81.
取り敢えず酒。
で頭がいっぱいになった所で、そろそろ行く事を副団長に伝える。
「一応アイオンに資料等を渡している。必要なら見てもらって構わない。1ウェジェ後に主要隊員を集めての最終調整に入る」
「了解です」
「ルイ、本当に巻き込んですまない」
副団長が改めて謝る。
「もう何度も聞きましたよ。そう思うなら、いいお酒奢って下さい」
「……分かった」
腑に落ちなさそうな表情だが、私は言質を得たので上機嫌だ。
思わず任務後の飲み会に思いを馳せる。
エウェジーク、アナエイ、何でも来い。
「では、失礼します」
そう言い、部屋を出て行く。
外に出るとヴォイドとアイオン先輩が廊下で待っていた。
「おう、遅かったな」
アイオン先輩が声をかけてきた。
「お待たせしてしまいすみません。副団長から今回の任務内容の説明を受けていました」
「そうか、1時間後にブリーフィングが行われるからな。他何か質問あったら受け付けるぞ」
ブリーフィングかぁ。
うーん。
まぁ、取り敢えずそれまでに何とか状況を把握するか。
「あ、その事ですが、副団長より資料の閲覧許可が下りたので、見せていただいても?」
「ああ、そっちを見る方が早いか。用意するよ。下の説明室が今空きだから、そこで見るか?」
「はい、よろしくお願いします。ちなみに作戦会議室ってどこですか?」
アイオン先輩によるとどうやら、副団長室の階の一番端にある様だ。
先輩が手でその方向を指し示す。
あそこか。
「資料を見終わったら、ブ……えーと、ヴォイドに案内してもらえ。俺は、準備があるから、作戦会議室に先に行ってる」
「ああ、お忙しい所すみません」
と私は頭を下げた。
「いや、構わない。それより他何も質問とかないか?」
「いえ、資料が見られるのなら何とか」
「そうか、なら下の説明室、この間入団説明会があった場所あるだろう?そこに居てくれ。空いてるから。すぐに準備して持って行く」
そう言って、アイオン先輩が去って行った。
階下の説明室に入ると、当たり前だが誰もいなかった。
どうやら、この間の説明会の時のままのようだ。
椅子がそのまま残っている。
「ルイは……」
中に入ってすぐに、今日はやたらと口が重いヴォイドが、話し出す。
「ルイは、本当にするつもりですか?」
何かを堪える様な顔をする、ヴォイド。
「まぁ、覚悟決めたしね」
と私が答えると、必死な表情になる。
「俺が……いえ他の誰かが反対したとしてもですか?」
「気持ちは嬉しいけど、どうやら決定は覆らないそうだよ」
何しろ副団長でも、駄目だったみたいだし。
「しか……」
ヴォイドが続けて何かを言おうとした所で、先輩が勢いよく入ってくる。
仕事早いな、先輩。
私はそこらにあった椅子を机代わりにする為、適当に整えた。
整え終わると、先輩が資料を置き、分類をし始める。
「こっちが元締めの情報関連。で、こっちが闇競り関連。こっちが参加者関連の情報だな。レイが特に見ておいた方がいいのは、こっち。化けてもらう相手の生い立ち関連だ」
こちらが把握したのが判ったのか、満足げに頷く。
「 1時間後になったら、作戦室まで来てくれ。じゃ、俺は準備があるからそろそろ行くわ 」
「あ、はい。ありがとうございました」
アイオン先輩が去った後、部屋に沈黙が落ちる。
その沈黙を破ったのは、ヴォイドだ。
「今回、俺はこの作戦から外されました。なので、作戦がどういった物なのか判らない。だが、作戦中は恐らくルイ一人になります。誰も守れない。それでもやると?」
コクリと頷く。
一度決めたことは、やり遂げますよ。
「俺が何を言っても、ダメなのだろうな。俺は……俺はルイのこ」
ヴォイドが何かを言おうとした所で、ばたんと扉が開く。
「ヴォイド、悪い、今すぐ来てくれないか?悪いなレイ、ヴォイド借りるぞ。1時間後にこいつ返すから」
アイオン先輩が入るやいなや、ヴォイドを連れ去った。
その時のヴォイドの顔が、とても印象的だった。