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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)と引っ越しと愉快な同居人
70/228

70.

「貴様の首を今すぐ胴からおさらばさせてやる」

誰をも凍らす、殺気と声音。

ウィルの体も、さらに大きくなったその殺気にビクッとなる。

その時にまた私のわき腹にも触れる。

「ひゃぁ……っいっ、ぁ……待……って、ヴォイド、待って」

ただいま腹筋に力が入らないため、いつもより声が出ておらず、なんとも気の抜けた声音になる。

ヴォイドを見上げると、今まさに剣を振り下ろそうとする姿があった。

本気だったのか。

ヴォイドの目線とかちあう。

彼の瞳が揺れた。

「ヴォイド、その物騒なのを鞘に入れて?」

ヴォイドにそう言うと、纏っていた殺気が霧散した。

そのおかげでやっと動けるようになったのか、もぞもぞとウィルが体を起しにかかる。

再びわき腹攻撃。

又ビクッとなる。

「……ぃあ……ぁ早……く……」

もう言葉が続けられません、力が入らずぐてーっとなる。

早く上からどいてほしい。

この際もう何でもしますから。

「っ!!やべぇ!俺便所行ってくる!!」

今まで鳴りを潜めていた、ジェイがトイレに駆け込んでいった。

よっぽどヴォイドが怖かったらしい。

私も怖かった。

急に体重がなくなったと思ったら、ドスンと言う音が聞こえた。

ヴォイドがどうやら、強制的にウィルをどかしてくれたらしい。

凄く乱暴だったのが気になったが、私はほっとした。

ヴォイドが私の体を起こしてくれる。

「いっ」

右の肩が痛む。

「やはりどこか怪我でも?」

さっきから右肩が痛む。

ブラーンとなった右腕を見て、ため息をつく。

やはり、脱臼をしていたようだ。

さっきのくすぐり攻撃は、私にとって波状攻撃だった。

弱点攻撃と脱臼に伴う鈍痛の2重苦。

右腕に負荷がかかる度に痛むものだから、くすぐったいわ痛いわで頭の中が大混乱だった。

「ちょっと、脱臼をね」

「なに!?くそ!」

「ヴォイド、軽々しく剣なんか抜いちゃだめだよ。いざという時に使い物にならなくなるよ?」

なんだか疲れて、声に力が出ない。

ヴォイドは、しぶしぶといった態で柄から手を離す。

やはり抜くつもりだったか。

私はベッド角を使ったりして、脱臼を元に戻した。

ヴォイドとウィルが、その様子を見て唖然としていた。

その顔がちょっと面白くて、笑ってしまった。

笑顔を見たためか、ヴォイドがほっとした顔をする。

ウィルもホッとしていた。

殺気が無くなったもんね。

「脱臼ぐらいで大げさすぎなんだよ、ヴォイド。これから怪我とか一杯するんだから、その度に殺気立ってたら身が持たないよ」

「え?いや、それは……いえ、もう、何でもないです。ええ」

なんだか溜息をつき、遠い目をし始めたヴォイド。

幸せ逃げるよ。

「それより君、こんな狭いところで暴れたら危ないだろ」

私は、ウィルにも一応注意をしておく。

「怪我人が出なかったからよかったものの。もし今度私を殴りたくなったら言え。もっと広いところで相手になるから」

ヴォイドが、思いっきり納得いかないという様な顔をしている。

間違った事言ってないよな?

「お前は、男なんだよな」

ウィルが確認してきた。

「・・・・・・」

あれだけの事されて、正直ばれたかな?と思ったのだけど、どうやら私の体は女の範疇に入らないらしい。

ものすごーく複雑だ。

本当に複雑だ。

団長の呪いか?

まぁ、男だと思われなきゃならないんで、誤解は解かないままの方が都合がいいのではあるが。

うう、複雑。

「何?私に惚れた?」

少しからかう位は許されるかな?

ニヤッと笑いながら言ってみる。

許せ、遊び心だ。

ないと解っているから、出来る遊びだよね。

「そう、惚れ……いや、違う。断じて違う。誰が」

「そうか……それは残念だ」

間髪を入れず、心底傷ついたという顔を作り、首を左右に振って両肩をあげて言ってみた。

プライドを傷つけたのか、これ以上ないというぐらい怒らせてしまった様だ。

ウィルの顔が赤くなり、口をパクパクさせている。

ちょっと遊びが過ぎたかな?

フォロー入れとくか。

「あはは。惚れるなんてないない。すまなかった、からかいが過ぎたようだ。それに、君が倒れたのも、元をただせば私のせいだし。全面的に謝罪するよ。申し訳なかった」

私は頭を下げた。

ウィルが狼狽している。

失礼な、私だって謝る事もあるよ。

「い、いいいいや、構わない。こちらも少々頭に血が上っていたようだ」

やはり、からかい過ぎて怒っていたようだ。

だが、プライドは高いけど、非を認める事はできるのは関心できる。

「じゃあ、お互い様だな」

にっこり笑うと、ウィルが何か考えている様で固まって動かなくなった。

PCのフリーズ状態だ。

面白いのでそのままにしておこう。

「それはそうとジェイは遅いなぁ。先程便所に行ったきり、戻らないんだが」

ふと、トイレに籠ったままのジェイが気になった。

よっぽどヴォイドが怖かったのか?

それとも大?

「・・・・・俺が覗いてきましょう」

ヴォイドがそう言って、トイレを覗きに行こうとする。

あ、トイレの原因が行ったら不味くない?

あの、殺気は怖かったし。

多感な年ごろだし、トラウマになったりして。

「ヴォイド、私が行くよ」

慌てて私はヴォイドを止める。

「え?あ、いえ、よした方がいいかもしれません」

「なんで?」

「ああ、すみません。それには……い……色々複雑な事情がありまして……とにかくレイはここに」

そんな事を言われたら、行けなくなってしまった。

何だよ複雑な事情って。

出てこない理由とか、ヴォイド知ってるのかな?

ヴォイドがトイレに着く。

扉を開けたと思うと、ジェイと何かを話し始めた。

聞き取りにくい。

「ジョアーグ。大丈夫ですか?」

「勘…してほ……よ。正直、理…飛んだ。あの…情と…が、やべぇ」

「もう、ああいう事態には陥…ま…んよ、というかさせません。ええ、断じて。思い出……ら腹が……てきた。俺でさえ、まだ…を…していないのに、くそっ」

「え?レ…は…な…だよな?」

「ええ、もちろんです」

「…だよな?そ…だ…な?」

「しまった、最近感情の制御ができなくて困る。とりあえず、…イは…です」

「……は…。レイは…。よし」

どうやら、会話が終わったらしい。

2人がトイレから出てくる、そして同時にため息をついた。

私の顔を見ながら。

何だろう、腹が立つなぁ。

「人の顔を見て、ため息つくって、失礼だと思わないか?」

ウィルに同意を求める。

が、返ってきたのはつれない返事だった。

「今ならあの2人の気持ちが解りそうだ」

まぁ、これから一緒に暮らすんだし、歩み寄ってくれるんなら問題ないんだけど、なんだか腑に落ちない。

70話目です。

ここまで見て頂いた方々に感謝を!!


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