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第91話 キャロルと仲いい私

 家に帰ると、

「オカエリ!」

とキャロルが元気に出迎えに来た。

「ただいま」


「穂乃香、オ風呂!」

 キャロルは私の手を引っ張って、私を洗面所に連れて行った。

「待って。着替え持ってこないと!」

「ソンナノイラナイ」

 よくない。どういう意味だ?でも、キャロルの力が強くて、洗面所から出ることもできなかった。

 

「コレ、アメリカノ土産。司トペアダヨ」

 洗面所にピンクのバスローブが置いてあった。その横には水色のバスローブも。

「え?これキャロルが買ってきてくれたの?」

「ウン」


「わあ、ありがとう」

 そう言いながら広げると、うわ。アメリカサイズ。ちょっと大きい。

「アレ?Sサイズニシタノニ、マダ大キイネ」

「う、うん。でも、大丈夫」

 かなり胸元が肌けそうだけど。


 そして、そのままお風呂に入ることとなった。っていうことは、バスローブの下に何もつけないで出ろっていうことね。まあいいか。一気に部屋に行けばいいんだもんね。

 キャロルはお風呂の中で、すごくご機嫌だった。


「今夜、イッパイ話ソウネ、穂乃香」

「え?」

「彼氏トハ別レテキタ。ソノ話モ聞イテネ」

「…うん」


 そっか。別れたんだ。辛かったのかな。って、いけない!司君の部屋で寝るんだった。今、うんって言っちゃったよ。ああ、キャロルが嬉しそう。

「ノボセソウダカラ、先ニ出ルネ」

 キャロルはそう言ってお風呂を出て行った。


「ああ、やばいなあ。司君になんて言おう」

 この分じゃ、キャロル、絶対に私と寝るって言い張ってきかなさそうだ。


 ため息交じりにお風呂を出て、裸の上にバスローブを羽織ってみた。やっぱりでかい!袖は長いし、丈も長い。まあそれはいいんだけど、胸元がどうにも開いてしまう。


 洗面所のドアを開け、そっと廊下を見た。誰もいないのを確認して、2階に上がった。でも、急いでいたからかしっかりと足音がしてしまい、2階に上がったところで、司君が部屋から顔を出してしまった。

「風呂から出た?」

 うわわ!見られた。


「あれ?どうしたの?そのバスローブ」

「キャロルのお土産。司君のも置いてあったよ」

「ふうん…」

 司君はそう言うと、なぜか私の腕を掴んで司君の部屋に私を引き入れてしまった。


「え?つ、司君?」

 困る!私、この下裸なのに!

「いいね。これ」

「でも、大きいの。サイズが合ってないよね」

「うん、そこがいいね」


 なんで?!

「あ…」

 司君、今、思い切り私の胸元見たよね?やばいと思い、手で隠したけど、

「下着、つけてないの?」

とばれてしまった。


「だ、だって、キャロルが着替えを持たせてくれなかったから」

「ああ、有無も言わさず、風呂場に連れて行かれたっけ。っていうことは、まさか…、下も…」

 きゃわ~~~。ばれた?

「もしかして、素っ裸の上に、バスローブだけ?」

 黙ってコクンとうなづくと、司君のほうが赤くなった。


「……そうなんだ。ああ、でも、元来バスローブってそういうものだよね」

「そうなの?」

「うん。体もふかないで羽織ったりするじゃん」

「しっかりとふいたよ。だって、そんなことしたら体冷えちゃうし」

「寒い?ここ」


「ううん。ヒーターつけた?あったかいよ」

 ギュ…。

 うわ。司君が後ろから抱きしめてきた。

「…やばいね、これ」

「え?」

 なんで?


「つい、手とか、入れたくなっちゃうね」

 どこに?っていうか、もう入れて来てるよ。司君の手、胸元に入ってきた!

「駄目だよ」

「駄目?」


「そうだよ。これから、夕飯だし」

「まだだよ」

「司君もお風呂入るでしょ?」

「守が先に入ってるよ」


「ででででも、早めに着替えて下に行かないと、キャロルが…」

「キャロルのことはほっておいていいから」

 よくない~~~~~~~。

「つ、司君のスケベ」

「…うん」


 うんって…。うんって言ったよ?今。

「ねえ、穂乃香」

「え?」

「風呂上りはいつもこれ着てね?」

「え?!」

「なんか、いいよね。これ…」

 駄目だ。スケベって言ったら、反省でもしてくれるかと思ったけど、まったくだ。


「キャロル、いいもの買ってきてくれたよね」

 駄目だ~~~~~~。抱きついたままだし、手もバスローブの中から出してくれないし。っていうか、司君?!なんで太もも触ってるの?


「ちょ、ちょっと待って」

「…」

「司君」

「…」

「本当に駄目!」


 だ~~~~~!!!!なんで、キスまでしてくるかな!

「だって穂乃香」

「え?」

「学校では触れさせてくれなかった」

 当たり前だ~~~~!


「今も駄目!」

「…はあ。じゃあ、もう少し辛抱するかな」

 司君はため息をつき、そう言ってやっと離れてくれた。

 やばい。辛抱も何も、きっと今日は司君の部屋で寝れないのに。でも、今そんなことを言ったら、きっとまた襲ってくる。


 だから私は、そのままさっさと自分の部屋に戻った。そして、司君がまた襲ってこないうちに、下着をつけて服を着た。

 ああ、まったく。司君、どんどんエッチになっているような気がするよ。こっちは、ドキドキものなのに。


 それから、急いで髪を乾かした。でも、乾かしている途中で、守君がやってきてしまった。

「遅い!穂乃香」

 そう言ってドアをドンドンとたたく。あ、かなり機嫌が悪い。多分、キャロルがいるからだよねえ。


「ごめん、まだ乾いていないの。後で持って行くから」

「じゃ、先に穂乃香の部屋で乾かす。開けるぞ!」

 守君がそう言って、私の部屋のドアを開けようとしたとき、隣のドアがバタンと思い切り開く音がした。

「守!勝手に穂乃香の部屋に入るな!」

 司君が怒っている。


「なんで?いいじゃん、髪を乾かすくらい」

「お前の髪なんて、そのまんまにしてたら乾くから」

「風邪引いちゃうだろ?」

「そんなにやわなのか?」


「なんだよ!髪を乾かすくらいいいじゃんかよっ!」

 うわ。いつもよりも、守君、反抗的だ。

「いいよ、守君、先に使って」

 私は慌ててドアを開け、ドライヤーを守君に渡した。

「……」

 司君は私を見て、なぜかほっとしている。あ、そうか。私がバスローブでいるとでも思ったんだな。


「じゃ、先に乾かしてくるからな!」

 守君はそう言うと、ドスンドスンと足音を立て、下におりて行った。

「甘やかすことないのに」

「でも、機嫌悪かった。キャロルがいるからだよね?」


「……あいつが勝手に怒ってるだけなんだから、ほっときゃいいんだよ」

 司君はそう言うと、部屋に戻り、

「風呂入ってくる」

と、着替えを持って、下におりて行った。


 司君、何気に最近守君に厳しいような気がする。いや、あれは妬いていたのかなあ。もしかすると。

 でも、妬くようなことないのになあ。守君だってまだ、中学1年なんだから。


 そして夕飯の時がやってきた。守君はずっと黙りこくっていた。それとは対照的に、キャロルはずうっとご機嫌だった。

「キャロル、良かったなあ。アメリカでママやパパに甘えられて」

 お父さんがそう言った。


「ウン。ソレニ、思イ切ッテ、アリガトウモ言ッタ」

「へえ。どうした?ママとパパは」

「ナンダカ、驚イテタ。キャロル、変ワッタッテ」

「そう…」


「コッチノオ葬式ノコトトカ話シタンダ。ソレカラ、穂乃香ノコトモ」

「私?」

「素敵ナ友達デキテ良カッタネッテ言ワレタ」

 キャロルはそう言うと、私を嬉しそうに見た。その横で、お母さんも嬉しそうだった。


 でも、

「ふん!」

ともっと守君は不機嫌になった。

「守ハ、変ラワナイ。生意気ナヤツダ」

 キャロルがそう言うと、守君は何かを言い返そうとしたが、キャロルの怖い表情を見て黙り込んだ。

 この二人はやっぱり、犬猿の仲なのかなあ。


「彼トモ別レテキタ。セイセイシタ!」

 キャロルはそう言うと、わははって笑った。でも、内心はどうなんだろうか。キャロルって、どっかで強がる癖があるみたいだから。


「穂乃香!ガールズトーク、楽シミニシテキタンダ。イッパイ、今夜話ソウ」

 キャロルは私を見てまた嬉しそうにそう言った。

「え?」

 隣で小さな声で司君がそう言ったのが聞こえた。でも、

「良かったわ、キャロルと穂乃香ちゃんが仲良くなって」

とますますお母さんが嬉しそうな顔をしたので、司君は何も言えなくなってしまったようだ。


 夕飯が終わり、キャロルも片づけを手伝った。そして終わると、私の手を掴んで2階に上がった。

 司君は守君とリビングにいた。ゲームをしていたようだが、私とキャロルが顔を出すと思っていたんだろう。2階に私が行ってしまった後、寂しげな司君の足音が聞こえてきた。


 バタン。隣りのドアが閉まる音まで、寂しげだ。司君、キャロルに私が取られて、寂しいって思っているのかなあ。

 私も寂しいよ、司君。でも、ちょっとだけキャロルが気になるんだ。私の部屋に入ったとたん、顔が沈んだのがわかったし。


「キャロル?どうしたの?」

「…彼氏ト別レル時」

「うん」

「スゴク、迷ッタ」

「うん」


「モウ、浮気シナイッテ言ッタケド、モウ信ジラレナクテ」

「…」

「彼ナンテ、当分イラナイ」

「え?」

「ナンダカ、疲レタ」


「そう…」

「穂乃香、ヤッパリ、ホットスル」

「え?」

「穂乃香ノソバハアッタカイネ」

「……そう?」

 くすぐったいな、そんなふうに言われると。


 キャロルは布団を敷いて、そこに寝転がると、にこにこしながらアメリカでのご両親との楽しい話を聞かせてくれた。あんなに甘えたのは初めてで、両親も喜んでくれたと言って、嬉しそうに笑う。なんだか、こんな無邪気な笑顔のキャロル、初めて見るかもしれないなあ。


 なんであんなに、嫌いだったのかな。苦手で絶対に仲良くなれるとは思わなかった。でも今は、なんだか可愛い妹ができたみたいな、そんな気がしてくるよ。体はキャロルのほうが大きくて、ずっと大人っぽいのにね。


 キャロルはしばらく、嬉しそうに笑って話をしていたが、大きな欠伸をし始めて、

「眠イ。時差ボケシナイヨウ、ズット起キテイタカラ、眠クテショウガナイ。モウ寝ル」

と言って、布団に肩まで潜り込み、

「オヤスミ」

と言ったと思ったら、ぐうすか寝てしまった。


「…寝つきいいなあ」

 ぼそっとつぶやいた。でも、キャロルは起きなかった。

 司君、まだ起きてるよね。今、10時半だもん。


 そっと私は布団から抜け出して、ドアもそっと開けた。そして、司君の部屋のドアも、小さくたたいてみた。

「司君?寝た?」

 ガチャ。司君がドアを開けた。

「キャロル、寝ちゃったの」

 そう言うと、司君は私をグイッと部屋に入れた。そして、そのままベッドに連れて行かれた。

「一人で寝ないとならないかと思った」

 そう言って司君は、私を思い切り抱きしめてきた。


「こっちで寝てもいいの?」

「もちろん」

 司君はそう言うと、キスをしてきて、

「戻るって言っても、帰さないから…」

とそうささやいた。

 

 ドキン!

 ああ、まただ。司君の言葉に、思い切り胸が高鳴ってしまった。時々、司君はこんなふうにドキッてすることを言うよね。


 そして、隣にキャロルが寝ていることもあり、司君はその日、とても静かに、とても優しく私を抱いた。

 そんな司君にも、ドキドキした。


 チュ。司君がおでこにキスをして布団を掛けると、

「おやすみ」

と小声でささやいた。

「おやすみなさい」

 私もささやいて、そして目を閉じた。


 明日の朝、キャロルは私がいなくって、怒るかなあ。とちょこっと、心配になったけど、でも、それでもいいか~。なんてのんきな気持ちで私は司君の胸に顔をうずめ、眠りについた。



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