98.
「やっとピアちゃんにも俺の魅力が」
何だかわけの解らない事を言い出したぞ、この男。
予想していた反応と、少し違うのが不安だ。
「昨日会ったばかりですがね。それに魅力とかには興味ないです。貴方の名前と偽名にしか、関心ないですから」
本当に、それしか興味無いです。
残念ながら。
「ええ~、今までこんなに主張してたのに。俺お得だよ?」
いやいや、安くても高くてもただでも、手に入れるとか無いですから。
「今なら名前だけでなく、経歴・家族歴なんでも喋っちゃうよ?」
話すな、そんな物。
一体何を安売りし始めた、この男。
「簡単に開示されてしまう情報ほど、いらないものはありません」
それに、ただより怖い情報なんてないよ。
すぐ手に入るものって、大抵どうでもいいし利用したらしたで後始末が大変だし、全て込々で利用する分には一向に構わないんだけど、それを選別する為の情報収集って意外と面倒な事多いし、お金もかかるし、人手だっていつも足りないし、予算削られるし、争い起きるし、いつのまにか巻き込まれて何故か謝りに行かされるし。
何の話だっけ。
「それは、俺をじっくりまったり攻略したいという、意思表示なのかな?」
なぜそうなる。
いや、そこで顔近づけるな。
てか、近いわ!
頭の思考回路どうなってるよ、この男。
「私はあっさり迅速にサクッと、貴方の本名と偽名の名付け親だけを知りたいのですが?」
だから、近いって。
思わず顔が引きつる。
「つれないねぇ」
溜息をつかれた。
いや、私がつきたいよ。
「いやー、餌も場も無いですから、つれるわけがありませんよ」
いや、もう、まったく本当に。
「じゃあ、両方揃ったら、何でも言う事聞いてくれる?」
何でもって、子供かあんたは。
そんなに世の中甘くないよ。
「対価に見合いませんね」
全くね。
「1日だけピアちゃんの時間をちょうだいよ」
1日だ?
訓練あるから、まず物理的に時間取れないから。
「瞬き分にしかなりません」
「じゃあ半日」
それでも長い。
「ふた呼吸分だけだったらいいです」
「1ウェジェ」
まだまだ。
「回りくどいですね、何をさせたいのですか?場合によっては、息を止めるくらいは考えてもいいですよ?」
あ、これ、何だかいい考えかもしれない。
ふふふ。
「じ、情報は大事だよ?頷くまでは言えないな」
ちっ。
「どの口が言うんです。明かせないのなら乗れません。交渉は決裂です」
はい、茶番は終わり終わり。
「我慢しちゃって。両方、ほしいくせに」
なっ。
いちいち言い方が嫌らしい。
それにまた顔近い。
「ああ、判った。まったく、意外と頑固だね。餌と場の対価は昨日もらったから、いいよ。教えてあげる」
昨日?
「いや、癖になりそうだね」
わざと自分の唇に触れる、ヨモルォスカ。
「くっ、払いすぎた」
何か負けた。
てか、近いって。
一部読みづらい場所がありますが、仕様です。
琉生のストレスが心配