80.
R15周辺です。
「ルイ」
そう言いながら私の腕を引き、壁際に身体を押し付けキスをし始める。
あまりの事に思考が追い付いていない。
「……ちょ、ま、はぁ、あっ」
いっそう深くなるキスに、目の前がちかちかする。
呼吸が苦しくなってきたところで、唇が離れる。
「あ、はぁ、な、なぜ……」
なぜこんなことをと問おうとしたら、今度は首筋にキスを落とされた。
「ゃっ、ちょそこは」
堪らず逃れようと暴れたが、残念なことに両腕は副団長にホールドアップされている。
片手なのにびくともしない。
逆に刺激をしてしまったようで、残りの手が腰に回されグッと引き寄せられる。
ぶつかる腰と腰。
「ゃ、そ、それい」
それ以上はと言いかけた所で、再び唇をキスに塞がれ続きを言えない。
先ほどより深い口付けに、思わず声が漏れる。
「んぁ」
鼻から抜けたような声が卑猥に響き、更に激しさが増す。
息ができなくなって、意識が飛びそうになった時、ようやく解放された。
「ぁ、はぁ、んく、はぁ、はぁ」
苦しくて自分の目が潤んでいるのが判る。
「……ルイ」
艶っぽい副団長の掠れた声が、頭に響く。
思わず顔を見ると、途端切なげに顔を歪め、そのまま私を抱きすくめた。
「……ルイ、すまない……」
私の肩に顔を埋めながら小さく呟いたその声が、あまりに 悲痛だったので私は何も言えなくなった。
背に回った熱を帯びた手が、僅かに震えている。
「すまない」
そう言ったっきり、副団長は動かなくなってしまった。
何故いきなり?
とか、何に対しての謝罪か?
とか、ぐるぐる頭の中を駆け巡る。
ただはっきりと判るのは、この震えた手がそれ以上何もするつもりがないということだけ。
紳士なのか何なのか……
「ルイ」
耳元であまりにも色っぽい声で私の名を呼ぶものだから、 思わず体が跳ね上がった。
抱きしめる力が強まる。
「何故、何故何も言わない」
ああ、そうか。
責めてほしいのか。
今までの副団長の突発的な一連の行動が、すとんと腑に落ちた。
なんて不器用な。
とりあえず、背中をなでる。
この心配性で不器用な友人に、なんて声をかけようかと悩みながら。
で、背中を撫でたら、びくってされてしまった。
その勢いで、私の後頭部が壁にぶつかる。
「だっ」
「す、すまん」
いや、別にいいんだけど。
ようやく自由になった体を副団長から離す。
「あのねぇ。こういう事をして、嫌われて責めて欲しいってのはよく判った。任務に付随する事柄に対する矛先を自分に向けたいってのも。でもね、生憎とこんな事位で、副団長を責めたり嫌ったり出来ない性格なんだよね」
そう言って、顔を見れば目を泳がせている。
図星か。
というか、もうキスぐらいでどうこう騒ぐ歳ではないというのが、約80%の理由でで残りは、いや90%越えてるわ……
考えてて凹んだ。
「約束してよ。終わったらさ、飲み会するって。みんな集めてさパーってやっちゃわない?やっぱり鬱な任務の後は美味しい酒だよね」
副団長の顔がみるみる内に、驚いた表情になる。
何よ?
文句ある?
て顔したら、おもいっきり頭を撫でられた。
いい歳して頭撫でられるとか、どうなんだろうな。
フフフ、飲み会。
宴会。
いいお酒。
本当にすみません。
いや、まぁ、ちょっと色々やってしまった感が…
このままごっそり、お気に入りから外されそうな予感が…
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