47.
「さて、話を戻すが、なぜ近衛三官が不審人物の監視をしている?」
キースが、一瞬だけヴォイドに視線を向ける。
「手近なところに、監視が出来る人物がいなかったから。かな?」
ヴォイドの様子を見て思わず「うーん」と唸るキース。
「ルイ、どうしてその人物が不審だと思った?」
まず、この大広間の2階の入り口に立った時に、私はいつもの癖で全体を見渡した。
出入り口のチェックと、その周辺にいる警備関連。
天井や柱の影。
別に何かを見つける為とかではなく、職業病みたいに癖付いているだけだけど。
こういう人が沢山いる時は、周囲をざっと見る癖があるのだ。
そこで、例のあの人物が、目についた事をキースに説明。
一見した所、別段おかしな感じは何もないが、私には周りからかなり浮いているそのバランスの悪さが、非常に気になった。
こういう国が主催している催しで、身だしなみを考えないのはマナー違反だ。
それは恐らく異世界であろうとなかろうと、関係がないと思える。
で、少し気になったので、その事についてキースに訊ねてみた。
あんな野暮ったい格好をして、こういう格式ばった場に着て来る貴族がいるのかどうかを。
「無いとは言いきれないが、今回呼ばれている貴族は国王の謁見を許されている者たちだ。そのほとんどが王都在住のはずだ。で、今回辺境領の貴族は3名程しか呼ばれていない。まだ全員を確認していないが、3名ともなかなかの伊達男で、名代が来ていたとしても名を落とさない様、変な恰好はまずしない」
との事だ。
つまり、多少好みの差はあれ似たりよったりな恰好をしていると。
こういう華やかな場所では、奇抜なものより地味目の方が悪目立ちする傾向があるから。
となると、貴族でなければ貴族付きの護衛の線もありうるか。
「じゃあ、その貴族の護衛とかは?」
「警護・護衛は騎士礼服が基本だ。この様な陛下主宰の夜会では、私服での警備が許されない。私服の護衛がいるとしたら、その場合は必ず招待状が送られてくるはずだ。1人1枚必ず招待状がないと入れないからな。つまり、皆それなりの身分の者となり、勝手に入り込むことは難しいだろう」
「そうなんだ」
んじゃあ、あれって誰?
うーん。
キースを見ると、何かを考える風にあごに手をやっている。
指長いな。
関係ないけど。
不審人物が丁度見える位置になったので、キースの知った顔か聞いてみる。
「キースは知ってる?あの人」
キースは一瞬探したが、特徴的だったので、すぐに見つけたようだ。
「いや、知らないな。確かにあれは、無いな」
やっぱりそう思うよね。
「まぁ、騒ぐのもなんだしなぁーと思って、こっそりヴォイドに見ててもらってはいるんだけど。誰か身元保証ができる人が現れれば、問題ないんだろうけどね。どうやら、他の人とあまりしゃべってないみたいだしさ」
ゲストかそうでないかの判断は、さすがに私には出来ない。
「一応、今から隊長の耳に入れておく」
よしそれに乗った。
「あ、じゃあ、私も挨拶に行きたいから、一緒に行こう」
本音は、1人で残されたら、又女の子にからまれそうだったからなんだけど。
うーん睨まれてる、睨まれてる。
視線いたい。
もう、いい加減慣れたけど。
これずっと続けられるのもなぁ。
削ったり色々していたらすごく短いものになってしまった。