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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)の入団試験
32/228

32.

会場に到着すると、もう8番目の審査が開始されていた。

8番目と対峙しているのが、隊長が言っていた審査員だろう。

あれが、団長なのだな。

勝手に断定してしまっているが。

「早いな。もう8番目だ」

ギャラリーにいた誰かが、ぼそっと呟く。

どうやら私服を着ていたので、受験者らしい。

顔色が優れないのは、緊張でもしているからだろう。

それから視線を、会場へと戻す。

会場自体はそれほど大きくはない。

25mプールの大きさのフィールドと、両サイドにあるフリースペースがあるくらいだ。

私が今居る場所は、そのフリースペースになる。

ギャラリーがざっと100人位はいそうだ。

ラッシュ時の電車には及ばないが、そこそこ混んでる。

そのフィールドの真ん中に、今は団長と9番目の人が立っていた。

あれ?8番目は?

団長が圧倒的に強いのは、構えを見ただけで判った。

うん、半端なく強い。

道理で、なぜ隊長がわざわざ忠告しに来たのか解った。

普通にやったら20秒以内で終わるだろう。

妙に納得してしまった。

視線を今度は、団長から対戦者に向ける。

受験者は、キース位の身長つまり180cm前後の筋肉質な体型だった。

よく鍛えられてるから一見弱そうには見えないが、何故か始まる前から弱腰だった。

団長の気迫にでも当てられたか、それとも怖いのだろうか?

うーん、確かに団長は強いだろう。

なるべくなら敵に回したくない感じだ。

だが、怖いか?と聞かれたら、疑問だ。

今回の審査は、殺すまでするというものではないし、負けて何かを奪われるわけでもないし、ましてや必ず勝たなきゃならないというものでもない。

あくまで、入団後使える奴かどうかを見る為の審査だ。

と、隊長が言っていた。

受験者の剣技が今はダメダメでも、入団後の徹底したしごきで水準まで持っていければいい。

とも隊長が言っていた。

所詮有事において兵は使い捨てであり、人数は多いに越した事はない。

という事で、見込みがありそうならば試験でそうそう落としたりはしない。

そこまで言っていいんかい隊長。

まぁだからと言って精神的にヘタレでも困るだろうから、ある程度そういう所は見ているかもしれないが。

とにかく、殺される恐怖も、奪われる恐怖も、勝たなきゃならないプレッシャーもないので、私は結構楽観的に構えている。

何しろ、まだまともに試合も見ていないし。

尤も、団長が再起不能になるまで相手をぼろぼろにしなけりゃ気が済まないというサイコ野郎で、それを目の前で展開されれば、或いは恐怖を抱くかもしれない。

等と考えている内に、審査は終わっていた。

「うそ。早すぎ。今のも見てないよ」

まぁ、あのへっぴり腰じゃ、駄目かぁ。

次の10番に期待。

って、なんで?え?ちょ、なに逃げてんの10番。

気を取り直し、11番。

ちょっとはましなのが見れるかな?

構えて、団長に一太刀って空振り!?

おい、目ぇ瞑ってどうするんだ!!心眼なんてプロでも難しいわ、馬鹿!!

次だ次、12番。

お?剣筋いい。

ああ、そこ右から行っちゃ駄目。

あぶなっ、でもいい運動神経してるわあの12番。

今のよく避けたなー。

あの無理な体勢で何とか1合したみたいだけど、次の瞬間には首筋に剣が当てられてた。

やはり、団長というだけあって凄いわ。

それでも、この12番はきっと当たりなんだろうな。

次の13番目はと、おお、彼は余裕だ。

何だか構えがこなれてる感じがする。

ちょっとわくわくしてきた、期待。

「ここで会ったが百年目、覚悟しろ」

何だ?

団長の知り合い?

「……。13番はどうした」

「さあな?大方逃げ出したんじゃねぇか?」

対戦者が、事もなげに言う。

「……。勝手な事を。邪魔はしないでもらいたいな」

「どうせ、弱っちいのばかりで退屈だったくせに。俺が気分転換させてやるってーのに」

「遠慮する。おい、つまみだせ」

そばにいた隊員に言う。

「おいおい、隣国からわざわざ遊びに来てやったってのにつれないねぇ。まぁ、いいや、後で相手しろよ団長様?」

そう言って、闖入者はギャラリーに戻った。

て、戻るんだ?

それより、13番をどうした?

団長が頭を痛そうにして、こめかみを押さえていた。

うん、何となく団長の気持ちが解るわ、私。

次の14番はパワーファイターだった。

その打ち合いは中々面白く、よく粘ってはいたけど、団長強し。

最後にはひざをついていた。

それでも10分やってないような気がする。

15番は、果敢に向かっていって何とか3合したけど撃沈、ちょっと腕が腫れてるのが気になる。

なんとなく、12と14と15は合格してそうだ。

うんうんと1人頷いていたら、いつの間にかコールされていた。

「16番早く出ろ」

呼び出し係が再度私の番号を呼ぶ。

隊長から適当に借りた剣を持ちながら、団長の前へ進み出た。

「よろしくお願いします」

と言って、一礼したらなんだか驚かれた。

あれ?変な事しただろうか?

相手の顔を見る。

う~ん、ここまで美形が揃っていると逆に個性が無いよね。

ギャラリーも美形ばっか。

友人がいたら、大喜びしそうだ。

何だか慣れました。

ほんと。

試験とは関係の無い事をボーっと考えながら、相手の顔を見てるとますます驚かれた。

ああ、試験中なのに違うこと考えて何だかすみません。

取り敢えず相手に動きが無い様なので、こちらから勝手に始める事にした。

無造作に剣を構え、戦闘モードに頭を切り替える。

集中すると、さぁっと周りが静かになった。

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