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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)が夜会デビュー
45/228

45.

「もし、お待ちなさい。貴女だけ名乗るって去るなどと、私は許しませんわ」

ですよね~。

これで帰してもらえるとは思っておりませんでしたよ、ええ。

「私はイェリン=ウィエラ=デラ=エイウェン。デラ=エイウェンの次女ですわ」

家名、彼女の場合エイウェンの前についているデラは、王族以下の貴族の中でも最上級の称号で、王家に次いで偉い家系なんだそうだ。

頭が高いってやつですか?

どうやらもう逃げられないみたいだ。

先程の男が、視界から外れそうになる。

「ヴォイド、後は適当にやっておくから、悪いけどあの地味な服の男の様子を見ててほしい」

扇子で口元を隠しながら、小さな声でヴォイドに話し、頼む。

「俺は、ここを離れるわけにはいきません」

どうやら、地味な男と言っただけで通じたようだ。

護衛なので何か言ってくると思ったけど、やっぱりか。

「だけど、貴方はこの国の近衛でしょう。守る対象は私ではなく王族。明らかに目的がそうであると解っているのに、何もしないつもり?」

「ですが……」

「私はただのゲスト。何かされるようには思えない。心配なら他の人員寄こせばいい。それに、副団長やらキースもいるし、いざとなれば盾にするから」

何気に酷い事を言いながら、説得する。

だってあの地味男、どう見てもノーマークだし。

ヴォイドが1つ溜息をついて、エイウェン嬢に向く。

「デラ・エイウェン、出来ればもっとお話をお伺いしたかったのですが、そうも言っていられなくなりそうです。申し訳ありません。またの機会がございましたら、その時はよろしくお願いいたします。では」

一方的に彼女に告げ、こちらに向き直る。

顔を近づけそっと囁く。

「ルイ、誰にも気を許さないで下さい」

「それってどういう」

意味か訊ねようとするが、すぐにヴォイドがかぶせてきた。

「貴女をま、いや、すぐに戻ります。誰か代わりにあの男を監視してもらいますから」

そう言い残して去って行った。

エイウェン嬢が呆気にとられている。

あれはないなぁ。

思わず苦笑が漏れる。

「どうやら、私のエスコート役が失礼な事を。お詫び申し上げます。それよりエイウェン様、何やらお話があったご様子ですが、もしかしてアンヴォイド様に?」

エイウェン嬢に尋ねる。

「いえ。話は、あなたの方にあります」

エイウェン嬢が、こちらに向き直り言う。

顔の赤みが取れている。

どうやら、大丈夫そうだ。

「単刀直入にお聞きしますわ。貴女はアークオーエン様とどういう御関係なんですの?」

エイウェン嬢が、真剣な顔で尋ねる。

関係と言われてもなぁ。

「関係、ですか?難しい質問ですね」

一瞬素に戻ってしまったが、直ぐに笑顔を張り付ける。

扇子を広げ、少し考える素振りをしながら、周囲をそっと窺う。

先程の不振人物はこちらから大分離れていて、もう見えなくなくなっていた。

「敢えて言うなら、彼は仲介役でしょうか?」

「仲介役……?」

エイウェン嬢が、不思議そうな顔をした。

それもそうだ。

宰相補と言えばこの国でNo.3か4位の位置づけだろう。

そんな彼を仲介役にするなんて、普通なら相当なコネクションがないと近づきも出来ない。

一体私って何者?

「はい、仲介役です。エイウェン様は、宗谷様を御存知ですか?」

「ええ、400年前の傑物ですね。それともこの程、宰相補司となられた方の事でしょうか?」

「はい。宗谷宰相補司の方です。その宗谷氏が先月私との面会を御希望されていていまして、アークオーエン様が仲介に入って下さったのです。ひと月も前の事で、それ以降お見かけしておりませんでしたので、先日のお礼をかねて、先程御挨拶をさせていただきました」

「そう、でしたの。ですが、とてもその様に、お見受けいたしませんでしたわ。いつもよりも、し、親密に見えましたもの」

彼女の眼に、嫉妬の色が見え隠れする。

「先程の事を、どの様に捉えてらしたのかは存じあげませんが、宰相補と私の間には、仲介者と被仲介者以外の関係は御座いませんよ。あくまでも、宰相補司との面会の実現が我々の目的でしたから」

そうそう、だからあなたの敵ではないんですよ私は。

力強く頷いて、柔らかく微笑む。

「ですが、アークオーエン様は、あのような笑みをされた事がありません。あ、あんな顔をなさるなんて」

な。

こんな公共の場で泣くとかやーめーてー。

何だかうるっときているので、嫌な予感が。

「いや、ね?普段の宰相補なんて見る事ないし?興味もないしどうでもいいっていうか、ああ、うん。確かに顔だけはいいよね。いや、性格とかは知らないし。事実今日まで存在忘れてた様な気がするし、多分これからもなんだか忘れそうな気がするし。あー、だから、お願い、泣かないで」

テンパって敬語が剥がれる。

思わずハグしてしまった。

何がだからでお願いなんだか判らないが、端的に言うと周りドン引き。

でも、涙はぎりぎりこぼれなかったみたい、セーフ。

って、セーフじゃねーよ。

どう収拾付ければ。

私のおバカ。

「あ、あああの離していただけませんか?」

恐る恐る、彼女の顔を見ると表情が和らいているのが判った。

ふぅ、落ち着いたみたいだ。

やれやれ。

そっと離れる。

エイウェン嬢の顔がまた赤い。

しまった、きつく締めすぎたか。

それとも、もしかして熱あったりする?

とっさにおでこに手をやって、熱を測ってみた。

自分と比べる。

え?ちょっと熱い?

「えーと、貴女」

名前は知らないが、彼女の取り巻きに顔を向ける。

「わ、私ですか?」

話しかけられるとは思ってもみなかったのか、若干狼狽気味だ。

「そう貴女と貴女。エイウェン様がどうやら少し熱があるかもしれません。どこかで休ませるか、無理そうなら今日出来るだけ彼女に付き添っていてあげて下さいね」

相手が落ち着くよう、微笑みながら言う。

何故か何度も頷く取り巻き2人。

そんなに振ったら髪型が崩れるよ?

「このままではお身体にも障りましょう。私はそろそろ御前を失礼させていただきますわね。御機嫌よう、エイウェン様。皆様。今日はご無理をなさらないようにして下さいね」

ここから戦略離脱。

逃げじゃないからね。

心で言い訳する。

「心遣いありがとう。御機嫌よう、タダ様」

エイウェン嬢に礼をし、二ッコリ笑って離れる。

今度こそ彼女から解放された。

会場内を見回すと、ヴォイドが誰かと話しているのが見える。


「ルイ」



この声は

45話目です。

大感謝。

皆様次話も宜しくお願いします。


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