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第25話 本音トーク

 その日の夕飯は、お父さんが残業らしく、早めに4人で食べだした。

 それにしても、いつもよく話す守君が、今日はやけに静かだ。そんなに、明日のキャロルさんの訪問が、嫌なのかな。


「キャロルって、何時に来るの?」

 守君がようやく口を開いた。

「昼前よ。お昼を一緒に食べる予定なの」

「夕飯までいないよね?」

「食べて行くと思うけど?」


「…」

 守君はまた、無言になった。

「俺、どっかで夕飯食ってこようかな」

「どこでよ?」

 お母さんは、ちょっとムッとした顔で守君に聞いた。


「マックとか」

「帰ってらっしゃいよ。キャロルだって守に会いたいと思うわよ?」

「まさか~~~」

 守君はすごく嫌そうな顔をして、そう言ってから私を見て、

「あ、そうだ。いいこと思いついた。穂乃香と一緒に外で夕飯食うっていうの、どう?」

とそう言ってきた。


「守と穂乃香2人でってこと?」

 司君が守君を睨みながらそう言うと、守君はちょっとその目に怖気づきながら、

「そ、そう」

とうなづいた。


「却下」

 司君が即座にそう言うと、守君はすごく小さく舌打ちをした。

「でもさ、穂乃香だって、キャロル苦手だろ?」

「お前、話していることが前と矛盾しているぞ。俺にキャロルがくっついてこないように、穂乃香に俺とべったりくっついてろ、みたいなこと言ってなかった?」


「あ、そうだった。じゃ、兄ちゃんも外で食ったら?あ、それいいじゃん。3人で外で夕飯食おうよ」

「そんなことしたら、キャロルが変に思うだろ?」

 司君は、呆れたって言う顔で守君を見ながらそう言った。

「そうよ、守。キャロルをそんなに毛嫌いしないでよ。あなたを泣かせていた頃のキャロルとは、違うんだから」

 お母さんもそう言って、守君の言うことを聞こうとはしなかった。


「だって、苦手なもんは苦手なんだもん」

 守君は小声でそう言って、ため息をついた。

 本当に守君は、はっきりとしているよね。

「泣かされたからトラウマになってるのかしらねえ」

 さすがのお母さんも、ため息をついてそう言った。


「あ~~あ。俺、穂乃香がいたら、それでいいんだ。だって、穂乃香がいると、癒されるじゃん。夕飯も楽しいし、食事だって美味しくなるしさ。でも、キャロルいると疲れるんだもん。夕飯もまずくなるし、気、使うし」

「………」

 お母さんはやれやれって顔をしたが、司君の顔は明らかに引きつった。


「言っておくけど、守、穂乃香は…」

「…なに?」

 司君の言葉に守君はキョトンとした顔をした。

「……俺と付き合ってるんだからな」


 司君がそう言うと、

「え?そんなのわかってるよ、今さら言われなくたって。だからさ~~。そのまま兄ちゃんと付き合ってたら、いつか結婚ってことになって、俺の姉ちゃんになるってことだろ?」

と守君は、しれっとそんなことを言った。

「…え?」

 ドキ~~。何を言いだすんだ、守君は。やばい。私、きっと顔赤いよ。


「穂乃香、それでずっとうちにいることになるよね?そうすると、俺、ずっと癒されちゃうじゃん」

「だから、そうなったとしたら、穂乃香は、俺の奥さんになるわけだから」

 司君はもっと眉をしかめ、そう守君に言った。


 今、奥さんって言った?俺の奥さん?!!!

「そうだよ。何言ってるの?兄ちゃん。それで、俺の姉ちゃんになるんでしょ?いいよね。そうなったら」

「…………」

 司君は、もう何も言えなくなったようだ。


「でさ~。穂乃香だったら、俺が彼女連れてきたって、結婚したって、俺の彼女になる子とも、上手くやって行けると思うんだ」

「はい?」

 守君、何を言いだしたんだ?

 司君もキョトンとして、守君を見てるよ。


「それって、いいと思わない?兄ちゃん。そういうのが俺、理想だな」

「…このませガキ。中学生の言うセリフか、それ…」

 司君は呆れたって顔をもう一回して、ご飯を黙々と食べだした。


「くすくす。そうよね。私もそうなったら、嬉しいわ。それ、いいわね、守」

 お母さんが嬉しそうにそう言うと、守君も嬉しそうに笑った。

「ま、いいけどさ」

 司君はボソッとそう言うと、お味噌汁を飲み干し、

「ご馳走様」

と言って、リビングに移動してメープルと遊びだした。


「穂乃香ちゃん。いつか、司のお嫁さんになったら、本当に娘になるのねえ。それで、守のお姉さんになって、孫が生まれたら、守はおじさんだわねえ」

「なんでいきなり、そんな話?」

 守君が、不思議そうな顔をしてお母さんを見た。私もびっくりしてしまった。ま、孫って…。気が早すぎでしょ。


「ふふ。そうしたら、この家、もっとにぎやかになるのねえ」

 お母さん、やたらとワクワクしているみたいだし。

「あのさ。気が早すぎだから、それ」

 さすがに司君もリビングで今の話を聞いていて、慌てたのか、メープルと一緒にやってきて話に加わった。


「でも、そうしたら、ずうっとこの幸せは続くんだなあって、そう思って嬉しくなっちゃって。ね、そう思わない?司も」

「……」

 わ!司君、一気に真っ赤?


「あ、兄ちゃん、顔真っ赤…」

 守君にそう言われ、司君は守君の頭をコツンとこつくと、

「うっさい」

と言って、またリビングに行ってしまった。


「ご馳走様でした」

 私は食器をキッチンに運び、洗い物を始めた。

「ふふふふ」

 お母さんもキッチンに来て、嬉しそうに何やら笑っている。


「ど、どうしたんですか?」

「司の、真っ赤になった顔が面白くって。あの子、穂乃香ちゃんと結婚することでも、想像したのかしらね」

「え?!」

「やっぱり、なんだかんだ言ったって、あの子は穂乃香ちゃんに、思い切り惚れちゃってるのよ」

「は?!」


「クス。あの子、去年の今頃、ほんと~~~~に暗かったの。女の子にふられたっていうのは、守から聞いたから知ってたけど、相当その女の子に、惚れこんでいたんだなって、お父さんも言っていたくらい、ほんと~~~~に暗かったの」

「……」

 う。なんだか、罪悪感が。


「それだけ、穂乃香ちゃんが好きで、そんな大好きだった女の子と付き合えるようになって、一緒に住めるようになって、いつも一緒にいて、そのうえ、結婚までできたら、そりゃもう、嬉しくってしょうがないわよねえ」

「そ、そんなことないです。そこまで、司君は浮かれたりしないと思います」

「あら、なんで?どうしてそう思うの?」


「だ、だって…」

 そこまで、私が司君に惚れられてるとは思いにくいっていうか、なんていうか。

「穂乃香ちゃんにも見せたかったな。去年の司を。そうしたら、納得しちゃうわよ」

「え?」

「そりゃもう、見てられないって言うくらい、司、おかしくなってたんだから」

 そんなに?!


 やっぱり、信じられないような気がするんだけど。だって、司君、落ち込んでも、無表情になるくらいで、顔に出なさそうだし。おかしくなったり、暗くなったりしそうもないんだけどなあ。


 洗い物を終え、私はキッチンを出て2階に行こうとした。するとリビングから司君も出てきて、私の後ろから階段を上ってきた。

 ドキドキ。さっき、私の部屋に来るって言ってたけど、あれは今?それとも、また私が寝てから…だったりして?


「穂乃香」

 ドキ~~~ン!

「な、なに?」

「穂乃香も、キャロルが来るの、あんまり嬉しくない?」

 あ、なんだ。キャロルさんのことか。


「う、う~~ん。キャロルさんがあんまり、司君にくっついていたら、やっぱり嫌かなあ」

「…」

 司君は黙って、私の顔に顔を近づけてきた。

 ドキン!キス?


「ただ、うちに来るだけなら大丈夫ってこと?」

「え?うん」

「そう…」

 あ、安心したような顔をして、司君、顔を離しちゃった。なんだ。キスじゃなかった。

 って、だから、なんで私はがっかりしてるんだろう。


「ここで立ち話もなんだから、その…。穂乃香の部屋、いい?」

「え?う、うん」

 ドキドキ。私は胸がどんどん早くなるのを抑えながら、ドアを開けて司君を部屋に入れた。

「やっぱり、穂乃香の匂いがするよね」

「そ、そう?」


「…守の言うこと、よくわかるよ」

「え?」

「穂乃香がいると、なんだか癒される」

「…そうかな」


「前に、八代さんも言ってたよね?なんか穂乃香の周りだけ、空気が違うような、時間の流れが違うような、そんな感じがあるって」

「とろいから?」

「違うよ。落ち着いてるんだ」

 そうかなあ。けっこう慌てたり、焦ったり、いろいろとしていると思うんだけどなあ。


「…あいつ、穂乃香に惚れちゃってるのかと思った」

「誰?」

「守」

「え~~~!まさか。きっと、お姉さんができたみたいな、そんな感じなんだと思うけどな」

「うん、そうみたいだね」


 司君は私からちょっと離れたところに、あぐらをかいて座った。なぜか、そばには来てくれなかった。

「あの本、もう返しちゃった?」

「どの本?」

「ほら、初めての日特集の」

「か、返しちゃった」


 え?どうして?読みたかったとか?

「そっか」

「な、なんで?」

 ドキドキドキ。

「いや、女の子の心情、いろいろと書かれているのかなって思ってさ」


「何かの参考にしたかった、とか?」

「う…。うん、まあ」

「でも、司君言ってたよね?男もそれぞれだし、直接自分に聞いてって」

「そうだったっけ?」

「う、うん。そんなようなこと、言ってた気がするなあ」


「…じゃ、俺も穂乃香に直で、聞いてもいいってことかな」

「え?」

 ドキドキドキ~~。何?電気のこと?それとも、何かもっと、すごいこと?

 どうしよう。ものすごいことを聞かれたら。って、ものすごいことがどんなことかも、想像つかないけど。


「女の子って」

「う、うん」

 バクバクバクバク。心臓がやばいかも。

「っていうか、穂乃香ってさ」

「うん」


 ドキドキドキドキ。

「その…。やっぱり、その」

 なんだか、言いにくそうだけど…。な、なんだろう。

「男がさ、もし、しょっちゅう、求めたりしたら、体が目当てなのかって、そんなふうに思っちゃたりするのかな」


「………へ?」

「そう思う?」

 えっと。それって、司君がもし、しょっちゅう私のことを抱きたいって言って来たら、私の体が目的なのねって、私が悲観するかどうかってこと?だよね。


「……しょうっちゅうって、どういうのがしょっちゅうか、よくわかんないけど」

 正直に聞いてみた。

「あ、そうだな。う~~ん。週…1とか?」

「……」


 う~~~ん。こういう質問にはどう答えたらいいの?全然平気って言ったら、なんだか、私がエッチが好きみたいに聞こえる?

 だから、しょっちゅうは嫌って言ったほうがいい?でも、体目当てなんて思ったりしないよって、言った方がいい?


「困る質問だった?」

 司君が、心配そうな顔をして聞いてきた。

「あ、あのね?えっと」

 頭真っ白。これはやっぱり、素直に思ったことを言ったほうがいいよね?


「えっと…。体が目当てだって、司君が思うわけないのを知ってるから、そういうことは思わないけど」

「う、うん。けど?」

「えっと…。私、あんまり、司君にほっておかれたり、冷たくされられると、不安になるから、ぎゃ、逆に、司君が近くにいてくれた方が、安心する」


「……う、うん。近くにって、今みたいにってこと?」

「……。だから、その。あんまり、ずっとなんにもしてくれないと、なんか嫌われたのかなとか、あれこれ悩んじゃうから、ほっておかれると、困る…かな」


「……そ、そうなんだ。あ、じゃ、俺、今まで悩ませたことがあるってこと…かな」

「……」

 私は黙り込んだ。

「俺、ほっておいたこと、あった…?」

「……」


「あったのかな。ってことだよね?」

「ぶ、文化祭の前、とか?」

「え?」

 司君はしばらく、考え込んだ。


「ああ、でもあれは、穂乃香、忙しそうだったし」

「うん。そうだよね。私のこと気遣ってくれてた…?ってことだよね」

 司君は、頭をぼりって掻くと、

「うん。俺、あの時も、穂乃香のこと抱きたかったけど、でも、近づいたら押し倒しそうになっていたし、だから、あんまり近づかないようにしてた」

とそう答えてくれた。


「…」

 そうなんだ。

「じゃ、俺があんまり、近づかないでいると、穂乃香は不安になる?」

「うん」


「そっか」

 司君はそう言うと、しばらく黙り込んだ。

 あ、あれ?なんで黙っちゃったのかな。

「俺、たまにだけど」

「え?」


「俺の部屋で勉強してても、やばい時があって」

「え?」

「でも、勉強に集中して、気をそらしてる」

「…」

「そういう時、もしかすると、わざと穂乃香から離れたり、冷たくしちゃってるかもしれない」


「……」

 私は黙って聞いていた。

「穂乃香、もしかして、傷ついたり、不安になったりしてた?そういう俺の態度で」

「ううん」

「ほんと?」

「うん」


 最近は、司君、優しいもん。そりゃ、キスするかと思ったらしてくれないとか、抱きしめてきたのに、ぱっと離れちゃったとか、キスのあと、押し倒されるかと思ったら、真面目に勉強始めちゃったとか、そういう時は何度もあったけど。


 そうだ。私、そんな時、

「がっかりしてたかも」

「……え?がっかり?」


 司君は私を凝視した。

「がっかりって?」

「…私、口から出てた?」

「え?がっかりって?」

「うん」


「出てたよ。しっかりと」

 きゃわ~~~~!!!!なんで、言ってるかな。独り言のように、きっとつぶやいちゃったんだ!

「いつ、がっかり?どんな俺に、がっかり?」

 司君は、何やら顔を青くして聞いてきた。


 私は恥ずかしくって、顔をあげられなくなった。でも、司君がちょっと私に近づいてきて、心配そうに私を見ているのに気が付き、これは、ちゃんと言わなくっちゃと気持ちを切り替えた。

 多分、司君にがっかりしたと、勘違いして顔を青くしてるんだよね。


「こんなこと言って、呆れるかも」

「え?いや、そんなことない」

「でも、引くかも」

「………だ、大丈夫。あ、でも、俺、ショックを受けるかな?」

「え?」


「あ、いや。大丈夫。ちゃんと聞くよ。思ってること、なんでも言って?どんな俺にがっかりしたの?」

「司君にじゃないよ。ただ、その…。き、キスしてくれるのかって期待したり、キスのあと、押し倒されちゃうのかってドキドキしてたら、そうじゃなかったりするから、私、がっかりしてたかも…って」


「………」

 あ、れ?まだ、顔、青いけど。私、なんだか変なこと言った?あ、やっぱり、引いた?引いてる?

「そ、そうだったんだ。俺、がっかりさせてたんだ」

「え?」

 あれ?なんだか、うなだれちゃったけど、どうして?


「ごめん」

 え?なんで謝るの?

「そんなふうに期待してるなんて、思っても見なかった。俺、逆に穂乃香が、嫌がったり、抵抗したり、いや、無理して受け入れようとしたりするんじゃないのかって思って、我慢してたって言うか、セーブしてたって言うか」


「…キスを?」

「うん。キスすると、止まらなくなりそうなときは…」

「…いいのに」

「え?」


「え?あ!今のも、口から出てた?」

「うん。しっかりと。いいのにって」

 うっきゃ~~~~~!!!!!!!!

 もう、絶対に口を開くのをやめよう。私はさっきから、とんでもないことを言っている気がする。


「いいの?」

「な、何が?」

「俺、セーブできなくなること、多いかもよ」

「……あ、あの」

 わあ。なんて答えたらいいの?


「………」

 司君はさっきよりも、ぐっと距離を縮めてきた。

「えっと」

 なんて答えたらいいの~~~?


「私、そんなに、その」

「うん」

「魅力的じゃないし」

「…は?」

「だから、そんなに、その」


「…」

「司君が毎回、その気になるようなことは、ないと思います」

「……」

 司君、顔、呆れてるの?それ。


「ごめん。言ってる意味がよくわかんないけど…」

「え?」

 わからなかった?なんで?

「穂乃香は…、すごく、魅力的なんだけど」


「へ?」

「俺、今もやばいし」

「え?」

 ドキドキ~~~。

「キス、してもいい?」


「……」

 コクン。私はうなづいた。

 司君は長いキスをしてきた。ドキドキドキ。ああ、胸が高鳴っていく。


「布団、敷いていい?」

 唇を離すと、司君が聞いてきた。

「うん」

 そう言うと、司君は立ち上がり、布団を敷いた。それから、

「ちょっと待っててね」

と言って、部屋を出て行った。何かな?と思っていたら、すぐに戻ってきた。


 あ、そっか。取りに戻っていたんだ。何かを枕の下にいれたもん。

 そして…。

 司君は電気を消すと、私を布団の上に寝かせた。



 私、わかってしまった。街燈のちょっとの明かりに映し出される司君の顔。色っぽいんだ。

 ドキドキドキ。それから、司君の腕やお腹、胸の筋肉が、たくましくってドキドキする。

 キュキュキュン!


 抱きしめられると、胸がキュンってする。

 やっぱり、私、司君にキスしてもらうのも、抱きしめてもらうのも好きみたい。

 だから、何もしてくれないと、がっかりしちゃうんだ。だって、今日もすごく嬉しくって…。


 ああ、こんなこと言って、司君は引かない?

「あ、あのね」

 って、また私の悪い癖だ。よせばいいのに、言ってしまう。でも、口から勝手に出てしまう。


「ん?」

 腕枕をしてくれた司君が、あまりにも優しいから、だからきっと、甘えたくなって言っちゃうんだよね。

「私、司君のこと大好きで」

「う、うん」

 あ、司君、照れた?


「だから、本当に…その…」

「うん」

 司君は優しく、私の言葉を待っていてくれる。

「司君、そんなに我慢したり、セーブしないでも、いいよ?」


「………」

 司君は顔をあげ、私の顔を見つめてきた。そしておでこにキスをすると、

「穂乃香って、やっぱり、すごいね」

とつぶやいた。

 何がどうすごいのか、私にはやっぱりわからなかった。


 でも、キョトンとした顔をしていると、司君は目を細め、

「もしかして、それだけ俺って、穂乃香に愛されちゃってる?」

と聞いてきた。

 ドキン。う、そうなんだ。それだけ、私はもしかすると、司君のことが大好きになっちゃってるんだ。


「うん」

 私がうなづくと司君は、はにかんだ可愛い笑顔を見せてから、私の鼻にキスをした。

「じゃ、俺は、すごくすごく幸せ者だね」

「……」

 そういう司君が可愛い。でも、それって、私もそれだけ、司君に愛されちゃってるってことかなあ。

 

 そう司君に聞くと、

「うん。俺、ものすごく穂乃香のこと愛しちゃってるよ」

とさらっと司君は言ってのけた。きゃ~~~~!!!!!

 愛してるの言葉に、私は顔から火が出て、しばらく司君の胸に顔をうずめ、顔をあげることもできなかった。



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