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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
自称現実主義者の初任務
92/228

92.

仕方がない。

相手の舞台に立つしか、前へは進めないようだ。

この異世界で、あの名を聞いたことが非常に気持ち悪い。

私は今まで、ここでの生活は完全に地球から切り離して考えていた。

何のしがらみ(過去)もない、流れるままの私でいられる特殊な場所。

日本でも比較的それに近い生活ができていたが、何だかんだいってしがらみ(過去)との縁は切れないものだった。

なので、ここでの生活も悪くないと思い始めたところに、よりによってこのしがらみの象徴とも言える名を耳にするとは……

「ピアちゃん?」

ヨモルォスカが私に呼びかける。

はっとして顔を上げる。

「いや、なんでもない」

軽く首を振って、答える。

「うん、いや攻撃に関しては俺は別にいいんだけど、ゴー」

その時、バンサーが体を起こす気配がした。

すかさず、2人とも体をそちらに向ける。

「ヨモルォスカ、一体」

ヨモルォスカが素早くバンサーの元に走り寄り、皆を言わせず拘束した。

私が手に持っていたロープをバンサーの手首にさっと巻きつけ固定する。

「な、ヨモルォスカ放せ!」

暴れるバンサーにバランスを崩しかけた私だったが、ヨモルォスカが片手で支えてくれた。

何とか転倒を免れる。

再度、手首にゆるみが無いか確認し、大丈夫だと判断しバンサーの手を放す。

「手際がいいな」

ヨモルォスカが感心した風に言う。

ちらっとヨモルォスカに視線を合わせるが、私は何も答えなかった。

「ヨモルォスカ、裏切ったな」

激昂するバンサーに、薄ら笑いを浮かべるヨモルォスカ。

「いやだな、俺は初めから裏切っちゃいませんよ、初めからね」

ニヤリと笑いながら、バンサーに言い放つ。

「ヨモルォスカ、きさ」

それに対してバンサーが怒りを覚え、何かを言おうとしているが話が進まないので遮る。

「そろそろいいだろうか」

言葉を遮った事で、私の存在に気づいたバンサーは、それ以上言葉を紡ぐ事が出来ず口をパクパクしていた。

「先程の話の続きをしよう。なぜあの言葉を知っていた?」

「話すと思うか?」

私の問いに、バンサーが反抗する。

「ピアちゃん、多分そいつが情報屋だからだよ。ここ最近集まってくる噂の中に、ちらほら混じっている単語だったからさ」

ヨモルォスカが、黙り込んだバンサーの代わりに答える。

そう言えば、バンサーの側近をしてたんだっけ。

「いつからだ」

ヨモルォスカに問う。

「ここ2ヶ月か3ヵ月位前かな?」

ちょうどここへ来た位の時期か。

この世界へ来たのは、私の意思でもなければ、他人からの命令でもない。

ならばどうやって、私の存在を知ったのか?

何が目的なのか?

「それで?バンサー。その情報を一体どこに売るつもりだったんだ?」

バンサーが目を見開く。

「それは、無いから安心しなよ」

どさりと言う音が、牢屋に響いた。

不覚を取った。

気配を感じられなかった。

後ろを取られた上に、気絶させられるなんて。

くっ意識が保てない。

そうして、目の前が闇色に染まった。

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