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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)が性別詐称?
53/228

53.

辺りが静かになったので、何事かと思い周りを見渡す。

すると、会場の殆んどの人間が、同じ場所を見ている。

皆の見ている視線を追っていくと、二階部分から下を眺めている人物に行きついた。

纏っているオーラから考えるに、間違いなくこの国の王だろう。

案の定案内係の声が国王の来訪を、告げる。

皆が一斉に頭を下げた。

私も周りに倣い、礼をとる。

「皆の者、面をあげよ。今宵は隣国の客人を招いての夜会だ。思い存分楽しむがいい」

腹の底に響きそうなバリトンの声が、広間中に広がる。

それを合図に、先程とは違う音楽が会場に広がる。

雑然としていた雰囲気が、そこから一変する。

国王が二階部分から、ホールの方へと降りてくると、人の海がさっと左右に分かれた。

おお、生モーゼ。

分かれた延長線上には、団長とキョウキーニさんがいた。

この場所にいたら明らかに邪魔なので、私も周りに倣い脇に避け、ついでにお酒のお代わりを貰った。

「まだ飲むのか」

副団長の呆れ声が聞こえる。

うーん、何だか同じ事をさっきも言われた様な気がする。

「だめ?美味しいからつい」

流石にはしたないと思わなくもないが、いかんせんここに出ているお酒が美味しすぎるのがいけないのだ。

さっき受けたストレスも、若干ピッチをあげているのに加担していると、言い訳につけ足しておこう。

それに私は、酒依存ではない。

酒瓶片手に段差で躓くような、間抜けはしない。

躓くとき持っているのは、酒瓶ではなくグラスだ。

そこは主張したい。

「それはどう違うんだ?」

「持っていたのが瓶かグラスかによって、傷心度が変わってくる」

そうなのだ。

その時グラスを持っているか、瓶を持っているかで、心の傷の度合いが変わってくる。

その時持っていたのがグラスだったら、危ない気を付けよう、で終わる。

が、瓶だとかなりへこむのだ。

何をやってるんだろう?自分。

というように、自問から始まり、自分の人生について考えてしまう、ドつぼループにはまる。

やがて自分の人生が、走馬灯のように駆け巡りはじめる。

死なないのが不思議だ。

うん。

「それを、キッチンドリンカーと言うんじゃないのか?」

おわっ、宗谷英規、いつからそこに。

「酒依存ではないと主張していた辺りからだ」

「え?口には出していなかったはずですが」

「いや、口に出てたぞ」

宗谷英規と副団長に同時肯定されてしまいました。

「ああ、申し遅れました。私は英規=宗谷と申します」

宗谷英規が、、副団長に自己紹介を始める。

「私はローアム=フォンジッニ=デラ=ウナオイア。騎士団副団長を務めている。宰相補司に任官されたとか?フィーから噂は聞いているよ。あいつの元では気苦労が絶えんだろうが、頑張ってくれ」

フィー?

「気苦労などとはとんでもありません。色々勉強になって、いい刺激を受けています」

「あいつの変な影響だけは、受けるなよ」

「変な影響ですか?」

「ああ、そのうち解るさ」

どんな影響なんだろう?凄く気になる。

フィーとかいう人は、そんなに影響力がすごいのだろうか?

「ファインの事だ」

副団長が私に言う。

あ、ファインさんのこと。

じゃあ、きっとあれだな。

直属部下が軒並み似非紳士になるとか、女性関係トラブル多発とか。

それは、さぞかし混沌としていそうだ。

「だいたい、ルイがフィーの事をどう見ているか察した。悲しいことかな、概ねその通りなんだが……」

「ああ、じゃあ宗谷さんは手遅れですよ」

にっこり笑う。

「どういうことだ?」

二人同時に問われる。

「いや、だってファイン様に影響受けてなくても、現時点で兆候出てるじゃないですか」

そう言って、辺りを見回す。

女性の視線バッチリ。

まぁ、副団長ファンも混じっているだろうけど。

「それに、宗谷さん、向こうにいた時から結婚したい男、上位に入ってましたよね?うちの社にも、隠れファンいましたし」

周りを見た宗谷英規が、今気付いたかのように女性たちの視線に驚いている。

おおい、もしや鈍感?

いやいや、まさかねぇ。

「おいおい、宰相府はとんでもない男を入府させた事になるのか?」

「ある意味そうかもしれませんよ?ファイン様と宗谷さんのおかげで、ますます城内が潤っていると、侍女さんたちが話してましたしね」

「ま、まぁ、頑張れ」

「え、ええ」

何だか2人がげっそりしているが、気付かないふりをしてあげよう。

きっとそれが優しさというものだ。


そうこうしているうちに、王様が近くまで来ていた。

私達は、すかさず礼をする。

礼をする。

礼を、あれ?

何だろう、気配が去らない。

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