51.
そろそろ、キョウキーニさんの手を外したい。
団長発言から90秒程経つが、まだ固まったままのキョウキーニさん。
指先が摘まれたままなので、徐々に指先の感覚が無くなっている。
どう収拾つければいいんだ。
いや、収集を何故私がつけねばならないんだ。
腑に落ちん。
取り敢えず、この指を何とか外さないとと思い、頑張るが意外と外れない。
もしかして、本当に凍っているのではと思って、キョウキーニさんの顔を見る。
げっ。
酷く顔色がお悪いようで。
み、見るんじゃなかった。
そっと視線を外す。
一方、この状況を作り出した張本人はというと、いたって普通だ。
おい。
なぜだ。
「もう一度言うが」
チョっ、ストップ、ストーっプ。
一体今度は何を言う気だ、この野郎。
必死に、空のグラスを持った手で首を切るジェスチャーを団長にしたが、残念で遺憾でムカつく事に、全くもって通じなかった。
く、負けた気がする。
「そいつはお「2度も言うなー!」だ」
キョウキーニさんが被せる様に言い、私の手を思い切り払いのけ、私から距離をとる。
やっと指先戻ってきた。
が、状況は戻ってきていない。
もう、何とでもしてくれ。
「ルイとか言ったか」
キョウキーニさんが言う。
うわー、地を這うような声って、こういうのを言うんだ。
「次、俺の前で女の姿で現れて見ろ、二度と男でいられなくしてやる。いや、男の姿でも2度と現れるな。今すぐ消えろ」
えーと、私にとってさして困らない脅しだが、いやこれは考えようによっては喜ばしいのでは?
よし、ここは大人しく消えよう。
そうしよう。
絶対零度の眼差しで、私を見るキョウキーニさん。
ええ、ええ、言われなくとも、喜んでそうするつもりです。
ええ、喜んで。
「では、キョウキーニ=ウェン=シェオインク=ジェジュミ殿下、団長、副団長、私はこれにて失礼します」
嬉々として、騎士の礼をとって退散する。
それにしても、あれだけ触れて話して、なぜ気付かないんだろう?
普通、骨格やら声やらなんやらで、すぐに判るもんだろうに。
全くもって失礼な連中だ。
「全くだな」
「ですよねぇ?」
あれ?
今声に出してた?
取り敢えず、誤解者が約2名ほどいますがそのまま話は進みます。