90.
ほんの少しバトルシーンあります。
残酷な表現はなるべく避けましたが。
あの後、相当疲れていたのか結局眠ってしまい、今目が覚めた。
相変わらずここは薄暗く、朝なのか夜なのか判らない状況だ。
まだあれから2時間しか経ってないとか言われたら、悪夢だ。
暇すぎて。
隠し持ってきた、時計で時間を確認した。
なるべく見ないようにしていたが、こういう時は助かる。
6時前だった。
良かった、朝だ。
あー、何しようか。
とか考えていると、なんだか周りがざわざわし始めた。
足音から、4人が降りて来たようだ。
話し声が聞こえる。
「牢屋にいるものを運ぶぞ。再確認をしておく。連れ出すのは男4人と女3人の全員だ」
男がそう言うや否や、あちらこちらの牢屋から泣き声が聞こえ始める。
鍵を空ける音が響き始めると、更にすすり泣きと抵抗する声が加わり、ここ一帯はカオスな音響空間へと様変わりをした。
私は念のために、解いたロープを手首に巻き直し、縛られている振りをして男が来るのを待ち受けた。
「女が1人多いぞ。どうするんだ?」
近づいてきた男が、私を見て困惑気味に言う。
「何!?何も聞いていないぞ」
リーダー格と思われる男の驚いた声が、辺りに響く。
「まぁ、いい。連れて行け」
どうやら、私は連れて行かれるらしい。
入ってきた男に腕をとられ、無理やり立たされる。
「待て」
突然声をかけられ、男が振り向く。
驚きが腕から伝わった。
まぁ、これが漫画かなんかだと正義の味方がさっそうと登場するシーンだが、残念ながら現れたのはバンサーという交渉役だった。
「そいつは構わん。他の者を連れて行け」
「よろしいので?」
確認する男。
「ああ」
軽くうなずくバンサー。
そのやり取りを聞いた他の男たちは、せっせと残りの囚人を連れて行った。
先程の不協和音がやみ、急に静かになる。
耳が痛いほどの沈黙とは、こういう事を言うのだろうか。
それとも、私の緊張感がそうさせるのだろうか。
バンサーという男が、ゆっくりと私に近づいてくる。
その挙動を、私は見逃さなかった。
ロープを持つ手に力が入る。
外面は怯えた風を装いながら。
「そう怯えなくてもいい」
じりじりと、バンサーが壁際に近づく。
「商品に手を出すほど、落ちぶれてはいない」
なお近づくバンサー。
「なに、私が欲しいのは情報でね。ゴースト」
考えるより先に体が動いていた。
相手の足を払い、バランスを崩した所をすかさず腕を取りうつぶせ状態にする。
馬乗りに背に乗り、そのままロープで奴の首を絞める。
「かはっ、や……やはり、鍵はおま……か」
喘ぎながら話すバンサー。
「なにを知っている」
私が問うと、喘ぎながらも答える。
「……にも知らない」
さらに締め上げる。
「ほ、本当だ」
嘘ではないようだ。
何かを知っていれば、こんなに簡単に組み伏せられる事は無いだろう。
少なくとも、私に対して警戒をしていたはずだ。
ただ気になるのは、私自身をゴーストと呼んだのか、ただの単語として呼んだのかという事。
何を聞いた?
なぜ知っている?
「話せ」
相手の髪を掴み、顔を床に打ち付ける。
「な、縄を。は、外してくれ」
「首からがいいか?背中からがいいか?」
背中に膝を立て力を込め、持っていた縄で首を締め上げる。
えびぞりになった体を必死に揺らし、抵抗するバンサー。
バンサーが何か言いかけたその時、一人の足音が聞こえる。
「バンサー様、ほうこ」
咄嗟に、バンサーの首に手刀をあて気絶させ、向かってきた男に攻撃を仕掛けてやめた。
ヨモルォスカだったからだ。
「なに?何で倒れてんの?」
警戒を解かず相対する。
正直この男が敵か味方か、判らない状況になってしまった。
こいつは味方なのか?
すみません、結局避けたかった方向に話が進みそうです。
サブキャラの制御まで追い付かなかった。
おそらくこれからあれ?
という違和を感じるシーンがちょくちょく出るかもしれません。
周りのキャラと一緒にあれ?って思って下さい。
と、不整合の言い訳を言ってみる。
あー絶対見放される。
解ってて、進む私をお赦し下さい。