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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)と引っ越しと愉快な同居人
69/228

69.

「ふん、お前ら庶民が同室か。これは先が思いやられるな。せいぜい私の足を引っ張らぬようにしてもらいたいものだ」

相変わらずこちらを嫌な目で見る、ウィロアイド。

うわー、嫌な空気。

「なっ!」

思わず飛びかかろうとしたジェイを、ヴォイドが止める。

「はっ、これだから庶民風情が」

ウィロアイドが、思い切り見下したような視線をジェイに向けた。

「離せ!ヴォイド」

ジェイがちょっと暴れている。

意外と血の気が多いのだろうか?

若さか、そうか若さか……

「はい、ジェイの負けー。先に手を出したら、終わりだからね。取り敢えず落ち着いてみようか?」

ヴォイドに羽交い絞めをされて、身動きの出来ないジェイの頭を撫でた。

和むなぁ。

て、私が落ち着いてどうするよ。

「なんでそこで頭撫でるんだよ……」

軽く項垂れているが、暴れる気配はなくなった。

効果があった様だ。

「全く騒がしい事だ。ああ、これだから庶民はいただけない。それとも、それが庶民たる所以なのか。これからひと月、この者らと付き合わねばならんとは、なんとも不運な事よ」

だったら、部屋変えてもらえば……

でも、なんだか面白そうなので助言はしない。

「ウィラードもさ、いちいち人を怒らすような発言は控えようよ。どう見ても、この狭い所で3人に喧嘩を吹っ掛けるのは、得策じゃないって判るだろ?」

「ウィロアイドだ!ふん、名前も覚えられないのか、庶民というのは」

「それは申し訳ない。わざとだ、ウィロアイド=リジェン=ケウェオ=ケナンヴェマ。名前が長すぎてどうも呼びにくい。長いからウィルと呼ぶ事にするよ」

と私が言うと間髪をいれず反論してきた。

「貴様に呼ばせる名などない」

あーもう面倒くさい奴だなぁ。

「あそ。全く面倒な。1月だけなんだから、ウィルでいいじゃん」

「……貴様……この私を愚弄するか!!」

ボソっと呟いたのが聞こえたのか、怒り出す。

本当、皆若いよね。

これくらいの事でいちいち怒っていたら、この先やっていけないよ?

ウィルが勢いで私を殴ろうとするが、私はすかさず躱した。

だから、なんで狭いところで殴ろうとするかな?

少し考えてみたら、どうなるかとか判るのに。

このままだと、ウィルが倒れそうだったので、躱した時に倒れないよう軌道を修正してあげた。

太極拳って、こういう時に便利だよね。

「んじゃあ、どうしろと?君が名前を呼ぶなと言うから、便宜上の名前を考えたんだろ?これから先、名前を呼ばずに生活していくのは正直無理だと思うのだが」

さらに、ウィルが殴ろうとしてくる。

どうも頭に血が上っているらしい。

ヴォイドがウィルの肩を掴んで、阻止しようとしたが肩を掴み損ねたようだ。

ウィルが躱した際にバランスを崩し、そのまま私の方に倒れて来た。

私はそれを避けようとしたがうまくいかず、ウィルの体を正面から受け止める形となった。

「うわっ」

が、彼の体重を支えきれるわけもなく、そのまま後ろに倒れる。

その際ベッドの角に肩を強打した挙句、ナリアッテに借りていたシャツの肩部分を破ってしまった。

「つぅっ」

右肩痛い、背中痛い。

呼吸できない。

ナリアッテごめんよー。

あー、肩からこんなに破れて……

シャツ直せないかもしれない。

手で縫って直らなかったら、ナリアッテ怒るかな?

怒らないでほしいなぁ。

それから、そろそろウィロアイド、体を起こして欲しいな。

正直、首筋が君の呼吸で生暖かくなって気持ち悪いから。

「っつ。くそ」

ウィルが悪態をつきながら、体を起こそうとする。

のはいいが、私の体は地面じゃない。

そこ、力入れると鳩尾!

丹田に思いっきり力入れて乗り切った、えらい、私。

「ん?」

でも地面に違和感を感じたのか、ウィルがお腹周辺をペタペタと確認してきた。

思わず固まる。

それ以上、手をずらそうとしないで。

女だとばれる。

それからそこは、脇腹ー!!

ずらすのやめて下さい、お願いします。

本当にお願いします。

以前副団長に、脇腹攻撃したのを猛省した。

願いもむなしく、左手が弱点に触れる。

私の意思とは裏腹にびくっとなる。

「……あ、や……」

思わず、掠れた声が出る。

「へぇ」

ウィルが何か良い事思いついたという様な顔になる。

「ま、まさか、よせ」

ウィルが人の悪い笑みになった。

ウィルが私の右腕を拘束する。

さらにわき腹にある手が動く。

「ひぁっ……い」

本当にダメ。

「ちょ、おね……っ」

懇願しようとするも、さらに触れられる。

その瞬間、体が大きく反応しのけ反ってしまった。

「いっ……ひゃ……あっ」

涙がじわっとにじんできた。

力が出ない。

だけど、脱出を試みる為、体をねじってみる。

が、やはり腕に力が入らず元に戻ってしまった。

「……ひゃ……ぁ」

何とも情けない声が出た。

もう嫌。

その時に、部屋の扉を叩く音がする。

「失礼します」

そういって扉が開く。

「………………失礼しました。どうぞお続け下さい」

お願い止めてー、行かないでー!

私の願いも空しく、一言残してばたんと扉を閉めていってしまった。

ウィルの侍従だった。


そういえば荷物がなんたら言ってたな。


「おい」


そこへ、底冷えのする声が響く。

ヴォイドの声だ。

ヴォイドが怒っております。

怒るのを初めてみたかもしれない。

やっぱり怒らすと、怖いんだ。

少し部屋の気温が、下がった様な気さえする。

目が据わりきった状態で、ヴォイドが一歩近づいてくる。

思わず下がりそうになった。

ウィルのせいで動けなかったが……

「貴様の、フa3qp5tb#$"な手をルイからどけろ。さもないと―――――」

ヴォイドがもう一歩近づく。

その手には光りものが握られている様な気がするのは、私の気のせいでしょうか……

さらに近づく。

「―――――貴様の首を今すぐ胴からおさらばさせてやる」

この殺気に当てられて、動けずにいるウィル。

硬直している。

そのおかげで手の動きも止まったが、殺気が増すごとにビクつく為、その度に手がわき腹に触れる。

声が漏れそうになるが、この状況でうひゃーなんて大声出せません。

でも結局声を抑えきれなくて、「う」とか「あ」とか出るけど……

もう、限界です。

勘弁して下さい。

ははは、後悔してない。

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