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第89話 ラブラブ

 夕飯の時、なんとなく守君ががっかりしているのがわかった。どうやら麻衣が夕飯まで食べていくんじゃないかと期待していたらしい。

「は~~あ」

 ため息までもらしたぞ、守君。


「何よ、守。何か嫌なことでもあったの?」

 お母さんがそう聞いた。すると、

「彼女と喧嘩でもしたか?」

とすかさず司君が聞いた。


「し、してねえよ」

 守君はそう言って、黙ってご飯を食べだした。

「そういえば、彼女から電話があって出かけたんでしょ?どこにデートは行ったの?」

 お母さんが守君に聞くと、守君は、

「どこだっていいじゃん」

とそっぽを向いて言った。


「守、態度悪いぞ」

 お父さんが注意した。でも、お母さんはくすくすと笑い、

「照れてるだけよ、ねえ?守」

とそう言った。


「フン…」

 あれは照れてるっていうよりも、すねてる感じだけどなあ。そんなに麻衣が帰ったことが残念なのかなあ。


 守君はご飯を食べ終わると、さっさとリビングに行った。そして、

「穂乃香!今日はゲームするぞ」

と、リビングから大声で叫んできた。


「守!穂乃香は宿題に今追われてて大変なんだ。お前も勉強でもしたらどうだ?」

 司君がそう言うと守君は、

「え~~!なんだよ、穂乃香。今日もゲームできないのかよ」

と思い切りふてくされてしまった。


「彼女よりまだ、穂乃香ちゃんのほうがいいのかしらねえ」

 お母さんはそう小さくつぶやくと、お茶をすすった。

「穂乃香離れするんじゃなかったのかよ」

 司君もぼそっとそんなことをつぶやいた。


 夕飯が終わり片づけものも済み、私は2階に上がった。守君はちょっとの間、司君とリビングでゲームをしていた。ほっぽらかしすぎたかな、と司君は独り言を言いながら、夕飯のあとリビングに行った。やっぱり、守君のことも司君は、気にかけているんだな。リビングからは久しぶりに、守君の大笑いをする声が聞こえてきた。


 2階に上がり、部屋で机に向かって宿題を始めた。といっても、司君のプリントを丸写しにするだけだけど。そこへ、司君が入ってきた。

「穂乃香」

 ちょこっと顔をだし、私が机に向かっているのを見ると、

「あ、邪魔?」

と聞いてきた。


「ううん、もうすぐ終わる」

「…今日は俺、こっちに寝ようかな」

 司君はそう言いながら部屋に入ってきた。うわ~~い。嬉しいかも!


「数学?」

「うん。もうすぐ写し終わる」

「あれ?写しただけ?一応どんな問題か見てみたら?」

「う、うん。でも、時間ないし」


「…」

 あれれ?なんでムギュって抱きしめてきたんだ?

「こっちでしたら?」

 司君はマットの上のテーブルを指差した。さっき、司君の部屋から持って来て、そのまま私の部屋に置いてあった。


「うん」

 私は椅子から立ち上がり移動した。すると司君は私の後ろに座り、後ろから抱きしめてきた。

「じゃ、1問めから」

「へ?」


「写すだけじゃなくって、問題も解こうよ」

「……」

 今から勉強か~~。早くに終わらせて、司君といちゃつきたかったのにな。

「チュ」

 あ!司君、うなじにキスした。うわわ。ドキンってしちゃった。


 あ、そっか。もうすでに、いちゃついているのか、これって。司君、思い切り私を抱きしめているし。


「つ、司君」

「ん?」

「あの…」

 胸は触られると、さすがに勉強できないよ~~~。そう思い、司君の手を私の胸から外した。

「駄目?」


「うん、勉強に集中できなくなる」

「抱きしめているのも駄目?」

「ううん、それは平気…」

 ギュ…。司君がまた私を抱きしめた。うわ!そのたびドキッて胸がときめいちゃうよ。


「1問目、解けた?」

「え?まだまだ」

 全然集中してなかったよ。


 それから、ドキドキしながらも私は数学の問題を解いた。わからないところは、司君がまた丁寧に説明してくれた。

「終わった。ありがとう、司君」

「どういたしまして」


「明日から部活だよね?司君」

「穂乃香も?」

「うん。美術部もだよ」

「……10時半かあ」

 司君は時計を見てそう言った。


「まだ、時間あるね、穂乃香」

「……」

 なんの?とはさすがに聞けないよなあ。


「さ、テーブル俺の部屋に持って行くよ」

 司君はそう言って立ち上がり、テーブルを片づけに行った。私はその間に布団を敷きだした。

 こっちで寝てくれるんだよね。だから、二つ敷く?それとも、一つ?一つなら同じ布団で寝れるかなあ。


 そんなことを考えていて、布団は一つだけ敷くことにした。すると、

「あれ?」

と私の部屋に来た司君が、ちょっとがっかりした顔をしている。


「……俺、こっちで寝たら駄目?」

「ううん」

「じゃあ、もう一つ布団」

「敷いちゃうの?」


「え?」

 私は何気に司君にぴったりと寄り添い、

「一緒の布団で寝たら駄目かなあ」

と小声で言ってみた。


「あ、そう言うことか…」

 司君はそう言うと、グイッと私を抱きしめてきた。

「穂乃香、可愛いよね」

と言いながら。


 ドキン!司君の言葉に、いまだに胸がときめいてしまう。そして、司君の熱いキスで、体中から力が抜けていく。

 

 今日も私は司君に、いっぱい抱きついた。司君の髪も撫でた。私からキスもしていた気がする。

 なんだか、司君が愛しくって、胸がギュウって締め付けられた。


 司君の腕枕も嬉しかった。

「穂乃香」

「え?」

「…愛してるよ」

 ドキン!


「わ、私も…」

「……穂乃香は?」

「だ、だから私も…」

 私はそう言って、司君の胸に顔をうずめた。はあ…。めちゃくちゃ幸せだ。


 司君はそのうちに、すうって寝息を立てて寝てしまった。そんな司君の顔を、まじまじと私は見た。

 眉毛も好き、目も…。まつ毛はまっすぐに前に向かって生えているのね。


 あごのラインも好きだなあ。それから耳の形まで好きかもしれない。

 ああ、やばい!全部が大好きって思えてくる。ほくろまでが好きだって思えてきちゃうよ!


 そっと司君の手を掴み、指を絡ませてみた。司君の掌、まだまめがある。

 あ~~~。こうやって、指を絡ませるの、なんだか安心する。

 私って、どうしてこんなに司君が好きなのかなあ…。なんて、つい思っちゃったりして。それくらい好きだよなあ。


 はあ…。幸せのため息をついて、私はまた司君の胸に顔をうづめた。そして、眠りについた。


 ピピピピ…。司君の時計のアラームの音。そして司君が布団から腕をにゅとだし、アラームを止める。それから私に、

「おはよう」

と言ってくる。


 私はいつも恥ずかしくて、布団に顔を半分かくして、

「お、おはよう」

と答える。すると司君は、そんな私を見て、目を細めて優しく微笑む。ああ、その笑顔も大好きだ。


「チュ」

 司君が私のおでこにキスをした。それから抱きしめてきた。

 ああ、私、朝からすごくハッピーだ。


「このまま、司君の腕の中にいたいなあ」

「じゃ、今日さぼる?」

「…それは、司君が困るよね?」

「……まあね。今年最初の部活だからなあ」


 がっくり。でも、あと5分くらいならいいかな。そう思って私も司君に抱きついた。

 ああ、司君のぬくもり、あったかいよ~~。布団から出たくないよ~~。このままでいたいよ~~。

「穂乃香?朝から甘えてるの?」

「う…。うん、ごめんね」

「くす。あやまらなくてもいいよ。嬉しいからさ」


「…」

 そう言えば、司君も私に甘えてるって言ってたけど、絶対に私のほうが甘えてるよね。

「司君も甘えていいよ?」

「俺?甘えてるけど?」

「いつ?」


「昨日だって、後ろから抱きついていたし」

 あ、宿題している時?

「あれって、甘えてたの?」

「そうだよ」


 そうだったんだ。

「え?初めて知った?もしかして」

「う、うん」

「…俺、けっこう甘えてると思ってたんだけどな」

 そうか。そうだったのか…。


「それに…」

「え?」

「こうやって、昨日も一昨日も穂乃香を抱いた。それも、俺が甘えてるからだと思う」

「へ?」

「穂乃香は、嫌がらないでいつも受け入れてくれるけど…」


 い、嫌がるなんてそんな!だって、私だっていっぱい抱きしめたりキスもしちゃったし。

「嫌がったりなんてしないよ、私」


「うん。ありがとう」

「お、お礼言わなくてもいいよ。だって、私だって司君のぬくもりとか、すごく嬉しいし幸せなんだもん」

「ほんと?」

「え?」


「実は呆れてたりとかしていない?」

「まさか、してないよ」

「実は断るのが悪いから、それで仕方なく…とか」

「そんなふうに見えた?」

「…いや。昨日も穂乃香、積極的だったし、そうは思えなかったけど」


 う…。せ、積極的って何?もしや、私からキスしたりしたことかな。…そうだよね。

「司君の方こそ、呆れたりしていない?」

「してないよ?」

「ほんと?」


「積極的な穂乃香も、嬉しいよ?ちょっとドキってさせられるけど」

 うそ!

「ドキってしたの?」

「うん」

「いつ?」


「……いつって。穂乃香、色っぽかったりするから」

 うそ!

「私が司君をドキってさせてるの?」

「させてるよ?」

 うわ。そうなんだ。もう司君ドキドキしたりしないのかと思った。ちょっと、嬉しかったりして。


 それから、お母さんの、

「部活じゃないの~~?まだ起きないの~~~?」

という大きな声がするまで、私たちはずっと布団の中でいちゃついていた。


「起きるか…」

 司君は大きな欠伸と伸びをしてから、布団から出た。私はすかさず布団で顔を隠し、司君の裸を見ないようにした。

 いまだに、恥ずかしい。一緒にお風呂になんて、絶対に無理だろうなあ。


 司君はパンツとシャツだけを着て、自分の部屋へと戻ったようだ。

「ああ、司君の匂いが布団からする。まだ、司君の匂いに包まれていたいなあ」

 なんて、布団にしがみつこうとしたけど、時計を見て、7時15分になっているのを知り、私も慌てて布団から出て、制服になった。


 さあ、今日から部活だ。あ、でも、もう司君と学校でもよそよそしくしないでもいいんだっけね。

 それに、司君と学校まで行けるんだし。そう思いながら、1階に下りた。するとそこへ、ピンポンとチャイムの音がして、お母さんが、

「誰かしらね、こんなに早く」

とドアを開けに行き、私もお母さんも驚いてしまった。


「オハヨウ!タダイマ!アメリカカラ、戻ッテキタヨ!」

 キャロルだ…。


「穂乃香~~~!!ハッピー、ニューイヤー!」

 キャロルに思い切り抱きつかれた。

「キャロル?」

 司君も洗面所で顔を洗っていたのか、タオルで顔を拭きながら、洗面所から出てきた。


「司!ハッピー、ニューイヤー!今日カラ泊マルカラ、ヨロシクネ!」

 な、なんですと?!!!


 ああ、新年早々、またキャロルにかき回されることになるのだろうか…。ガク…。

 


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