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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
自称現実主義者の初任務
84/228

84.

「ジョイロナ隊長そろそろです」

御者をしている隊員その1が、中にいるユメノシュコーさんに声をかける。

ジョイロナっていうんだ。

ファーストネームだろうか?

「ゆるめに縛るから。痛かったりきつかったりしたら言ってくれ」

ユメノシュコーさんがどこからか縄を取り出し、私の手首に縄をかける。

もちろん後ろに手が回っている。

「分かりました」

「少し不自由だが我慢しろよ。後、乱暴に扱うから、事前に言っておく」

「了解しました」

馬車が止まり、隊員その2が門番に何かを伝えると、門が開きそのまま中に入った。

しばらくすると、馬車が完全に停止し馬車の扉が開く。

先にユメノシュコーさんが下りると強引に私の腕を引っ張り、無理やり下ろす。

嫌がる振りをしつつ、馬車から降りると、そのまま目的地であろう一軒の屋敷に連行される。

ユメノシュコーさんの他に、御者をしていた他の隊員たち2名もその後に続く。

正面には屋敷の入り口があり、その付近に哨戒がいる。

5名。

門のところに2名。

案内役が、屋敷に入る前に1人づつ身体チェックをする。

私に対してやたら執拗にチェックが行われた。

てかなんで態々後ろ回って、体密着させてするのよ。

意味不明。

わき腹とか、色んな意味でそこやばいから。

ヤバい……

ヤバ……

や……

泣きそう。

全て終わったら、絶対一発殴ってやる。

顔覚えたからな。

「その位にしたらどうだ」

ユメノシュコーさんが、どすを効かせて言った。

何気に迫力あった。

一通り私の身体チェックが終わると、隊員2名がほっとしていた。

そりゃそうだ、男だとバレたら終わりだし。

「さっさと案内しろ」

イラつく態度を隠そうともせず、ユメノシュコーさんが言う。

チェックをした男は、肩を軽くすくめしぶしぶ案内し始めた。

すれ違いの時に見せた、ニヤケ顔にむかむかする。

絶対殴ってやるから。

館の中に案内されて入ると、意外と品のいい内装だった。

いや、ステレオタイプと言うかなんというか、金ぴか成金趣味かと。

私の頭は単純ですね。

はい。

2階へと続く階段を上がり、応接室だと思われる場所へ通された。

入って正面のソファに、ユメノシュコーさんが遠慮なく座る。

その後ろに隊員2名が待機。

私はその内の1人の隊員に、腕を掴まれたまま立っている。

案内役が一度席を外す旨を言いってこの部屋を出て行くと、腕を掴んでいた隊員が一旦離してくれた。

「第一段階突破かな?」

ユメノシュコーさんがそう言うと、他の隊員も頷く。

「だが、さっきのアレ見て思ったが、これはバレる心配はなさそうだな。というか、レイだったか、そのあまり役に入らなくてもいいと思うぞ」

隊員その1が言う。

さっきのアレというのは、ボディーチェックの事か。

いや、役どころか素です。

「ああ、俺もそう思う」

隊員その2も同意する。

「まぁ、その、なんだ。女装が板に付きすぎて、男に襲われない様にしろよって事だ」

ユメノシュコーさんがまとめる。

女装が板に……

生まれて三十うん歳、未だに板に付いていないとか、くそ、団長め。

「何だか心に傷が残りそうだ……」

思わず呟いてしまったら、3人に同情されてしまった。

「うん、まぁ、そのなんだ。がんばれ」

励まされてしまった。

「あの、作戦に影響出ないように大人しくしていますので」

安心して下さいと伝えたら、三者三様の表情が返ってきた。

「ま、まぁ、ともかくだ。気持ち引き締めるぞ、お前ら」

「了解」

ユメノシュコーさんの声かけに、私たち3人が答えた。

耳を澄ますと、2人分の足音が扉の外からかすかに聞こえて来る。

おそらく先ほどの男と、今回交渉を担当する者の分だろう。

再び腕を掴まれて、役のスイッチが入った。

私はピアクィカ=ウェイ=グアオイエ=グ-リルクェン。

没落した元貴族の次女。

気付いたら浚われ、これから自分が売られる事に絶望している。

控え目で大人しいが、なけなしのプライドもある23歳。

誰がなんと言おうと、23歳。

ええ。





さぁ、いよいよ舞台が始まる。

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