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2、世界が混乱する話



今回は短めです。



……いつも短いのは気にしないでください(汗)





2、世界が混乱する話




「あー……ごめん、大丈夫?」




三者三様のリアクションを見て戸惑っている俺に、唯一と言っていいかもしれない理解者・リョウは心配そうにこちらの顔を除きこんでくる。




「あ……っと、大丈夫です……」



「ごめんね…うん、やっぱりどうにかしないとね……」




この仲の悪さ、と付け加えてリョウはアジト―――と言っても、路地裏にある小さな廃墟ビルの地下のバーを勝手に使っているだけだ―――の中央付近の椅子に座り、はぁ…、と溜め息をついた。

座ったリョウとは対照的に、立ち上がった少年がいた。少年は心底嫌そうな顔をして俺に近寄り、



「……おい、新入り」



「何だ、ちびっこ」



あ、つい衝動的に言ってしまった…。

嫌さぁ…この口の悪いヤツ、真夏なのに赤マフラーしてるし……何より……小さい。150くらいじゃないか?俺、160センチはあるからさ……見下すようになるし…。




「ッ!……天才の僕になんて口を聞くんだ…!バカ以外の何者でも無いな…!」




…ナルシストか、こいつ。

俺…ナルシとかマジで無理だから。つーか、俺はナルシを叩く側だった。…某動画サイトで。

自分がちょぉーっとイケメンとか頭がいいからって調子に乗るなよ? 痛い目にあってしまえ。




「イズミ…彼はこの街に来たばかりなんだ。わからないこともある。君は彼より先にこの街に来ているから色々教えてやってくれないか?」



赤マフラーと学校の制服らしき半袖ポロシャツを着ている、イズミと呼ばれる少年は俺より10センチくらい低いのに睨み付けてきた。……こっちから見たら上目遣いに見えてしまうんだが。全然嬉しくねぇ。かわいい女子ならともかく、男子…それもナルシストに上目遣いされてもなぁ…。




「はっ。

なんで天才の僕が愚図なんかに手を煩わせないといけないんだ」



「……」



「だいたい、僕はお前らに協力するとは言っていない。

お前らが僕に有益な情報を持っている、と言ったから着いてきただけだ。その情報ももう手に入れたから、お前らは最早僕には無用のモノでしかない」




部屋に、沈黙が走る。

お前ら、とはリョウの他に二人の男女を指しているのだろう。確かに、…これは…うん。

しかし、俺はコイツと馬が会いそうにない。なんだろう、言い方が気に入らないのか、態度か?




「僕は僕の好きにする。君たちと関わるつもりは一切ないから……僕に関わらないでくれよ」




ちびっこ…もとい、イズミはスタスタと名残無さげに部屋を出ていってしまった。

な…そこは止めるべきだろ!リョウとその他の人たち!




「……わかった。君の好きにするといい……」




リョウは目を閉じ、静かに告げた。


えぇ!?止めろよ!止めてやろうよ!!

あいつ、好きじゃないけど、止めてやろうよ!仲間だろう!? 俺は出会ったばっかりだけど!




「はっ。今回はやたらと潔いな」



「……むりに引き止めても、聞きはしないだろう?」



「確かに、そうだな」



「なら……君を縛るわけにはいかない。好きにするといい」




リョウはもう諦めたよ、と態度で示した。


……今までどんな感じだったんだよ……。こんなことが何回あったのかだけ教えてくれないか?回数だけでいいから。




「あぁ、好きにするさ」




イズミはそう言うと空気に混じるように部屋から出ていった。当たり前のように、部屋は無音だ。


う…何か、いづらい。


勝手に俺が期待されそうで怖い。アイツがどんな役を担っていたかは知らないけど……それが、全部俺の役になる感じがして怖い。

でも、『天才』とか言ってたから、それなりに頭はいいんだろうな。俺の勝手な想像かもしれないけど。




「さて…」




部屋の奥のソファに座っていた男が立ち上がった。

知的メガネ、が第一印象だ。




「1週間で戻ってくると思うから……その間に、新入り君の能力強化と、まだ会わない同胞(プレイヤー)を探そうか」




短い茶髪の知的メガネの青年が微笑んだ。


どうやら、俺の心配は杞憂だったみたいだ。










 †










「っぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!」




品性の欠片も無い、情けない悲鳴を上げながら俺、ユウヤは……




「まだもうちょっといける……ね」




……知的メガネに殺されかけていた。

なんで殺されかけているかって?

理由は至って簡単。

死にかけたら能力って発動しやすいからだそうだ。酷いな! そりゃ、人間だれも死にたくないよ! 火事場の馬鹿力ってヤツだよ!!




「大丈夫大丈夫。

死んでも、明日の朝6時に最初に出現した場所に蘇生(リセット)されるから」




廃墟ビルの屋上―――廃墟ビルの7階―――で突き落とされかけていた。フェンスはあるんだが……俺の腹くらいまでしかないのであって無いようなものだ。

現状、俺はグイグイ押されてほとんど背伸びした状態で、上半身は45度くらい傾いている。


にしても、この世界は良く出来てるなぁ!

蘇生アリとかゲームかよ!!




「何なら1回死んでみる?」



「え!?」




知的メガネ、名をタカナシと言う。

リョウの説明では一番古参で8月を3回経験しているらしい。よって、この世界の事をよく知っているらしいのだが……とにかく、マイペース。何をし出すかわからない。

今のように、唐突に何かを思い付いては何もいわず実行に移すので要注意。


……落ち着いて説明してる余裕無いな!

どうしようか!?この状況!

そうだ、リョウは……え?無理?……もう一人の娘は……いない?

打つ手なし?




「まぁまぁ、物事は経験だって。

痛い、と思った瞬間に明日の朝6時だから」



「ちょっ、ま――――――」



「行ってらっしゃい」




え!?


と思った瞬間に俺の体は宙を舞った。タカナシが無慈悲にも屋上から俺を突き飛ばしたのだ。


落下の中、脳裏を過るのは、元の世界の事。両親に、姉。不登校の俺に毎週会いに来てくれる中学の担任。ネットで仲のいい奴ら。小学校時代の友人。親戚のおばさんとおじさんに、従兄弟。そして、親友。

親友の顔が消えると同時に、今まで経験したことない痛みが襲ってきた。




――――――それが、人生初の死だった。


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