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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
自称現実主義者の初任務
85/228

85.

扉が開くと、先ほどの男と交渉役が入って来た。

「やぁ、久しぶりだね」

交渉役が、両手を広げながら鷹揚に挨拶をした。

どうやら、ユメノシュコーさんとは会った事がある様だ。

「長らくご無沙汰してしまい、すみません」

「いやいや構わないんだよ。前回はお互い、いい取引だったと思うしね」

交渉役が、ニヤニヤ笑いをしながら言う。

「ええ、私もそう思います」

ユメノシュコーさんも、にやりと笑い返し返事をした。

「そういえば、母上は元気かね?」

「ええ、元気すぎて困る位ですよ。この間なんか小さな虫が出たと大騒ぎして、結局殺したんですが、後になって虫じゃない事が判ったんですよ」

大袈裟な仕草で言う、ユメノシュコーさん。

先程までの態度と、一変している。

役者だ。

「ほぉ、何だったのかね」

交渉役はあごに手をやりながら、少し考える素振りをした。

「実は叔父だったんです」

ユメノシュコーさんが、一瞬だけちらと私の方を見て言った。

交渉役も、ちらりとこちらを見る。

「くっくっ。それはまた。ますます精力的な感じだな。そのまま健勝でいてくれたら、こちらも嬉しいよ」

大きくな体を揺らしながら、心底おかしそうに笑う交渉役。

「そう母に伝えておきますよ」

にこりと笑む、ユメノシュコーさん。

どうやら、相手の気を引く事には成功したらしい。

「ふむ、ではそろそろ本題に入ろうか」

交渉役が、一転して真面目な顔をする。

獲物を狙うハイエナの様だ。

「そうですね」

ユメノシュコーさんがひとつ頷き、話し出す。

「もう既にお気づきの事とは思いますが、実は次回のショアイアに私どもも参加をさせて頂きたい、と思いまして」

ショアイアは、確か闇オークションの事だと資料に書いてあったな。

「ふむ」

続きを促す、交渉役。

「で、もちろん、ただでとは申しません。土産もこの通り持参いたしました」

ユメノシュコーさんが、こちらに笑顔で振り向く。

嫌そうな顔をしたら、一瞬傷ついたみたいな目になった。

ちょっと待って、違うから演技だから。

「ほぉ。これはまた」

交渉役と案内役が、こっちをじっとりとした目で見る。

今度は本気で、嫌そうな顔をした。

自然に出来た。

「ちょうど没落した貴族がおりましてねぇ。食うに困っていた所を、お助けしたのですよ」

「ははは、それは良い事をなされましたな」

交渉役が、にやけ気味に言う。

「何を!」

私が声を上げれば、隣の隊員に口を塞がれる。

なおも言い募ろうとしたら、羽交い絞めにされた。

振りほどこうと、頑張るふりをする。

「なかなか、活きが宜しいですな。なるほど、解りました。ジオレガ商会には、前回の件もありますし。それに貴方は運がいい。ちょうど次回に空きが出ましてな、その枠に滑り込ませましょう」

「おお、それでは?」

交渉役が頷く。

「ヨモルォスカ、紹介状を持ってきてくれ」

「かしこまりました、一度失礼します」

ヨモルォスカとやらが、礼とともに出口に向かう。

その際に、目が合いニヤリと笑われた。

「それで、その娘の詳細をきいてもいいかね?」

「はい、ピアクィカ=ウェイ=グアオイエ=グ-リルクェン。グアオイエ=グ-リルクェンの次女です」

待ってましたな感じで、ユメノシュコーさんが説明をこなす。

「元グアオイエだったな。確か何かの研究に明け暮れているという、変り種の」

「良くご存知で」

「なるほど、あれでは確かに食うに困るだろう。やはり没落したか」

ユメノシュコーさんが頷く。

「元貴族か。悪くない。今、紹介状を用意させている。明日の夜、その紹介状に書かれた場所まで来てくれ。連絡員にそれを渡す際、明るい月と言ってくれればいい」

ちょうどいい所で、紹介状を持ったヨモルォスカが入ってくる。

その紹介状に、サインを入れる交渉役。

「これでいいか?」

「お手を煩わせて、すみません」

サインを確認した後、ユメノシュコーさんは礼を言う。

「いや、構わんよ。ジオレガ商会なら、何時でも歓迎だ」

鷹揚に笑い、頷く交渉役。

「これからも、良しなに」

ユメノシュコーさんは、紹介状を懐に入れると立ち上がり、その交渉役とがっちり握手を交わした。

「それでは我々はこれで」

「あぁ、ヨモルォスカ、彼らにお見送りを」

交渉役がヨモルォスカに指示を出す。

案内役のヨモルォスカが、肩をひょいと上げる仕草をしながら短く返事をし、ユメノシュコーさん達を外に促す。

それに従うように、隊員達が続く。

去り際、隣の隊員には肩を叩かれ、もう一人が背中をこっそり叩いて行った。

ユメノシュコーさんは、一瞬だけ私と目を合わせエールを送ってくる。

大丈夫、私には終わった後の楽しみ()が待ってますから!

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