?」

 「うーん……、貧乏暮らしだったので、特技とまではいきませんが家事はやっていました。あと細かい作業とかも割りと得意ですね。……このぐらいしかぱっとは思い付きません」

 「あ、じゃあ自分の気に入ってる部分とかは?」

 それは関係ないだろうと呆れるフィレイドに反してグリイズは乗り気だ。

 「アストラル嬢、すっごい綺麗だからさ、気になるでしょ?」

 「いや。気にならない。それとグリイズ、今のじゃ理由になってないだろ」

 ――本当にこの人たち、仲が良いのね。


 普段なかなか味わうことのない雰囲気に和む。綺麗だと言われたことには恥ずかしくて触れにくいが、気に入ってる部分を聞かれるなんて珍しくてつい考えてしまった。

 「髪、ですかね。……父譲りの色に、母と同じ様なウェーブや髪質だと聞いたので、なんだか嬉しくて」

 言った後に、無性に恥ずかしくなってしまい、話題を変えようと意気込みを伝えることにした。

 「えっと、何としてでも、お家を復興させたいのです。よろしくお願いします!」


 がばっと頭を下げれば「頼もしい」と王子の声。決して馬鹿にする様子ではなく出会ってから初めて聞く優しげな声音に自然と笑みがこぼれる。


 一通り終わったところで、約束通りフィレイドは王に、メイリーネは王妃に会いにいくことになった。





 「最初は迷路みたいで大変だと思いますが把握できるよう頑張って下さいね」

 メイリーネにはグリイズが付いてきてくれることになった。部屋の外に一歩出た途端に、彼は丁寧な口調で廊下を案内をしてくれたのだが、もう少しで部屋に着くというところで向こうから歩いてくる人物を見つけた。

 先程よりも少ないが、侍女を従えて真っ直ぐこちらへ向かってくる。



 あの大臣家の妃候補だ。





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