35.
偽の13番に無理やり引っ張られて外に出て来たはいいが、非常に困った事になっている。
この偽13番、恐らく隣国から来たVIPだろう。
そしてこのVIP様は、私に何か期待しているらしい。
正直この場を離れたい。
そこで先程の選択肢だ。
1.戦う
2.説得する
3.逃げる
これらはどれも難易度が高いようだ。
まず1.の戦う、先程の偽13番と団長との会話から、この偽13番が団長に近い実力を持っている事が判った。
つまり、団長と再びやりあうのと同じだ。
そしてこの偽13番は、手加減なんかしそうにない人物に見える。
絶対負けるし、怪我をする。
怪我はしたくないので、これは選びたくない。
次2.の説得について。
偽13番は、恐らくバトルジャンキーだ。
それは、団長と偽13番との先程の会話で十分理解した。
偽13番のようなバトル馬鹿は、どんなに言葉を重ねても聞く耳を持たないのが特徴だ。
今までがそうだった。
どんなに逃げても、言葉で重ねても、泣き落とししても、話が一見通じていそうでも、最終的には戦うという選択を迫られる。
そしてこちらが心底憔悴しきって諦めたが最後、戦わざるを得なくなるのだ。
もっと、人生を別の事に費やして欲しいと思うのは私だけだろうか?
この手の者に目を付けられると厄介なのだ。
それこそ、地獄の底までストーキングしてくる。
まさか、ここに来てるんじゃないだろうな……
それはないか、ないよな?
右よし、左よし、前方よし。
うん、説得も無理そうだ。
やっぱり、逃げるってのが1番だよね。
という事で3.を検討してみる。
まず、この偽13番には隙がない。
前にも後ろにも横にも、逃げるそぶりがあればすぐに捕まえられそうだ。
少し、剣を交えて、すきを突いて逃げる?
あれ?それって戦う事?
1.に戻って無限ループ?
うん、無理。
逃げるのも無理。
ああ、どうしよう。
あ!あったよ奥の手。
そうだ、この手でいこう。
急に思いついた隠れ選択肢、4.他力本願。
つまり、他の人に救いを求める作戦。
目の前にいるこの人は、なんといってもVIPだ。
他国の人間が王宮にいるだけで、VIP待遇だ。
てことは、いる。
必ず、いる。
最低3人いるはずだ、要人警護の人たちが。
私なら練兵場の影と木々に配置するだろう。
もう1度ざっと周囲を見渡す。
いたいた、練兵場の影。
恐らくあれが、偽13番の警護だ。
警護の人をがん見する。
助けてオーラ全開で。
あ、顔逸らされた。
ちょ、不審者から目をそらしちゃダメでしょう、VIP警護の人。
あれがダメなら、次だ次。
練兵場から数m離れた木の所に1人。
お願い、何とかしてこの人、という目でみたら苦笑された。
ああ~、助ける気0?
んじゃあ、最後の頼みの綱、そこからさらに数m離れた見物人風の人。
目が合ったら、肩をすくめられた。
ああ、ブルータスお前もか。
最後の隠れ選択肢も、潰えてしまった……
うわ、どーする?どーすんの私!!
取り敢えず、時間稼ぎしながら考えよう。
うん
「あ、エーと、偽物13番さん。い、いったい私に何のご用でしょうか!?」
あ、声裏返った……