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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)が夜会デビュー
44/228

44.

囲まれてから、まず私が取った行動といえばお酒を飲む事だった。

正直、飲まないとやってられませんって。

先程配られたお酒は、原材料が何かはよく判らないが、軽くて甘いフルーティーなお酒だ。

主に女性に配られている。

さすが王宮、揃えている酒は半端なく旨い。

今日は、他国の客も招待してるせいか、いつも食事時に出るお酒より格別に旨い物が振舞われている。

女性用にと配られているものは、私には軽くて少し物足りない。

なので、ヴォイドが飲んでいるものと同じ物を、通りかかった使用人から貰う。

これこれ。

これ、気になってた。

ちょっとだけ気分浮上。

匂いでアルコール度数が高い事は判っていたが、飲んでみると予想以上にきつい。

味に少し癖があるかな?

どちらかというと、ウィスキーに似ているかも。

ただ、香りが案外爽やかなので、原材料はもしかすると穀類ではないのかもしれない。

それか、香りづけの段階で、何か工夫でもしてあるのだろうか?

このお酒、結構いけます。

リクエストしたら、夕食後に出してもらえるだろうか?

いやいや、ただ飯食らいが何を言っている、私。

慎ましやかに行かねば。

ウィスキーもどきを堪能していたら、酔っぱらってしまわないかヴォイドに心配された。

大丈夫だって、酔わない酔わない。

「結構私お酒いける口だよ。まぁ、こういう場だから、余り飲めないのが残念だけど。これ、おいしいよね」

とか話していたら、女性が目の前に立っていた。

「貴女が噂の、陛下のお客人ね」

なんでだろう?

王宮にいるはずなのに、道路の路地裏に呼び出された気分になるのは。

取り敢えず気持ちを引き締める。

「はじめまして、私琉生=多田と申します。お見知りおき下さいませ」

先手必勝、自己紹介をしてみた。

私は挨拶をしながら、これ以上ないと言う位極上の笑顔を顔に張り付け、この国の正式な礼を完璧にした。

ドレスのスカートを両方の手で少しつまみ、体を落とし顔をゆっくりと下げる。

確かこうで良かったはずだ。

はずなのだが、周りの様子がおかしい。

周りがシンとなりすぎる。

あれ?

何か私、間違った?

え?もしかしてこの礼の仕方は間違い?

出たよ、異文化の壁。

ナリアッテに、最終チェックしてもらえばよかったか。

おそるおそる、彼女に顔を向ける。

顔を上げると、フリーズしていた。

様子がおかしい。

見るとどうやら、彼女も少しお酒を召しておられるらしい。

ほんのり頬がピンク色になっている。

チークでもなさそうだし、酔っているようだ。

動かないのは空腹時にお酒を飲んだからなのだろうか、もしかすると気分でも悪くなっているのかもしれない。

確かに、あの甘めのお酒、結構度数がありそうだ。

口当たりがいいものだから、何杯でもいけるし。

若いから、知らずに何杯も飲んだとか?

「あの?」

一応声をかけて見るが、反応がない。

どうしよう、困ったな。

ヴォイドもあらぬ方向見てて、ヘルプしても気づきもしないし。

まあ、いいや。

取り敢えず女子優先って事で、近づいてみた。

うわ、間近で見て改めて思うが、やっぱり10代20代の肌は違う。

張りと透明感が。

つやが。

羨ましい。

そう思っていると、彼女の後方に、先程階段を下りた時に気なった謎の人物がいた。

なるほど、ヴォイドはこの人物が気になっていて、様子がおかしいんだな。

それよりも、私の問題はこっちだな。

彼女の顔を覗き込んでも、あまり反応がないので更に近づいてみた。

もちろん、視界の隅にその人物が入るようにして。

それにしても、本当に肌がきれいだな、この子。

私は彼女の耳の位置まで、片手をゆっくりと伸ばした。

誰かがごくりと唾を飲み込む音が、聞こえる。

それほど周りは奇妙に静まっていた。

なんで?

パチンと私が彼女の耳の横で指を鳴らすと、会場中に響いたんじゃないかと思う位に響いた。

ドキドキしてしまった。

その甲斐あってか、ようやく彼女の目の焦点が合った。

その途端、凄くびっくりしたような顔をされ、大きく飛びのかれた。

え?

目が合うと、口元に手をやり顔を横に逸らされた。

それほど気分が悪いのかな?

顔が赤いから、相当酔ってる感じがするんだけど。

大丈夫だろうか?

「申し訳ありません。お声をおかけしても、返答がなくて。御気分が優れないのでは、と心配になりましたもので」

「……。な、何ともありませんわ」

本当に大丈夫なんだろうか?

彼女がプイッとそっぽを向く。

その仕草が、何だか猫を見ているみたいに可愛いかったので、思わずクスッと笑ってしまった。

又なんだかシーンとしてしまったが、いったい何なんだ。

取り巻きのお嬢さん方が、つられたのかふっと笑った。

周りの空気が、一瞬にして柔らかい雰囲気になる。

「そうですか、それはよかった」

正直、気分が悪くなってこの場でリバースするんじゃないかと、心配だったので心底ほっとして、満面の笑顔でそう答えた。

彼女は、皆に笑われたのが恥ずかしかったのか、顔が真っ赤だ。

うん、誰かフォロー入れてあげようか?

背後の男が移動を開始する。

これは、気になる。

「では、私はこれで。又、どこかでお会いしましょう」

と言って、彼女のの手の甲にキスの礼をして去っていこうとしたら、ヴォイドがこっそりと「ルイ、それは男性がするものです」と囁いてきた。


あー、間違えた。

言い訳すれば、昨日ナリアッテに男性用の礼も、みっちり仕込まれたんです。

一夜漬けは駄目だわ。

ぼろが出る。

決して酔いが回ったわけではない。

断じてない。

ないったらない。

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