表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
国王陛下と宗谷英規と飲めない現実主義者(自称)
72/228

72.

案の定というかなんと言うか、昼食後にはナリアッテ他、侍女さん'sが勢揃いしていた。

若干メンバーが、増えているような。

「ルイ様、そろそろ御支度を」

ナリアッテがそう私を促す。

そして、皆さん物凄くいい笑顔で、じわじわとにじり寄って来た。

ひーっ。

うう、又なのね?

侍女の1人が私の右肩に手を置く。

「っつ」

思わず眉を顰める。

先程、脱臼した右肩だ。

下手に肩を入れてしまったらしく、実は少しだけ痛みが続いていた。

1人になった時に、何とかしようと思っていたけど、陛下の使者が来たりしてなかなか治せずにいたのだ。

「ルイ様!?やはりその右肩、お怪我なさっているのではなくて!?」

ナリアッテが、血相を変えている。

「あ、いや。大丈夫だから」

心配をかけたくないので、殊更平気だという事をアピールする。

「どこが大丈夫だと言うんですの。医師を呼ばなくては……」

ナリアッテが、慌てて部屋を出て行こうとするので、私は止めに入った。

「ナリアッテ、自分で治せるから、落ち着いて」

「落ち着いてなんかいられませんわ。ああ、どうして先程気付かなかったのでしょう。ルイ様の事ですもの、自分から傷を負うような真似はなさいませんのに。その肩は、どなたかに怪我をさせられたのですね?」

す、鋭い。

「そ、それは……」

と言いかけたところで、扉のノックがなる。

「ジャミニ近衛3官が、お見えです」

扉の外にいる衛兵が告げる。

助け舟キター。

「入ってもらって」

私がそう言うと、清々しい顔をしてヴォイドが入ってくる。

すると「誰ですの!?」とヴォイドが入ってくるなり、詰め寄るナリアッテ。

ちょっとヴォイドが面喰っている。

行き成り誰と言われても、答えようがないよなぁ。

「ルイ様を傷物にしたのは、どこのどなた?答えなさい、ジャミニ近衛3官」

ナリアッテが更に、ヴォイドを詰める。

その時に垣間見えた、ナリアッテの歪んだ笑顔が非常に怖かった。

「ウィロアイド=リジェン=ケウェオ=ケナンヴェマだ」

彼女に気押されたのか、あっさり答えるヴォイド。

その答えを聞いて、大輪の花を咲かせた様に笑うナリアッテ。

「ふふふふふ、身の程知らずがいたものだわね」

な、ナリアッテさん?

「ふふ、ケナンヴェマね。ケナンヴェマ。ああ、ウェインヴィさん?確かこの間、楽しいお話を聞かせて下さいましたわよね?」

ナリアッテが、侍女さん'sの誰かに話しかけると、返答があった。

「ナリアッテ様、"最も効率よく報復をする為の助言と技術の話"でしょうか?それとも、"最も復讐効果を得る為の5つの法則"の話でしょうか?」

どこのHow To本だよそれ。

しかも何で、仕返し系?

彼女の過去には一体何が……

「両方ですわ、ウェインヴィさん。後ほど詳しく、ご教授いただけるかしら?」

リ、両方かよ。

「畏まりました。では、"効率よく報復する為の助言と技術"からお話しいたしましょう」

「ふふふふふ、楽しみね」

ナリアッテが笑うと、侍女さんたちがくすくす笑い出す。

すみません、ごめんなさい、本当に申し訳ありません。

心の中でウィルに謝り倒しておく。

あなたは今、とっても危機にさらされているかもしれません。

ここにいる、侍女さんを敵に回してしまったかもしれません。

謝っただけでは済まないかもしれない。

「ふむ、そういう事か。なら君らは何もする必要はない」

ウィル、よかったね。

君にとっての救いの神が、現れたみたいだよ。

よく言った。

思わず褒めてやりたくなった。

流石、ヴォイド。

「私が責任もって対処した」

そうそう、社会人はやっぱり責任を持って何事にも対処……

ん?

対処した?

対処したって、言った?

今。

対処しようではなくて、対処した?

待て待て。

なにゆえ過去形?

思い出そう。

えーと、確かヴォイドは忘れ物をしたんだっけ。

そして、寄宿舎の部屋に戻って行ったんだっけ。

ご丁寧にも、外に衛兵までつけて?

これって、長く席を外すから?

あ、嫌な予感。

私が、この部屋に入ってから40分、ヴォイドは戻ってこなかったんだった。

そう言えば、いやにさっぱりして帰ってきてたし?

ますます、嫌な予感。

私がナリアッテと会話して、陛下の使者と会って、昼食食べ終わるまでの間に、寄宿舎でいったい何が……

「今頃奴は、夢の中だろう」

そうか、昼寝の手伝いをしたのか、偉いねぇヴォイド。

だからぁ、現実逃避なんてできないんだって、私は。

恐る恐る、ヴォイドを見る。

何 を し に 行 っ た の?

「ん?どうかされましたか?そのような顔をされて。思わず……いえ、何でもありません。ああ、寄宿舎での事をお聞きになりたいのですね?心配は御無用です。あの下種頭に、掟というものをたっぷりとええ、たっぷりと叩き込んで参りましたので。もう、あのような事態にはならないはずです。断言します。二度と触れさせてたまるか。いえいえ、何でもありません。そんな!!殺しだなんて、何を仰る事やら。そんな事をこの俺がすると思いますか?しませんよ。ただ、胴体部分の見えない所を中心に、少し、すこーしだけ蹴りを数か所入れて来ただけです。ええ。ん!?そこまではしていませんよ。本当に軽くですから。本当に軽くですよ?あれ位どうこうありません。恐らく。大丈夫なはずです。多分。なので貴女が、御心配なさる事ではありませんよ。ですから、そのような顔をなさらないで下さい」

ヴォイドが、寄宿舎での出来事を話してくれた。

軽く蹴ったというのは、絶対にウソだ。

夢の中に誘う程度の事は、してきたのだろう。

相当怒ってたんだな。

それにしても、あの時なぜすぐに助けてくれなかったのだろうか?

いやいや、何を人に頼ろうとしているんだ。

あの状態から動けないという事自体がすでに問題であって、人に頼っている時点でアウトだ。

寝技から抜ける方法を未だに見いだせていないという、自分の未熟さに泣けてくる。

今度ヴォイドに、寝技をかけられた時の脱出法とか習ってみようか?

うん、いい考えかもしれない。

「よく殺って下さいましたわ。ジャミニ近衛3官」

ナリアッテがヴォイドに言う。

あれ?

一部、翻訳が間違っている気がする。

そうか、この便利な翻訳機能にも限界があるんだなぁ。

寄宿舎でも、一部翻訳機能がバカになってたし。

て事は、私が話している言葉も、うまく伝わってなかったりするのだろうか?

「ルイ様の事を心身ともにお守りするのが、私の務めですから」

ヴォイドがにこやかに答える。

護衛って、対象の心までは守る必要はないと思う。

「ええ、その調子でルイ様をしっかり守って下さい。ああ、いけないですわ。早く医師をお呼びしないと」

ナリアッテはそう言いながら、凄いスピードで部屋を出て行った。

今度は止める事が出来なかった。

「だから、私に医者はいらないのに」

私の言葉がむなしく部屋に響く。

「医者?まさか」

じっと、ヴォイドがこちらを向く。

そして肩の方に視線を移すやいなや、小さく「チッ」っと舌打ちをし、気付いた時には今にも駆け出さんとする態勢に入っていた。

あー、待って、ヴォイド待って!

君まで駆けだそうとしないで。

身を翻そうとしたヴォイドの体を、私は思わず掴んでしまった。

右手で……


あっ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ