表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)と引っ越しと愉快な同居人
65/228

65.

面談が終わり、廊下を挟み向こう側の壁にもたれかかって腕組んで待つ。

ああ、こういう所がオヤジなんだ。

直そう。

ヴォイドの面談は、数分足らずで終わった。

なんだか、事務連絡のみという感じの長さだ。

「副団長は何て言ってた?」

気になったので、ヴォイドに尋ねる。

「引き続き頼むと」

どうやら副団長に、一通りの説明を受けたらしい。

つくづくヴォイドには申し訳ないなぁ、と思う。

というのは、本来なら近衛として、王族や王族に連なる人々の警護をしなくてはならないはずなのに、こんな一般人の護衛なんて小さい事をさせているからだ。

ただ大人しくしていればいいものを就活まで始めたのだから、ヴォイドにとっては始末に負えないというところだろう。

さらに、巻き込まれて再受験までやらされるとか、彼にどれだけ負担をかけているかと考えると、胃が心配になるほどだ。

それにしても、彼の一般業務からかなりかけ離れている仕事内容だと思うのだが、契約内容とかどうなっているんだろうか?

労務に関する法律とか、色々無視されている様な気がするのだけど。

休みとか休みとか休みとか……

彼女の一人や二人いるだろうし。

もしや新婚だったり?

うわ嫁とか子がいれば、怒られてそうだな。

たまには子供の面倒を見てよ、とか、ネズミーランドに行く約束したじゃないパパ。とか言われてそう。

大丈夫なんだろうか?

「彼女も嫁もいませんが」

ヴォイドがぼそっとつぶやく。

あぁ、この勤務体制じゃ彼女作るの無理だわなー。

今度、労使関連を確認してみるべきだな。

どうもそういう法律は、整備されていない感じがする……

まぁ、王政だし異議申し立てる権利は、騎士団に所属した時点で奪われるのかもしれないなぁ。

一度ファインさんか、宗谷英規に相談してみるか。

と、脳内メモにメモっておく。

それはともかく、ヴォイドは上司にやれと言われて渋々、全く関係の無い仕事を引き受けたのだろうと思う。

上官命令は絶対とかなんとか、逆らうと軍規がどうとか。

そういった事を考えていると、私は頭を下げずにはいられなかった。

「ヴォイド、色々迷惑かけてごめん」

「いきなり何を言うかと思えば……」

少し呆れ顔で言うヴォイド。

「貴女が気にかける事ではありませんよ。こう見えて、結構楽しんで護衛してますから。それに彼女いませんから」

と、笑顔で言いきるヴォイド。

ちょ、護衛楽しむようになったら終わりだよ。

それ職業病だよ。

気持ちが解る分、何だか涙が出てきた。

それから、彼女がいないと堂々言ってる自分が悲しいと気づいておくれ。

お姉さんなんだか心配になってきたよ。

「そうか、そう言ってもらえると助かるな。じゃあ私は、御免ではなく有難うと言うべきか。これからも宜しく」

そう言いながら手を差し出すと、ヴォイドはすごく照れた顔して私の手を握り返した。

「ああー!!ちょっ、俺も俺も、俺も宜しくしたい」

突然、どたどたという足音が聞こえた為そちらを見ると、突進してくるジョアーグがいた。

「解ったから、廊下を走るな。それから叫ぶな」

ヴォイドがジョアーグを叱る。

ジョアーグが、ちょっとしゅんとなっている。

その姿が一瞬犬みたいに見え、思わずジョアーグの頭をワシャワシャと撫でまわしてしまった。

触り心地の最高な犬……

ちょっと癒される。

「お、おい。何するんだ、よっ」

"よ"と言ったところで、両手で私の肩を突き飛ばしジョアーグが離れる。

うーん結構病みつきになる毛質だったが、今回はあきらめる。

残念。

セットが思いっきり崩れていたので、直してあげるべきか否か……悩む。

弟がいたらこんな感じ?

「あ、悪い。ついジョアーグ見てたら、イヌ……癒し系動物みたいだと思ってしまって無意識に」

「なッ。動物扱いしやがって。それに俺はこう見えてもお前より年上だ」

「……え?」

何々?今嬉しい事言わなかった?

でも10代はちょっと余りにもサバ読み過ぎだよね。

ココ薄暗いから、どうせ夜目遠目なんだろうよ。

きっと日の光に当たったら、実年齢ばれるんだろうな。

「なんだよ。どうせ俺は背低いし、16には見えねーよ。悪かったな」

どうやら、背の高さと16に見えない事が、コンプレックスらしい。

16だったらこれから伸びるし、気にしなくてもいいと思うのだが、理想はヴォイドの高さだそうだ。

180ちょいか。

確かにバランスのいい高さではあるけど。

悩みは人それぞれなんだな。

気を取り直して、私はジョアーグに向かい合った。

「そんな事は気にするな。ともかく、ジョアーグ、これからも宜しく」

ジョアーグに手を差し出した。

「てことは受かったんだな?」

そういうと、ジョアーグも笑いながら手を握り返してくれた。

その上に、ヴォイドも手をのせ「宜しく」と言う。

三人はしばらくその雰囲気を楽しんだ。


「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

と私がいうと、ジョアーグが変な顔をする。

「おいおい、何を言ってんだ。この後、合格者だけ集まるように言われてるだろう?」

思わず、ヴォイドを見る。

ヴォイドは首を振る。

私は肩をすくめた。

その件は聞いていない。

もしかして、入団後のオリエンテーションでも始まるのではなかろうか?

一応聞いておいた方がいいだろう。

「もしかして、その為に戻ってきてくれたのか?」

「お前ら降りてこないし、合否が気になったし」

照れている姿がまた、初々しい。

何だこの癒し系動物は。

手が思わず頭へと向かうが、ぐっと堪える。

「そうか。悪いな、遅くなって」

とか言って、結局私はジョアーグの頭をまたワシャワシャとしてしまった。

やば、これ止められないわ。

「それでは行きましょうか」

と言って、ヴォイドがジョアーグを促す。

「そうだな」

なんだか疲れた様子のジョアーグの後について、私たちは合格者部屋に行くことにした。


あ、結局年齢訂正できなかった。

ま、いいか、いいよね、このままで。

だって、若く見られたいのは女の子の三大欲求の一つだもんね?

ワカイ・カワイイ・胸デカイ。

はんっ、どうせどれも持ってませんよ私は。



ここまで見捨てずお読みいただいた方に最大の感謝を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ