表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)と引っ越しと愉快な同居人
68/228

68.

そこには、セットを乱され不貞腐れている少年が一人。

すまん、つい思わず衝動的にやってしまいました。

反省。

「お前、絶対俺の事、そこらへんのガキだと思ってるだろう」

「ぜんっぜん、思ってません」

私は、首を左右に振りまくる。

ガキだとは思っていませんよ?

ガキだとはね?

それをじと目で見るジョアーグ。

「本当かよ。見てろよ、俺はいずれ団長のように、出来る大人になってみせるからな」

ジョアーグは何かを決意して、宣言した。

目に力が宿っている。

おお、何だかみなぎっている。

あれ?

「団長?なぜそこで団長?」

「お前なぁ、騎士団団長って言やあ、この国にいる奴だったら普通に憧れるだろうがよ。団長みたいになりたいとか、一度でも思った事ないのか?」

「いやぁ、そこら辺解んないんだわ。ジョアーグィは」

っ痛、舌噛んだ。

あーもう、名前長いなぁ。

「ジェイは団長みたいになりたいのか?」

私がジェイと言ったら、なんか照れてる。

こういうところが、犬っぽいんだよなぁ。

「当たり前だろう?小さい時からの目標だったんだから」

拳を握りしめて、なにやら力説しはじめた。

こいつは、本気だ。

なんだか圧倒されてしまった。

「そ、そうか」

これ以上の団長の話題は、タブーだと直感した。

ジェイは、なぜかは知らないが、団長の事を妄信している。

下手な事を言ったら、倍になって返ってくるような気がする。

ここは黙っておくべし。

それにしても、恐るべし団長。

老若男女問わないそのカリスマ性は、ここまで来たらもはや宗教レベルかもしれない。

そこへヴォイドが慌てて戻ってきた。

「話は済んだみたいだな、じゃあそろそろ行かないか?」

ジェイが早く行きたそうに言う。

「そうだな、揃ったことだし寄宿舎へ行こう」

続けて私がそう言うと、ヴォイドが怪訝な顔をしている。

あれ?

どうかしたんだろうか?

「レイ、寄宿舎で生活するつもりですか?」

ん?

何か問題でもある?

「え?そのつもりだけど?どうせ1ヶ月で移らなきゃならないんだったら、今移っても一緒じゃないか?ダメ?」

小声でヴォイドに問う。

するとヴォイドが一瞬動揺したように見えた。

「ダメで……はない。むしろねが……あ!いや、その、やはりダメだ!ええ、ダメです」

どっちだよ。

「えーと……」

私が困惑していると、ヴォイドが慌てた。

「あ、だからそれは、その」

ヴォイドがちらっとジェイや他の合格者たちの方を見た後、言葉を続ける。

「色々と問題が発生しそうで……その」

ここでは言いにくいことなのだろうか?

最後がしりすぼみになっていた。

「まぁ、今移らなくても、結局1ヶ月後には移動しなきゃでしょ?」

「それは、そうですが……」

まだごヴォイドがにょごにょ言っている。

「なぁ、そろそろ行こうぜ」

ジェイがじれたのか、いいタイミングで歩を促す。

「そうだな。行こう」

私が同意すると、しぶしぶといった体でヴォイドが付いてきた。

はっきりしないなぁ。

何が問題なんだろうか?

後でもう一度聞いてみるか。

取り敢えず、この問題は保留にした。

しばらく歩くと、寄宿舎が見えてきた。

他の建物よりは、こぢんまりとしている。

収容人数が少ないからだろう。

その寄宿舎周辺には、すでに結構な人が集まっていた。

「うわー、見事に貴族ばっかだな」

ジェイが言う。

よく見るとジェイの言う通り、沢山の荷物を囲んでいる貴族とその従者が、宿舎の周りに屯していた。

この集まり具合をみると、どうやらこちらが面談をしている時から、寄宿舎に移動を開始していたみたいだ。

貴族は皆通ってくると思っていたので、これには驚いた。

割と寄宿舎で過ごす方を選択する貴族も、多いらしい。

「説明会の時に居た人達が、少ないな。一旦帰って、荷物でも取りに行ったのだろうか?ジェイは、取りに帰らなくていいのか?」

「部屋割と同室者が気になったから、先に手続き済ませておこうと思って。後で取りに帰ればいいし」

「それもそうだな。じゃあ、入舎手続きを先に済ませてしまおうか」

私が言うと、2人が同意した。

受付は外に設置されていた。

私たちの名前を確認した後、受付係の騎士が、鍵を其々に渡してきた。

部屋の鍵だ。

その後、案内係の騎士が宿舎をざっと案内してくれた。

風呂だけが共同らしく、トイレなんかは部屋に設置されているらしい。

あっ。

そうか、ヴォイドの心配ってこれの事か。

あらら。

まぁ、うーん、風呂対策は後で練るか。

どうやら先着順で部屋を割るらしく、1階の1番奥の部屋が割り当てられた。

早めに寄宿舎に来て正解だな。

1階だと集合とか楽だし。

上手くいけば廊下とか色んな窓から出入りできるし。

まぁ、構造にもよるけど。

部屋の中に入ると、10畳ぐらいの空間に2段ベッドが2つと机が並んでいた。

小さな机が適当に配置して置かれている。

そんな所が印象的だ。

どうやらこの部屋は4人部屋で、全員同じ部屋になれたみたいだ。

ジェイが喜んでいる。

「後一人って、どんな奴だろうな?」

「確かに気なるな。先着順なので、もうすぐ来るんじゃないか?」

噂をすればというやつで、この部屋がノックされる。

「どうぞ」

ヴォイドが返事をすると、扉が開く。

20歳前後の男が入ってきて、恭しく口を開く。

「失礼いたします」

入ってきたなり、一礼する。

「本日より、こちらで過ごされます、ウィロアイド=リジェン=ケウェオ=ケナンヴェマ様でございます。どうぞウィロアイド様」

自分は脇に寄り、後から来た人物に入室を促す。

どうやら同室者は、後から来た方の人物らしい。

貴族だ。

入って来た貴族が、こちらを見回す。

うーん、あまりいい目ではないな。

「ご苦労。アレン、ここまででよい」

「かしこまりました。お荷物は後ほど運ばせますゆえ」

「任せる」

「では、私はこれにて」

アレンと呼ばれた20前後の男が、静かに去って行った。

この一連のやり取りをジェイがぼけーっと見、ヴォイドはやや眉を寄せて眺めていた。

「ふん、お前ら庶民が同室か。これは先が思いやられるな」

「なっ!」


これはこれは、面白いやつが同室になったものだ。

ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

寄宿舎編始動です。

どうか引き続きお付き合い頂けると、うれしいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ