表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/94

第86話 大胆な私?

 夕飯はお父さんも交え、楽しく過ぎた。司君は、いつもよりも言葉数が多く、ペンションでのことや、スキーのことを話していた。

「いいな、スキーしてみたい」

 守君がボソッとそう言った。


「今度行けるよ。きっと、守が行ったら、穂乃香のご両親喜ぶよ」

 司君は笑顔でそう守君に言った。

「電話、いつしたらいいかしら。いつが一番忙しくない?」

 お母さんがそう聞いてきたので、

「夜だったら10時過ぎ、午前中なら11時ころかな」

と私が答えた。


「じゃ、10時になったら電話してお礼をしておくわね、司」

「うん。頼むよ」

 司君はそうお母さんに言った。


「穂乃香、夕飯すんだらゲームしようぜ」

 守君はウキウキしながら言ってきた。

「守、穂乃香は疲れてるんだ。ゲームなら明日な」

 私が何も言う前に、司君がそう答えた。


「兄ちゃんに聞いてないよ」

「ごめんね。守君。明日ね」

 私は守君に思わず、そう言ってしまった。

「ちぇ~~~。ずっと、穂乃香が帰ってくるのを待っていたのにさ!」


 守君はすねてしまった。

「お前には彼女いるだろ?名前はなんていうんだ?」

「…教えない」

 守君はふくれっつらのまま、そう答えた。


「いいんだぞ?のろけまくっても」

 司君が面白がってそう言っている。

「の、のろけるもなにも!そんなのろけるようなこと、なんにもないからっ!」

 守君はそう言うと、席を立ってリビングに行った。


「本当に何もないみたいよ?」

 お母さんが小声でそう言ってきた。

「え?」

「デートもしていないみたいだし。守、付き合うっていってもどうしていいかわからないみたい。今度相談に乗ってあげてよ、司」


「俺が?無理だよ。俺だってわかんないよ」

「え~~~、あんたは穂乃香ちゃんと付き合ってるじゃない」

 眉をしかめた司君に、お母さんがそう言うと、

「…それは、その…。穂乃香が寛大だから付き合っていけるんであって、他の子とだったらきっと、もっと前に愛想つかされてたと思うよ?」

と、司君はポーカーフェイスのまま答えた。


「なるほど」

 お母さんは、変に納得している。

「わ、私が寛大?」

 その言葉に私はびっくりしてしまった。


「うん」

 司君はうなづいた。でも、私はその横で首を振った。

「寛大なのは司君で、私はただ、司君が大好きってだけで」

 そう口から出てから、しまったと思い黙り込んだ。なんか、すんごいことをご両親のいる前で言ってしまったよね。


「…」

 司君は耳を赤くしてうつむいた。あ、ポーカーフェイスが思い切りくずれたらしい。そして、

「穂乃香ちゃんは、本当に司が好きなんだなあ」

と言って、お父さんがわっはっはと笑った。お母さんもふふふと笑い、

「よかったわねえ、司」

と司君の背中をたたいていた。


「う…」

 司君は、何かを言い返そうとしたけど、言葉が出てこなかったらしく、

「ごちそうさま」

と言って、さっさとダイニングから廊下に抜けて行ってしまった。


 あ、また取り残された。私は慌てて、残っていたお味噌汁をすすってから、

「ごちそうさまでした」

と、食器を片づけにキッチンに行った。

「穂乃香ちゃん、後片付けはいいわよ。疲れたでしょう?もう司の部屋で休んで」

「はい」


 私はそう答え、2階に上がりながら、今お母さんが言ったことを思い返して真っ赤になった。

 お、お母さん。司の部屋で休んでって言ってなかった?!


 2階に上がり、私は躊躇した。司君の部屋、本当に直行してもいいのかな。司君、どう思うかな。でも、司君に今すぐにでも抱きつきたいような気もする。そう思い、そのまま私は司君の部屋に直行した。


 トントン。

「司君」

「穂乃香?どうぞ」

 司君が部屋の中からそう答えたので、部屋を開けると、なぜか、司君の部屋のベッドに私のパジャマや枕が置いてあった。

「あれ?これ、司君持ってきたの?」

 い、いつの間に?


「いや。部屋に入った時から、ここにあるから、母さんじゃない?」

 どへ~~~~!!それで、司の部屋で休んでって言ってたの?

「俺のベッドじゃ狭いから、穂乃香の部屋に布団敷いたほうがよくない?穂乃香」

 へ?つ、司君、お母さんがこんなお茶目なことをしても、なんとも思わないの?恥ずかしかったり、照れくさかったりしないの?


「あ。うん。えっと」

 困っていると、司君がいきなり抱きしめてきた。

「え?」

「今日は、思い切り、抱くからね?」

 どひゃ!


 ずっと長野で、司君と別々の部屋で寝ていた。時々キスしたり、抱きしめられたけど、でも、2人で抱き合ったままっていうこともなく、父の目もあって、司君も私に急接近するときが少なかったし。

 だから、こんな状況、久しぶりだからかすんごく戸惑う。胸が最高潮になるくらい、ドキドキしている。


「つ、司君」

「ん?」

「えっと」

「ん?」


 司君はすでに私をベッドに押し倒していた。そして、耳や首筋にキスをして、私の服を脱がしだしている。

「あ、あの」

「何?穂乃香。あ…、まさか、今日駄目とか?」

「………」

 司君が熱い視線で私を見ている。


「つ、司君、今、ドキドキしてる?」

「え?ううん。なんで?」

 え?!なんで?なんでって聞くの?司君は私みたいに、ドキドキしないの?こっちがなんでって聞きたい。

「ド、ドキドキしないの?」


「穂乃香、してるの?」

「うん」

「…どうして?」

「ど、どうしてって。だって、こういうのもなんだか、久しぶりで」


「うん」

「だ、だから、なんだか…」

「……くす」

 あ、笑われた。


「可愛い」

 司君はそう言って、私にキスをしてきた。それも、どんどん熱いキスに変わっていった。

 あ、あれ?

 ドキドキドキ。っていうのが、なんだかなくなってきたよ?


 っていうか、なんで私、司君のこと思い切り抱き寄せちゃったかな。それも、ぎゅうって。

「穂乃香?」

「つ、司君」

「うん」

「ギュウって、思い切り抱きしめてもらってもいい?」

「うん」


 司君もギュウって抱きしめてきた。うわ。うわあ。嬉しい。

 ギュウ。私も司君を抱きしめた。

「待って、穂乃香」

「え?」

「俺も服脱ぐから」

 ドキン。


 司君はまだ、Tシャツとスエットを着ていた。それらを脱ぐと、私の下着も脱がしてまた抱きしめてきた。

「穂乃香の肌、直に感じたかったんだ」

 うわわ!それ、私も…。

 司君の胸にこうやって抱きしめられるだけで、すんごく幸せ。


 そして…。

 司君のぬくもりを直に感じ、司君にいっぱいキスをしてもらって、私はずうっとうっとりしていた。

 幸せだ。胸がどんどん満たされている。ドキドキって高鳴っていたのに、今はそんなときめきよりも、満足感のほうがある。


 それに、私、自分でも感じている。前とは違う。違っている。どこがって…。

 それは…。

「司君」

「ん?」


「好き」

「うん」

「大好き」

「うん」


 そう言って私はさっきから、司君を抱きしめたり、司君の髪を撫でたり、自分から司君にキスしちゃったりしているんだ。

 どうしちゃったんだ。自分でもびっくりだ。司君の頬にも、おでこにも、髪にも、耳にもキスしている。

「穂乃香…くすぐったい」

 司君が首筋にキスをしたら、そう言った。


 うわわ。私、司君の首筋にキスしてたんだ。きゃ~~~。

 なんで、私、こんなに大胆になってるの?!


「穂乃香…。今日、どうしたの?」

 司君も、そう聞いてきた。ああ、司君も感じていたんだ。私が違っていることを。

「わ、わかんない。自分でも」

 そう言って私は、司君の背中に回していた腕をそっとほどいた。


 そして、自分の体の横に腕を伸ばした。まっすぐに伸ばし、目を閉じた。まな板の鯉状態のように。これがいつもの私だ。

 ううん。前だったら、恥ずかしくなると、体をねじったり、胸を手で隠したりしてた。


 司君が私の胸元にキスをしてきた。キュキュン!キュキュキュキュ~~~~ン!!!

 あ、あれ?なんでまた、私、司君の髪、撫でちゃってるのかな。でも、愛しくって。

「つ、司君」

「ん?」

 司君が顔をあげて私を見た。


 ああ、司君の目、優しい。

 あ、あれれ?私、なんで司君の両頬を持って、私の顔に近づけているのかな。でも、止まんない。

 そして、私からキスをしていた。


 やばい~~~~~~~~~。

 司君がめちゃくちゃ、愛しい~~~~~~~~。

 愛しくって、愛しくって、胸から熱い想いが溢れちゃって、溢れちゃって、止まんないよ~~~~~~。


「穂乃香?」

 唇を離すと、司君がまた、聞いてきた。

「やっぱり、今日の穂乃香、なんだか大胆…」

 う…。そうは言われても。


「い、嫌?」

「嫌じゃない。ただ、ちょっとびっくりしてる」

「だ、ダメ?」

「駄目じゃないよ?う…、嬉しいよ?」

 司君が顔を赤くしてそう言った。


 ほんと?本当に?こんな私に呆れたりしない?ドン引きしていない?ほんと?じゃ、じゃあ、もっと大胆になっても大丈夫?なんて聞けない。でも。

 でも、でも、でも、でも!


 ギュ!私はまた、司君の首筋に両腕を回した。そして司君の顔を私に近づかせ、キスをしていた。

 私だって、自分が変だってわかってる。うん、わかっているけど…。だけど…。


 司君が愛しすぎちゃうよ~~~~~~~~~!!!!


 何回も私からキスをした。私から司君を抱きしめた。何回も、好きって言ったような気がする。

 司君の髪を撫でた。司君の目を熱い目で見ちゃった。司君の指に自分から指を絡めた。

 こんな自分に、びっくりだ。


 司君は、私の枕をどかして、私に腕枕をしてくれた。そして私が司君の胸に顔をうずめると、

「穂乃香、どうしちゃったの?」

と聞いてきた。

 う…。どうしちゃったのって聞かれても。


「わかんないよ」

 私はそう言った後、なんだか恥ずかしくなって、もっと顔を司君の胸にくっつけた。

「くすぐったいよ、穂乃香。まさか、俺の胸にキスしてるの?」

「違うよ!」

 そんなことしてないよ~~~~。


「なんだか、今頃になって恥ずかしくなってきただけだもん」

「え?」

「……」

 黙っていると、司君は私の髪を撫でた。


「俺、ちょっとびっくりしたけど、でも…」

「うん」

「………嬉しかったよ?」

「ほんと?」

「うん」


「本当に?でも、変だって思ったよね?今日の私」

「いつもと違うなって思ったけど、変だなんて思ってないよ?」

「…」

 私は黙って、まだ司君の胸に顔をうずめたままでいた。


「穂乃香」

「うん」

「本当に変だなんて思っていないから、いいよ」

「え?」


「もっと大胆になっても全然大丈夫」

「え?!」

 何言ってるの?司君。

「だ、大胆になんてならないよ」

「なってたよ?」


「こ、これ以上はならないから」

「本当に?」

「ほんと!」

「あはは。残念だな」

 もう~~。また、からかったんだ。


「あれかな。もしかすると、何日も俺に抱かれていなかったから、禁断症状出たのかな。あ…」

「な、なに?」

「欲求不満だったとか?」

「ち、違うよ~~~~!!」


 う。違うとは言えないかも。もしかすると、もしかしてそうかも。でも、そんなこと言えないし。司君はくすくす笑っているし。

「俺は欲求不満になってたよ?ずっと我慢していたんだから」

「え?」


「穂乃香を押し倒したくって、何回もうずうずした」

 ええ?いつ?

「だから…」

 司君はそう言うと、また私の上に覆いかぶさってきた。


「司君?」

「もう一回…ね?」

「……」

 私がまだ、何も答えていないうちから、司君は熱いキスをしてきた。


 うわわわ。やばいっ!!

 嬉しがっている自分に、自分でびっくりしているよ~~~。


 やっぱり、私、欲求不満だったのかな…。 

 そして、司君のぬくもりに包まれ、その日は裸のまま抱き合って寝てしまった。


 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ