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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)と引っ越しと愉快な同居人
71/228

71.

暫らくすると、ウィルの荷物群が続々と届く。

だが、はっきり言って置き場所がない。

つまり、私達の居場所もないわけで。

結局、ウィルの荷物に追い出される形となった。

ウィルに、明日までに荷物の整理を頼んで、私はいったんファンシー部屋まで戻る事にした。

ジェイも、今日の夜は街に行くらしい。

彼も一旦荷物を取りに行くのかもしれない。

ジェイは去り際にこちらを一瞥してから、なぜか溜息をついて去って行った。

だから人の顔見て溜息吐くのは、止めなさいって。

廊下でヴォイドと話していると、先程扉を開けたウィルの侍従が荷物を持ってやって来る。

私に気付くと、一瞬固まり目を伏せる。

荷物一生懸命運んでいるからだろう、顔が若干赤い。

入口からこの奥までは結構距離があるので、あれだけの荷物を運ぶのは大変だっただろう。

自分の荷物ぐらい自分で運べばいいと思うのだが、貴族社会とはそういうものなんだろうな。

侍従の仕事も結構大変だ。

「扉、開けましょうか?」

両手の塞がっている侍従に、声を掛けてみる。

「……!あ、いえ。お手を煩わすわけには参りません。どうか、お気遣いなく」

いやいや、両手に荷物を抱えていてはこの扉は開け難いだろうに。

断られたが、それを無視して扉を開けた。

「もしまだ運ぶものがあるんなら、扉に何か挟んで閉まらないようにしておくといい」

「あ、ありがとうございます」

「気にしなくていいよ。ヴォイドそろそろ行こうか」

ヴォイドを促して、寄宿舎を出た。

ファンシー部屋に着くと、ヴォイドが私に声を掛ける。

「すみません、少し寄宿舎に忘れ物をしたようで、取りに行っても構わないでしょうか?」

忘れ物?

ヴォイドって何か持っていたっけ?

「う、うん。別に構わないけど?」

「ありがとうございます。すぐに戻ります。その間代わりのものが警護に付きますので。ただ、戻るまで部屋から出ぬようお願いいたします」

そう言うと、走って去って行った。

きっちり代わりのを寄こす辺りがヴォイドらしい。

まぁ、当然と言えば当然だが。

部屋に入るとナリアッテがいた。

ちょっとした罪悪感を感じながら、寄宿舎の方に移る旨を報告した。

怒るかな?

詰られるだろうか?

と、びくびくしていたのだが、返答は意外にもあっさりしたものだった。

「解りました。では、お荷物を今からお纏めしますわね」

拍子抜けをしていると、ナリアッテがくすくすと笑う。

「ふふ、ルイ様の考えておられる事、私、結構把握していましてよ」

ちょこんと小首を傾げる仕草は、とても可愛らしい。

ナリアッテだから似合う。

「騎士試験に合格なさったら、きっとこの部屋から寄宿舎へ生活を移されるだろうと、私、予測しておりましたの。合格おめでとうございます。ルイ様」

ナリアッテが、微笑む。

綺麗に笑うものだから、つい見とれてしまった。

「ありがとう、ナリアッテ」

素直に嬉しい。

「もしかしたら、怒られるんじゃないかと思って、ちょっと報告するのが怖かったんだよね」

「まぁ、私そんなに怒りっぽくありませんわ」

あはは、ちょっと拗ねてるところが、また可愛い。

「ごめんごめん。それはそうと、この部屋ってこの後どうなるの?」

「こちらの部屋は、ルイ様用に確保しておりますので、いつ戻っていらしてもご使用になれますわ。もちろん使用許可もとっておりますので、ご安心ください」

さすがナリアッテ、御見それいたしました。

この部屋の事まで対処済みとは……

ふむ、もしかすると、風呂問題はこれで解決するかもしれない。

風呂の時だけ、ここに借りに来るとかできないだろうか?

後で副団長に相談して、許可をもらっておこう。

「それより、ルイ様。その肩はどうされましたの?」

柳眉を顰めている、ナリアッテ。

そんなに顰めても、皺にならないなんて、とても羨ましい。

「ああこれは、さっき寄宿舎で肩をぶつけた時に破いてしまったんだ。ナリアッテごめんね。せっかく貸してくれたのに。縫って元に戻すから、後で裁縫道具貸してくれる?」

「ルイ様、その必要はございませんわ。代えなら、いくらでも御用意出来ますもの」

笑って恐ろしい事を言う。

よく考えたら、ナリアッテも貴族なんだよなぁ。

シャツの1枚や2枚、どうという事でもないのだろう。

今回は言葉に甘えて、次回から自分で何とかしよう。

「そっか。でも裁縫道具は宿舎に持っていっておきたいかも」

金の持ち合わせがない分、支給された服が破れた時は出来るだけ自分で何とかしたい。

「では、お荷物の中に入れておきますわね」

「助かる」

「ではルイ様、御昼食はいかがなさいますか?」

「貰っていいかな?それと、今日はここに泊るから、夕食もあると嬉しい」

「畏まりました。御用意して参りますので、暫らくお待ち下さいね」

そう言って、ナリアッテが出て行った。

取り敢えず待ち時間の間に、着替えと自分の持ち物をまとめる準備をした。

と言っても、この世界に来た時の持ち物だけなので、2分とかからなかったが。

そこへ、外から声がかかった。

「お知らせします。陛下からの御使いがこちらに。入っていただいても構わないでしょうか?」

え?陛下から?

何だろう?

「どうぞ、お入りください」

外の衛兵が扉をあける。

「お寛ぎのところ、失礼します」

完璧な礼をして使いが入ってくる。

「どうぞこちらへ、お掛け下さい」

私が使いに席を勧めると、少し困惑していた。

あれ?また間違えた?

「あ、いえ。伝言だけですので、立ったままで結構です」

「そう?で、陛下のお託とは一体」

「はい、申し上げます。"昨晩の約束通り、酒の席を設けよう。そなた等の話を楽しみにしている"との事です。御夕食後を見計らって、迎えに参りますので、そのお心づもりで」

ああ、そう言えば夜会でそのような事を言っていた。

まさか、昨日の今日だとは思わなかったが。

「解りました。お会いできるのを私も心より楽しみにしております。と、陛下にお伝え願いますか?」

「承りました。では、私はこれにて失礼いたします」

私が頷くと、使者が礼をして出て行った。

それと入れ替わるように、ナリアッテが戻ってくる。

「今のはもしかして、陛下の侍従長では?」

「へぇ、あの人侍従長なんだ。陛下からの伝言で、今晩、晩酌に付き合えってさ」

「まぁ、それは大変」

ナリアッテの目がキラーンと光った。

うっ。

又ですか?

又何かされるんですか?

次話は陛下と晩酌です。

それでは、次話にてお会いしましょう。

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